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2020J1第9節 横浜F・マリノスvs柏レイソル@日産ス


この試合についての私の印象は、「良かったけど、点が取れなかった」です。

いや、オナイウ阿道の素晴らしいゴールで1点は取れたわけですが…。

もっと点を取るべき試合だったと感じています。


そこで今回は、「良かったけど、点が取れなかった」を分解することでこの試合を紐解いていきます。具体的には、「⑴良かった」と「⑵点が取れなかった」とに分けます。

まとめると以下の通りです。

⑴内容が良かったのはなぜか
⑵なぜなかなか点が取れなかったのか
⑶まとめ・考察


では、始めます。



【Starting Lineup】


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■横浜F・マリノス
 ◇基本システムは4-1-2-3
 ◇前節からスタメン2人変更(マルコス、エリキ)
 ◇エリキが怪我から復帰
 ◇松原健のCB起用継続
■柏レイソル
 ◇基本システムは4-2-3-1
 ◇前節からスタメン変更なし


【内容が良かったのはなぜか】


この試合、前半から圧倒的にボールを握り、相手を押し込むことに成功していました。これには、ボール保持と非保持の両面において理由が考えられます。

■ボール保持
 ◇相手のプレスに捕まらず、恒常的に前進ができていたから
■ボール非保持
 ◇奪われても即時奪回ができていたから


以上が、相手を押し込んで攻め立てることができていた理由です。

では、ボール保持では相手のプレスに捕まらず、恒常的に前進ができていて、尚且つボール非保持では即時奪回ができていたのはなぜか。

それは、”偽サイドバック”が機能していたからだと考えます。

ちなみにこれは数ある原因の一側面でしかありません。柏がハイプレスではなくリトリート守備を決め込んでいたことやマリノスのネガトラ意識の高さなど複合的な理由が折り重なってこのような事象となっていることは考慮に入れておいてください。


では、具体的に偽サイドバックがどのように効果を発揮していたかをボール保持と非保持とに分けて、それぞれ述べていきます。


〜❶ボール保持において偽サイドバックが果たした役割〜

そもそも相手を押し込むにあたって、相手の2ndライン(つまり、MFのライン)を恒常的に越えられているか否かは重要なポイントです。特にマリノスの場合は2ndラインを越えた先に待つマルコスや天野、エジガルといった選手にボールを預けることでゴールの確率がうんと高くなるわけですからね。ここにボールを届けることがビルドアップのゴールなのです。

この試合では、その2ndライン突破が恒常的にできていました。

では、実際に偽サイドバックがどのように寄与していたのか。図を用いて具体的に述べます。

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柏のSH(サイドハーフ)はマリノスのSBを主に見ていました。これは噛み合わせを考えても自然なことです。

例えば小池が大外に張り出せばSH仲間隼斗は外について行きますし、小池が内側に絞れば一緒に内側についてきます。

この特徴を逆手に取って小池が”偽SB”の動きで大外レーンを空け、そこにマルコスが流れて前進する場面がかなり多かったです。ちなみに逆サイドでも同じ形を作れていました。

見かねたネルシーニョ監督が後半開始から陣形をいじって修正を施すくらいにはこの形で淀みなく前進ができていました。


〜❷ボール非保持において偽サイドバックが果たした役割〜

次にボール非保持についてです。ここでいう「ボール非保持」とは「ネガティブトランジション」を指します。つまり、敵陣でボールを奪われた直後の数秒間です。

前提として、この試合のマリノスの基本システムは4-1-2-3。このシステムにおける弱点・泣き所は、アンカー喜田の両脇のスペースです。ここをなんとかして埋めないと、カウンターの脅威にさらされます。

ここで登場してくるのが”偽サイドバック”です。

両サイドバックが内に絞ることでアンカー脇のスペースを埋め、セカンドボールの回収などを担当します。

実際にはポジションをローテーションさせるので常に小池とティーラトンがアンカー脇にいるわけではなかったのですが、多くの場面で柏のカウンターの芽を摘み取る役割をこなしていました。

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《余談》

そもそもこの試合、これまでと比べてネガトラが機能していました。個人的には仙台戦よりも機能していたように見えました。前線にオルンガや江坂といった起点になれる選手がいるにも関わらず、です。

これに対して、4-1-2-3へのシステム変更が原因としてあるのではないか、という仮説を立てました。具体的に述べますと、4-1-2-3にしたことで攻撃時のポジションがある程度決まり、それによって全体のポジションバランスが良くなったのではないかと。ここで述べたSBの立ち位置はその最たる例です。
つまり、全体のポジションバランスが良くなったことによってボールを取られた瞬間にバランスが良い陣形のままプレッシングに移行できるのではないでしょうか。

しかしまだこれは仮説に過ぎないので、今後検証していく必要があります。

以上、余談でした。笑


【なぜなかなか点が取れなかったのか】


では2つ目のテーマ、「なぜ点が取れなかったのか」です。

これもたくさんの理由が考えられますが、そのなかでも「中央に人を集め過ぎていた」ことが大きいと考えます。

できれば映像を見返してほしいのですが、それがめんどくさかったらぜひ思い浮かべてください。この試合のマリノスがどういう形でゴールに迫っていたか。
私ならこう答えます。「エジガルやマルコスらによるダイレクトパスでのコンビネーションプレー」と。いわゆる「即興」ってやつです。

エジガル、マルコス、天野、そこにエリキが加わって中央を強引に突破しようとしていたシーンがいくつか思い浮かびます。あれ、現地で見ていてワクワクはしたんですけど、不思議と点が入る気はしなかったんですよね。
ちょっと辛辣ですけど。笑

中央に多くの人数を割いて守っていた柏との相性を考えても、不確実なヒールパスなどを多用してまで強引に中央突破を試みるのは得策ではなかったです。それでも難しいところにパスを通すブラジリアン達のスキルの高さは感じましたが。

ではなぜ「中央に人が集まってしまったのか」ですが、これはウインガーのポジショニングによるところが大きいと思われます。

これは前後半で大きく違っていたポイントです。前半はウイングが中央でかつ足元でボールを受けることが多かったのに対して、後半は大外でかつDFラインの裏で受ける場面が多く見られました。

前半にどこか手詰まり感があった理由、松田詠太郎が入ってから攻撃が良くなったように見えた理由はウインガーのポジショニングにあるのではないでしょうか。

引いた相手のブロックを崩すには横幅を広く使うことが必要です。そうすればもっとエジガルのポストプレーが活きますし、天野やマルコスにスペースを与えることができます。

崩しの局面の細やかなポジショニングについて、次の試合で進捗が見られることに期待したいです。


【まとめ・考察】


というわけで、ファイナルサードに至るまでの良かった点とファイナルサード以降の課題についてまとめました。

ファイナルサードに至るまでのボールの動かし方は非常に良かったと感じています。思えば再開初戦の浦和戦では、同サイドでの崩しにこだわりすぎて手詰まりを起こしていました。

あれからたったの1ヶ月で、ボールの動かし方は飛躍的に改善されました。積極的にサイドを変える意識が多くの選手から見て取れます。

この調子で次なる課題にもトライしてほしいものですね。





8/8 Sat. 19:00K.O. J1第9節 横浜1-1柏

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