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2020J1第30節 川崎フロンターレvs横浜F・マリノス@等々力

隙のない両チーム、強度の高い球際の攻防、ダービーマッチ特有の緊迫感のあるゲームでした。今季無類の強さを誇る川崎に対して、マリノスは王者の誇りを見せつけるかのように堂々と戦いました。

前半終了間際のGK高丘の退場もあって試合の主導権を握ることはできず、最後に力尽きて1-3と敗れてしまいましたが、私自身はこの試合でマリノスの選手たちが見せてくれた姿勢やプレーの強度には最大級の賛辞を送りたいです。

どちらのファンでない人でも単純な一つのサッカーの試合として非常に面白かったはずです。

そんなハイレベルな好ゲームを紐解いていきたいと思います。特に、両チームが数的同数だった前半の40分までの攻防に焦点を当てます。

特に重要なポイントは、川崎を相手に前半うまく戦えていた要因です。先に概観を述べます。

ボール保持⇒ツボを押さえたポジショニング
ボール非保持⇒縦横にコンパクトな陣形を保ったプレッシング

これらがうまくできていたからこそ互角以上に渡り合えていたわけです。以降、ボール保持と非保持とに切り分けて詳細を述べていききます。

構成は以下の通りです。

⑴ボール保持(ビルドアップ)
⑵ボール非保持(プレッシング)
⑶まとめ・考察

では、始めます。


【Starting Lineup】

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■横浜F・マリノス
 ◇基本システムは4-2-1-3
 ◇前節からスタメン7人変更(高丘、松原、チアゴ、畠中、喜田、マルコス、エリキ)
 ◇前節から中3日
 ◇ACL前最後の試合
■川崎フロンターレ
 ◇基本システムは4-3-3
 ◇前節からスタメン3人変更
 ◇前節から中3日


【ボール保持(ビルドアップ)】

ではまずマリノスのボール保持、とりわけビルドアップについて見ていきたいと思います。

先述したとおり、マリノスが川崎のプレッシングに対して効果的に前進することができていたのは、ツボを押さえたポジショニングによるところが大きかったです。

では、その"ツボ"とはなんだったのでしょうか。

ここでいうツボとは、川崎の構造上の弱点や、弱点とは言わないまでもプレスがかかりにくい場所を指しています。具体的に言うと、WGの裏・中盤3センターの脇のスペースです。

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このスペースで起点を作って前進することができたのが、前半9分のシーンです。このシーンにおけるポイントは2つあります。

一つ目は、ティーラトンのポジショニングです。内側に入るのではなく本来のSBの位置で待ち構えることで、遅れてアプローチしてきた守田をいなすことに成功しています。もう一つのポイントは高丘の冷静なパスです。相手のプレッシングに晒されながらも冷静にフリーな味方を探し出し、そこにスパッとパスをつける彼の技術の高さが垣間見えるシーンでした。

この他にも、川崎の3センター脇のスペースで起点を作って前進に成功したシーンはいくつかありました。マリノスにとってはこのスペースで起点を作ることで先手を取ることができるので、今後4-3-3の陣形で守ってくる相手に対しては効果的に使えるところなのかなと思います。



【ボール非保持(プレッシング)】

続いてボール非保持、とりわけプレッシングについてです。

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具体的には、川崎の中盤3枚にはマンツーマンで、そして縦横のコンパクトさを維持することを狙いとして持っていました。

結果的にこれが機能していたわけですが、なぜ機能したのでしょうか。

それは、川崎の選手がブロックの間で自由にボールを受ける状況を作り出させないことに成功したからです。川崎は相手ブロックの間に顔を出しながらパスワークを展開する部分に強みを持ったチームです。

これに対してポゼッションのキーとなる中盤の3枚にマンツーマンで付き、さらに入り込むスペースを圧縮することで外回りのポゼッションを強いることができました。


しかし、完全にこれを封じることができていたわけではありませんでした。

突破口となっていたのは守田vsマルコスのところでした。

喜田や扇原と比べるとマンマークの強度が劣るマルコスと、うまく動いて顔を出すのがうまい守田。ここのミスマッチによって前進を許す場面が散見されました。


ただし、前進を許したからと言って決定機を作られていたわけではありませんでした。

WGの水沼が対面の登里のオーバーラップにしっかり付いていくなど、全員の守備意識が非常に高かったです。

ここ最近のマリノスは、プレスがハマらなくてもしっかりとセットして守ることができるようになっています。これについて私は、3バックを採用した経験によって得られたものだと考えています。というのも、3バックだとプレスがハマらずセットして守らなければならない試合がいくつかあったからです。こうした経験によってチームとしてやれることが増えているとすると、あらゆる実験やチャレンジは無駄じゃなかったんだと思うことができます。


【まとめ・考察】

この試合における論点をまとめると以下のようになります。

■ボール保持(ビルドアップ)
 ◇使うべきスペース⇒3センター脇
 ◇ここを起点に前進
■ボール非保持(プレッシング)
 ◇ポイント
  ▼縦横圧縮でコンパクトさ重視
  ▼川崎の中盤にはマンツーマンで対応
 ⇒ブロック間のスペースを消し、外回りを強いる
 ◇川崎の突破口
  ▼守田vsマルコスのミスマッチ
 ◇マリノスの成長
  ▼セットディフェンスの向上
   ・3バックの経験によって培われたもの


ACLに向けて希望の持てる内容でした。

なぜならACLに向けてコンディションが整っていると感じたからです。おそらくしっかりとしたコンディショニングが行なわれていて、ACLに照準を合わせてきているのではないでしょうか。

これは球際の強度にも現れています。昨季の良い時の強度でプレーができていました。

数的不利となった後半にも同じことが言えます。数的不利を感じさせないほどに選手は走り、攻め、戦いました。


しかし、そこに立ちはだかったのが三笘薫でした。せっかく外回りを強いることができても、外からドリブルで切り崩してしまった点で彼の存在は川崎にとって非常に大きかったのではないでしょうか。

もし退場者が出ていなかったとしても今の三笘をシャットアウトできたかはわかりません。それくらい彼は素晴らしいプレイヤーだし、彼をチームに組み込んで点が取れる川崎は非常に強いです。今季のイレギュラーなレギュレーションの中で勝ち続けたのは本当に見事だったと思います。

少し気が早いですが、川崎フロンターレの皆さん、優勝おめでとうございます。


さて、祝辞を終えたところで話をマリノスに戻します。

ついにACLが始まります。本番です。

今季積み上げてきたもの、あの勝利もあの敗戦も、すべてはアジアを勝ち取るためなのです。

マリノスのペースでサッカーができれば怖いものなどない。マリノスはアジアで一番強いんだ。

それを証明してほしいと私は心底思っています。

KEEP SAIL TOGETHER.







11/18 Wed. 19:00K.O. J1第30節 川崎3-1横浜

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