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「化粧する」ことについて

私は化粧がとても苦手だ。

デパートに入ると、香水なのか口紅なのかその他の何かなのか分からないけど、化粧品独特の匂いがツンと刺激してくる。子どもの頃はそれがなぜか「きゅうりをちょっと調理したにおい」だと感じたことがあるんだけど、共感してくれる人、いない?いないか。

今日は化粧品売り場で、なんか輸血パックか点滴のパックみたいなのにねり梅みたいな液体が入っているのが売られていてびっくりした。あれも化粧品なのか…?宇宙食ではなく…?

てんで化粧に興味がない私が、化粧について思ってきたこと、今思っていることを書いてみようと思う。

ここまで化粧と表現してきて、いや、メイクと書けよと思い直して打ったんだけども、変換したら「名句」ってなっちゃう。職業病ってことにしておこう。

なぜ化粧が苦手か

ずばり、ファンデーションを塗ったあとの顔面を見たときに、どことなく変な感じがするのがずっと嫌だった。なんか、白くない?これ本当に肌綺麗に見えてるの?逆効果じゃない?素肌でも良くね?という気持ちが拭えない。

これ以上目を悪くできないくらいの立派な近眼なので、鏡と5cmの距離でファンデーションする。そのあと、離れてメガネ越しに自分の顔面を見たときの絶望さえ感じる「コレジャナイ感」。ときめかない。

ファンデーションのあとに、アイシャドウとかチークとか口紅とかあれやこれやと多数の種類を重ね付けていくのも大変。たぶん、目が悪くて鏡がよく見えないことが一番の原因。もうね、しんどいの。

そして、人間の朝ってとても短い。そこでときめかない時間を自分でわざわざ作るのにも嫌気が差し、私は特別な時以外は化粧をしない人間になった。

日々のときめきのために、または自分磨きのために、いろいろな種類の、しかも豊富なラインナップの化粧品を、吟味し、試し、選び…という行為を楽しめる方もいるだろう。

でも私はそれも苦手なのである。最近やっとコンシーラーというものが何なのかを知った。アイブロウとアイライナーの違いは未だによく分かってない。あと、なんですか。ティントって。横文字オンパレードのエレクトリカルパレード。

んでもって辛いのは「知らない」というと「知らないの!?」と言われてしまうことである。高校生の時、ファンデーションの塗り方を知らないと言ったら友達に「私が教えちゃる!」と言われてぐりんぐりん塗りたくられたのが今でもトラウマ。無知をひけらかすの、怖い。塗られたのにbeforeより良くなったのかいまいち実感ができなかったことも辛かった。

かと言って、化粧を知ろうと思ってなけなしのお小遣いを手にドラッグストアに駆け込んでも、どの道具をどう使うのかについて、売り場には何も説明がないじゃないですか。本当にティントって何ですか?

自動的に耳を閉じる。でも世の中はどんどん進む。トレンドってやつが目まぐるしく移っていく。今では「イエベ」だの「ブルべ」だの、パーソナルカラー?骨格診断?自分磨きのためにそういうことも知らなきゃいけないの…?

疲れてしまって、それに化粧品や洋服よりも他にお金をかけたいものがたくさんあったから、私は外見を磨くということを後回しにしてきた。顔に化粧品を塗らなくても生きていけるから。

母からは何度も「もうちょっと興味持ちなさいよ」「一人の女性として」「まあいいけど…」と呆れられる始末。

いつだったか、オレンジ系のリップ使ってみたい!と思い立ち、フィッティングしてくれるところに行ったことがある。そしたら、私の肌色にはオレンジ系は似合わないと言われて、なんか残念な気持ちになった。

かと言ってプロからのアドバイスをもらわずに独自で化粧品を買うのも博打。化粧品は一つ一つが割と高額。そう簡単にあれもこれもと購入はできない。化粧品を買うという壁は、私には高かったのだ。

実際、人からのアドバイスを貰わずに最近話題の韓国コスメをノリで買ってみたら全然肌に合わなくて、持て余してます。売りたい。(泣)

化粧は「しなければいけない」もの?

