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ERPに関するQ&A

ERP導入歴20年の私が、過去にあった簡単な質問回答を掲載してまいります。

1. 零細企業でERP導入するにあたり、優先して懸念することはなんでしょうか?

A:規模が小さいということは、システムによる効率化のインパクトが小さくなります。従って、効率化を目的としても効果が出にくいと思います。ですから、何を狙いたいのかを、その効果が本当に出るのか検証した上で、導入すべきと思います。

2. 固定的なプロジェクトメンバーがいない中で、各部署のリーダが主になって作っていくことは可能なのでしょうか?

A:トップを置くべきだと思います。各モジュール自体は、各部門完結可能ですが、ERPの場合、どうしても複数部門が関連するプロセスが多いため、その調整や判断をする人が必要です。部門のリーダーの中から選出でもいいとは思います。

3.SAPライセンスを安く購入する方法はあるのか。

A:日系であれば大手ベンダーから購入するのが一番安いです。大手はSAP社と大口ライセンス契約を持っていてそれを、大口単価ベースで切り売りしてくれます。半額以下でした。

4.ERPとはどのようなものか(目的、用途、処理できること、利用できる業務)

A:ERPは企業の業務を統合的に管理できるITツール(ソフト)です。
一般的なITツールは一つの業務領域のみを管理するものが多いですが、この点が異なります。
例えば会計業務を管理するツール、営業業務を管理するツール、場合によってはその中の一部を管理するツールなど、かなり細分化されています。
こういった異なる複雑な業務を一つのITツールで全て管理できるものがERPです。
従って対象業務は営業、購買、生産、経理、財務、人事、資産管理など大半の業務で利用可能です。
この異なる業務を統合管理できるため、例えば営業→生産、購買→経理、資産管理→財務といった業務間のつながりを管理できますし、把握できることがポイントです。
ERPには、勘定奉行、Companyなどの国産のものと、SAPやOracle、Dynamicsなどのグローバル企業が開発したグローバル企業向けの2種類があります。
SAPに代表される大規模ERPは対象業界の広さが、他の中小のERPと異なります。
製造業と金融業では同じ購買業務でもプロセスや重視するデータの内容がかなり異なりますが、SAPはSAPそれ一つで様々な業界に対応可能です。
処理できることとしては、入力と出力の2つに分けることができます。
入力では、伝票データの入力、マスタを活用した繰り返し入力の省略化、一括入力ツールのアップロード、外部システムとの連携があります。
出力では、業務の流れをデータで可視化、入力結果の検索、異なるデータの結合、分析レポート、帳票としての出力などがあります。

5.ERPは、どのような会社で、どのような形で導入されているか(規模、業界、事業特性、運用等)

A:ERPは基本的に高額なシステム投資が必要なので、数千人から数万人の従業員規模の大企業で導入されることが多いです。
業界は製造業、サービス業など様々です。アメリカの国防関係の公共組織でもSAPが利用されています。
ERPは巨大で宇宙のような複雑なシステムで、数万以上の機能があり、全てを把握している人はいません。SAP社でもいないと思います。
従って、ERPの全ての機能を使用している会社もありません。使って意味のありそうな機能のいいとこ取りをすることになります。
要はどのような業務、業界にでも使えるように、継ぎ足し継ぎ足しで開発した結果、「なんでもできるが、選択肢がありすぎる」ことになっています。
この複雑性が故に、運用においても専門知識が求められるため、専属の人材を抱えるか、外部ベンダーと一緒に運用している会社が多いです。

6.ERPと、他の「基幹システム」と呼ばれているものとの違い

A:「基幹システム」の定義によりますが、要は部門横断的に使用可能なシステムを基幹システムとします。
例えばPDM Product Data Managementシステム(製品情報システム)は、技術部門だけではなく営業や生産部門も利用するので、基幹システムと呼ばれることがあります。
こういったシステムとERPの違いは、管理しているデータの違いで言い表せます。
ERPは基本的にはお金に関わるデータに特化して管理しているのに対して、PDMは製品情報に特化しています。
ただ、お金に関わるデータも、売上だけではなく、見積情報も関連しますので含まれます。見積の前の、顧客への訪問情報も関連すると言えばするため、そこも管理可能です。じゃあ製品に関連する情報はどうなのか?というと、一部ERPでも管理しています。例えば製品の重量や個数、サイズはお金に関連することがあるためERPでも管理しています。
一方で製品図面などの製品に関する深い情報はERPで管理しても使わないため、管理されないことが多いです。

