見出し画像

2020J1第29節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌@日産ス


難敵相手に4-1での勝利!
7月の対戦で叩きのめされた相手に見事リベンジを果たしました。素晴らしかった!

あの時と何が違っていたのか、これがこの試合を読み解く最大のポイントになります。よって、前回対戦時との相違点に焦点を当てたいと思います。

結論から言うと、札幌のやりたいことをさせなかった、というところに尽きるのではないかと。では、札幌が何をしたかったか。それはショートカウンターです。高い位置からプレスをかけてボールを奪い、素早く攻めきって点を奪う。前回対戦時はまさにこれでやられたわけです。

マリノスは札幌のショートカウンターをどうやって機能不全に追い込んだのか。これについて、札幌がボールを奪う(プレッシング)部分と奪ってから攻める(カウンター)部分とに切り分けて述べていきます。

大まかな構成は以下の通りです。

⑴札幌のマンツーマンプレス構造解説
⑵ハマらない札幌のプレス(ボールを奪う部分)
⑶威力半減のカウンター(奪ってから攻める部分)

では、始めます。


【Starting Lineup】

画像3

■横浜F・マリノス
 ◇基本システムは4-2-1-3
 ◇中2日での試合
 ◇畠中が怪我から復帰
 ◇松田詠太郎が初スタメン
 ◇スタメンは前節から5人変更(松原、畠中、高野、和田、松田)
■北海道コンサドーレ札幌
 ◇基本システムは3-4-3(表記の都合上)
 ◇中6日での試合
 ◇前節からスタメン変更なし


【札幌のマンツーマンプレス構造解説】

まず大前提として、札幌が何をやってきたか、その狙いを述べておく必要があります。結論から言うと、前回対戦時と変わりませんでした。それもそのはず、あれだけドハマりしたわけですから、やり方を変える必要なんてないわけです。

今回もプレスをかけて高い位置でボールを奪い、速攻を仕掛けてやろう。

敵将・ミシャはこう考えていたはずです。

前回対戦時の札幌のプレッシングの構造が理解できている方はここを読む必要はありません。使用する図も使い回してますので。笑

画像1

基本的にはマンツーマンを基調としたプレスです。それも、ピッチ全体で全員が人に付く”オールコートマンツー”という部類に属するやり方。全員にマークがついているので、マリノスからするとフリーな味方ができず、ショートパスを繋ぐのは非常に困難です。

以上が札幌のプレッシングの基本形です。

記憶に新しい前回対戦時のマリノスは、このオールコートマンツーのプレスにまんまとハマってしまいました。ビルドアップは機能せず、ボールを奪われてはカウンターを受け続けました。まさに絶望的な試合。


そして先述した通り、札幌はこの試合でも同じ手法を採用してきました。



【ハマらない札幌のプレス】

では、これに対して今回のマリノスはどのような違いをもってボールを動かしたのでしょうか。

その答えは前線の選手の特徴にあります。

わかりやすいところで言えばCFのポジションです。前回対戦時に出場していたエジガルと今回出場したサントスでは、プレースタイルが全く違います。

エジガルはスペースがないところで的確にボールをキープして味方につなげる長所がありますが、対面のDFを引きちぎる圧倒的な強さは持ち合わせていません。

一方でサントスは真逆のプレースタイル。エジガルのような繊細なキープ力は持ち合わせていませんが、屈強なフィジカルと爆発的なスピードで対面のDFを剥がし、独力でシュートまでもって行ってしまいます。

結果的に、このやり方をしてくる札幌に対して効果的だったのはサントスでした。最終ラインが数的同数で、かつ広大なスペースが用意された状況では、エジガルよりもサントスの方が活きたわけです。

画像2

具体的な攻略法ですが、対面する田中駿汰との競り合いにことごとく勝利するサントス目がけて長めのボールを送る回数が非常に多かったです。ここから一気に速攻を仕掛けてチャンスを作ることができましたし、何よりも自陣でマリノスがボールを失う場面が格段に減りました。

これは2人のストライカーの優劣の問題ではなく、札幌という相手に対してサントスがハマったということ。相手によってはエジガルの方がハマったりするわけなのですが。


【威力半減のカウンター】

次は、札幌がボールを奪ってから攻める部分についてです。

札幌の攻撃のキーマンはルーカス・フェルナンデスです。彼の縦への推進力を活かして局面を打開することが彼らのお家芸と言っても過言ではないです。
実際に前回対戦時もルーカスには散々やられたわけで・・・。

あのときティーラトンが相当苦しんだルーカスをどうするかはマリノスがこの試合に臨むにあたっての大きなテーマとしてありました。

そこで高野を起用したわけですが、これが当たりました。

単純な1on1の対人守備で強さを発揮する高野は、カウンターを受ける場面でもルーカスとの勝負に勝ち続けました。これだけでも高野起用の利点はあったわけですが、もう一つ大きな意味をもたらしていました。

それは、マリノスのボール保持時の高野のポジショニングです。

ルーカスがマークを担当する高野が、ティーラトンよりも高い位置をとることで、ルーカスのポジションが下げられました。これにより、札幌のカウンターにおける最大の脅威を押し込むことに成功したのです。

この差異は、先ほどのエジガルとサントスの比較と同様に、選手の強み・特徴によるものです。

大前提として高野は、無理して高い位置をとっていたわけではないと思います。高野が左サイドバックを務めると自然とそうなるのです。

高野とティーラトン、両者を比較してみます。

ティーラトンの強みはビルドアップの起点になれること。つまり、味方を”使う”側の選手です。だから、パスの発射台として自然と低い位置でボールを受けることが多くなります。

一方で、高野の特徴は走力や突破力にあります。つまり、”使われる”側の選手です。だから、高い位置を取ることが相手にとって脅威になります。

”使う”選手と”使われる”選手、繰り返しますがこれは優劣の問題ではなく、選手の特徴の問題。今回は”使われる”側としての高野の特徴がルーカスの脅威を抑え込むにあたって活きたわけです。



【まとめ・考察】

この試合で感じたのは、マリノスの選手層の厚さ、そして選手の多様性です。相手の強み・特徴を、起用する選手の長所でもって臨機応変に消すことができる。これができるチームってそう多くないと思うんです。

ストライカーポジションで言えば、前からプレスをかけてスペースを与えてくれる相手に対してはサントスが活きますし、ブロックを組んでスペースを消してくる相手に対してはエジガルが活きるでしょう。

いつの間にか、相手がパーを出しているのにグーで突進するだけのチームじゃなくなっている気がします。
いや、ボスが本当に相手との相性を考慮しているかはわからないんですけどね。笑

でも豊富な選択肢があることは間違いなく強みです。

ローテーションによって、異なる顔をしたマリノスを毎回見ることができるのはサポーターとしては楽しみですし、相手にしてみればものすごく厄介なんだろうなと思います。





8/26 Wed. 19:30K.O. J1第29節 横浜4-1札幌

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?