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2020J1第14節 横浜F・マリノスvs川崎フロンターレ@日産ス

選手もスタッフもサポーターも、相当な覚悟と強い気持ちで臨んだ神奈川ダービーは、なんとも無様な結果に終わりました。圧倒的な攻撃力を背景に得点を量産する川崎はシンプルに強かったです。これは認めます。

でも、この試合の敗因を単に「川崎が強かったから」とするのはあまりにももったいないです。

試合を通じて何ができて何ができなかったか、前半立ち上がりの15分は圧倒できたのに途中から「あれっ、パスが繋がらない、、」となったのはなぜか。

これらに対してきちんと向き合わないとこの敗戦から何も学ぶことができません。

そもそもこの試合を読み解くポイントとして、前半の飲水タイム前後で川崎のプレッシングの際の約束ごと、陣形が変わったことが挙げられます。ここを比較することで、敗戦から見えた成果と課題について述べたいと思います。

構成は以下の通りです。

⑴前半序盤に圧倒できた理由
⑵飲水タイム後のマリノスのビルドアップ
⑶課題:なぜ1点しか取れなかったのか
⑷まとめ・考察

では、始めます。


【Starting Lineup】


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■横浜F・マリノス
 ◇基本システムは4-1-2-3
 ◇ミッドウィークのルヴァン杯からスタメン5人変更(小池、ティーラトン、天野、松田、エリキ)
■川崎フロンターレ
 ◇基本システムは4-1-2-3
 ◇ミッドウィークのルヴァン杯からスタメン4人変更



【前半序盤に圧倒できた理由】

まずは成果についてです。

立ち上がりの15分、マリノスはハイテンポのパスワークと適切な位置取りによって主導権を握りました。その流れで2分に先制点も取っています。

なぜ攻勢に出ることができたのか。それは川崎の急所を突くことができていたからです。

では、川崎の急所とはどこか。

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上図の通り、アンカー守田の両脇のスペースがそれに当たります。この日マリノスが採用した4-1-2-3は、初期配置から2人のIHをこのアンカー脇のスペースに置くことができます。

立ち上がりのビルドアップでは、このアンカー脇に位置するマルコス・天野を出口とし、そこからスピードアップして川崎自慢のハイプレスを空転させることに成功しました。

もちろん配置だけではなく、奪われた直後の素早いカウンタープレスやハイテンポのパスワークが前提にあってこそなんですけどね。

とにかく序盤の15分はマリノスのゲームだったと言って差し支えないと思います。


【飲水タイム後のマリノスのビルドアップ】

前半の飲水タイムで川崎はすかさず修正を加えてきました。ボール非保持時の陣形を4-3-3から4-4-2に変更してきたのです。これにより、序盤の突破口であったアンカー脇のスペースが消失しました。

アンカー脇のスペースを消されたことで、マリノスはビルドアップの出口を探すのに苦労することになります。下図の通り、ダブルボランチがマリノスのIHにぴったりつくことで出口を封じられてしまったからです。

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しかし、これに対して何もできなかったわけではありません。実際に攻略して前進するシーンはいくつか見られました。

例えば前半38分のこんなシーン。

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2人のIHで川崎のダブルボランチを外に引っ張り、空いた中央のスペースにサントスが降りてきてボールを受けています。つまり何が言いたいかというと、ビルドアップ自体は工夫を凝らして何度か良い形で前進はできていたということ。

たしかにビルドアップにおいていくつものミスが発生していたことは事実です。しかし、試合全体を通して、なす術もなくボールを奪われ続けたわけではないということは強調しておきたいです。このシーン以外にも、人を主体にプレスをかけてくる川崎をうまく動かしてスペースを創り、そこを起点に前進に成功したシーンはいくつもありました。


【課題:なぜ1点しか取れなかったのか】

前項ではビルドアップは必ずしも壊滅的ではなかった旨を述べました。では、なぜマリノスは開始早々の1点しか取れなかったのか。

それはビルドアップから前線の選手にボールが渡った後の振る舞いに問題があったからに他なりません。要するに崩しの局面です。

特に多かったのは、ボールを持った前線の選手が勢いそのままに突っ込んでいってしまう場面。

エリキやサントスの特徴を鑑みれば、広大なスペースがある状況で素早く攻めきるところに強みがあるのは明らかです。しかし、数的同数ないしは数的不利の状況で速攻を仕掛けることに対して、もう少し思いとどまっても良かったのかなと感じました。

むしろ、あえて攻撃を遅らせて相手を押し込むことで、二次攻撃や三次攻撃に繋げる方が得点のチャンスをもっと多く生み出せたのではないでしょうか。

縦に速い攻撃はマリノスの根幹をなす長所ですが、それは縦に急ぎすぎることと同義ではないはずです。この試合ではもう少し状況を鑑みたプレー選択が必要でした。


【まとめ・考察】

以上、無様な敗戦から見えた成果と課題を整理してみました。

改めてざっくりとまとめます。

■成果
 ◇川崎をも圧倒する開始早々の攻勢
 ◇相手の陣形を見たポジショニングとビルドアップ経路の修正(数回)
■課題
 ◇ゆる〜い後半の入り
 ◇スピードアップするタイミングとプレー選択

他にも数多く挙げられますが、主にこんな感じかと。

特にゆる〜く後半に入りがちなマリノスの特徴を掴んでいたからかはわかりませんが、選手交代をうまく使ってこの時間帯に勝負どころを持ってきた鬼木監督の采配は見事という他ありません。

これまで戦ってきたチームはこうしたスキを逃してくれましたが、川崎は見逃してはくれませんでした。

またすぐにリーグ戦はやってくるので切り替えましょう。出た課題をどう修正してくるか、こうした敗戦のあとはそこがすごく大事です。

この敗戦を無駄にしないこと、それが我々に課された目下の使命なのです。






9/5 Sat. 18:00K.O. J1第14節 横浜1-3川崎

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