7.ERP導入のメリット・デメリット

A:
【メリット】
 ・一つのシステムで大半の業務を管理可能
 ・データを統合管理可能
 ・グローバルで最適なプロセスを標準化した上で導入可能
【デメリット】
 ・莫大なシステム投資費用
 ・ある程度システムのプロセスに業務を合わせる必要がある
 ・複雑なシステムのため全容の把握が難しい

8.ERPを導入する場合のプロセス・費用感・留意点

A:これは導入するツールと対象企業の規模によります。
例えば1000名で子会社が15社ほどの企業にSAPを導入すると20億円くらいです。
プロセスはどこも大体同じで、こういう感じです。
要件定義
→業務フローの確定
→開発要件確定
→プロトタイプ開発
→プロトへの簡易テスト
→移行方針検討
→システム開発
→単体・統合テスト
→ユーザトレーニング
→データ移行リハーサル
→データ移行本番
→本稼働後サポート
留意点はたくさんありますが、まず第一にERPを導入することが目的ではなく、何を達成するためにERPを導入するのかをとにかく明確に持つことが大切です。

9.ERPを導入した場合、ユーザー側では、どのような画面が見え、何をどのように操作するのか

A:これは導入するツールによります。
ユーザフレンドリーなツールもあれば、非常に使いにくいツールもあります。
例えばDynamicsはMicrosoftのものなのでWindowsを使い慣れた人は親しみやすいです。
一方でSAPは画面は見にくいです。複雑なシステムが故に、色々な情報が出てきてしまうためです。
操作はパソコンと同じで、ID&PWでログインします。ログインすると第一画面では、基本的には機能別のアイコンがあります。営業、購買、生産などですね。そのアイコンをクリックして対象機能の画面を開き、機能を利用することになります。

10.SAPとはどのような会社か(どのような方が働いているのか等)

A:SAPは生まれはドイツの会社ですが、すでに「ドイツの会社」感はなく、グローバルカンパニーです。
Microsoftと並ぶIT業界の超優良企業です。
従って、世界中の超優秀な人たちが働いています。私もSAPの人と話したりしますが、優秀が故にちょっと変わった人が多いですね(笑)。
グローバルカンパニーなのでFacebookやGoogleのように働き方も先進的ですし、年俸も非常に高いです。
余談ですがSAPはだんだんとSAPというパッケージツールを売る会社ではなくなってきています。
ビッグデータを活用して様々な付加価値を実現したり、SAPをパブリッククラウド化しサービス化し月額課金のような売り方をするようになってきています。

11.【1/20up】SAPコンサル/エンジニアの単価はどの程度なのか

A:だいたいこちらの価格になっていると思います。ただ会社の見積もりの出し方や依頼内容の難易度によってレンジがあるとは思います。
 アソシエイト:80万円~100万円/月
 コンサルタント:100万円~150万円/月
 シニアコンサルタント:150万円~200万円/月
 マネジャー:200万円~250万円/月
 シニアマネジャー/ディレクター/パートナー:250万円以上/月

12.【1/20up】日本と海外で単価に違いはあるのか

A:あります。私の経験ではアメリカ、イギリス、シンガポール、タイ、ベトナム、中国です。基本的には物価に連動しますので、日本よりアメリカ、イギリス、シンガポールは高いです。ただタイ、ベトナム、中国が安いのかというと、日本とそれほど変わらないというのが実際です。またこれらの国は経済成長していますので、例えば中国の上海のエンジニアに依頼しようとすると日本よりも単価が高くなる場合があります。
アメリカの単価ですが、だいたい日本よりも3割ほど高い印象です。為替の影響もありますが、明らかに高いです。

13.【1/20up】日本のSAPコンサル/エンジニアと海外のコンサル/エンジニアに違いはあるのか?

A:あります。
 1.細かいところに気が回る日本と大雑把な海外。これは文化の違いそのままですね。
 2.要件以外のことを依頼するとすぐに費用請求される海外。日本では少しのことであれば、丁重にお願いすれば、スコープ単価内でやってくれます。
 3.人の出入りが激しい。IT業界はそもそも激しいですが、海外はもっと激しいので、プロジェクトの途中でSAPのSDコンサルタントが退職してしまって何度も変わってしまい、一から何度も説明するはめになりました。 

こちらの記事は随時Updateしてまいります。

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