文字ならいくらでも書きます
人間は頼られると嬉しい。特に自分の得意分野であればあるほど喜びはひたひたに満ちる。ハッピーハッピー。
理由は簡単。自分の能力を買ってもらえたという事実が脳天を雷のごとくビシャーンと貫いて、自己有用感でいっぱいになるからです。
中学校の職員室には多方面のプロフェッショナルがいて面白い。
体の調子が悪ければ医療系の知識をもつ理科科が颯爽と現れて漢方薬とかツボとか教えてくれるし、飼育しているメダカの様子とか教えてくれるし、日食とか月食があると興奮気味に話をしてくれる。
ちょっとした計算が必要な時には数学科が誰よりも速く暗算してくれるし、会議の時には論理的思考で効率良く議題を進めてくれる。世の中のニュースや時事的な話題については社会科が躍り出て面白く解説してくれる。
今は無理だけど歓送迎会では体育科が華麗なダンスを披露してくれたし、飲み会の席では音楽科が美声で観客(職員)を沸かせた。プリントに挿絵が必要とあらば美術科がさらさらと簡単に、個展を開けそうな素晴らしい絵を描いてくれる。
外部講師の外国人の先生と「Ah~…Hello!!!」くらいしか話せないときには横から英語科がナチュラルでビューティフルなスピーキングで助けてくれる。
ベテランの国語科(スーパーハイパーグレート生き字引)は、配布するお知らせのプリントや書類の言葉遣いをはじめ、通知表に記載する所見文など、ありとあらゆる文章を確認しては、他の表現を提案し、誤った日本語には文字通り的を射るように指摘する。その的確さにはもはや美しささえ感じる。
対してアマチュアの国語科(漢検未取得)である私は、生き字引の前で二重敬語や「ら抜き」言葉を使わないように細心の注意をはらってきた。
つい口が滑って「お召し上がりになられますか」って言ったときは舌を噛んで自害しようと思ったけど。はずかちい。
そんな字引ほどではない私が唯一、国語科の人間として人に誇れる能力は、ちょっとうまく文字が書けることである。ちょっとだけね。
インターネットの世界にはそれはそれはもう達筆で素晴らしい文字書きの皆様がいらっしゃるので肩を並べようなんてそんな不躾で大それたことは微塵も思っていない。書くことに関する資格などもなく、書道の世界には近づけませんけれども、
職場の中で、手書きで何か書くとなればいわさんにお願いしよう、と言ってもらえる立ち位置にいることは、誇りに思っている。
東に表彰状をいっぱいもらった人あれば、筆ペンで名前書きの清書をし(あなたが持ってる表彰状、国語科が書いてるかもよ)、
西にトロフィーをもらった人あれば、紅白のぴらぴらに証を残し、
南に掲示物作りたい人あれば、サインペンで大きく文字を書き、
北に私の文字を見て褒めてくれる人あれば、むふふと笑う。
今日は文字を書いて褒められたので気分がいいです。
そういえば今ふと思い出したことがあった。大学のゼミの先生に、「君は痒いところに手が届く人やねぇ」と言われたことがある。いてくれるとちょっと助かる、さういふものにわたしはなりたい。
適材適所。水を得た魚になって、自分の持ち味を生かしたいものです。