私の中で化粧というのは、一応、「一人の大人の女性としてするべきもの」「人前に出るなら化粧するのは当たり前」という認識があって、言うなれば、モラル的な立ち位置にある。恥ずかしい思いをしないため。他の人もやってるからやる。これは母からたびたび浴びせられた言葉が影響している。

母の気持ちも分かるんやで。娘やから。

でも、毎朝起きて、時間がないのに化粧して、昼間は化粧が崩れていないか時々チェックして、場合によっては化粧直しをして、夜には落とす。その繰り返しである。

私は思っちゃった。化粧、したらしたで、大変面倒くさい

あと、持ち物が嵩張るので化粧品を持ち歩くのもあまり好まなかった。これが原因で、
持ち歩きたくない
→化粧直しが必要ないくらいの薄化粧にしよう
→化粧してもしなくても変わんなくね?
→化粧やめとこ

ってなってしまう。だから、ちゃんと身なりを気にして、自分に似合う化粧を考えて悩んで自分磨きをしている人、本当に尊敬します。

加えて、ここ2年はマスクで顔の半分を覆ってますから、余計に自分にとって化粧というものの需要がないんですわ。見えへんし。

化粧との出会い

少し話はさかのぼる。私は大学合格のお祝いに、母から化粧品を一式プレゼントしてもらった。私は嬉しかった。母も、このタイミングで娘に「化粧して世の中に出る」ことを教育するというか、社会への送り出しのきっかけとして化粧品をプレゼントすることは、だいぶ前からイメージしていたようだ。

そういうこともあって、自分の手で自分の顔に化粧を施すというのが大学生になって初めての経験だったのだけれども、今思えばこまめにちゃんと毎日やってたのって最初だけで、4年間、化粧をしなかった日の方が多かった。

日常的にお化粧される人にびっくりされることを承知の上で暴露すると、4年間で1個のファンデーションを使いきれなかった。…腐ってるんちゃう?

幸い、大学に入ってからは「あんた化粧しなさいよ」って痛いところを突くようなことを言う人はいなかったし、無理やり化粧品買わされるようなこともなかった。私は恵まれていたと思う。

でもメイクを楽しんでいて綺麗に施している人の顔は本当に素敵だった。盛れてる、という褒め言葉が好きじゃないから、似合ってる、素敵、そういう言葉になるけれども、友達や後輩のメイクを見るのはとても好き。

だが自分ごととなると、なぜか、尻込みしてしまう。

その状態がダメというわけではなく、大学時代に周りにいた優しい人々のおかげで、私のままでいられたというか。化粧しないことがアイデンティティというか、一番自分らしく過ごせる姿だったのかもしれない。文字通り飾らず。

ただ、演劇部の活動で役者をするときはさすがにメイクしたなぁ。いつものファンデーションじゃなくて、舞台用のドーランを使うんですけど、それの特別感っていうのは大事。これに関しては飾らない自分でいてはダメで、飾るためのメイク。

化粧してた方が良かったかも

大学という温室で育ったようなものでしたから、化粧せずに過ごしてても居心地が良かったんですよ。部活も、ゼミも。

ところが働き始めると事情が変わってくる。化粧は苦手でもやっておいた方がいいと、だんだん気づき始める。

社会人になってそれこそ初めのうちは、大学時代に使いきれなかったファンデーションをせかせかと塗り、でもかわいらしくなってはいけないからチークは塗らず、華美ではない最低限の化粧をして出勤していた。

でもやっぱり面倒くさいが勝ってしまう!ちょ~っとずつ薄化粧にして、結局ノーメイクで出勤することに成功した。何日も。あいつ化粧してねえよって心で思われているかもしれないけど気にしない。思われてるかもしれないという恐怖は、大学時代に乗り越えてしまっている。

でも一回、さすがに化粧してたほうが良かったかもっていうことがあった。

仕事でうまくいかなくて、上司と話している時にぼろぼろ泣いてしまって、泣き止みそうって時に上司から、「アイメイクしてたら直しておいでっていうけど、あなたメイクしてないもんね。」と言われた。

別に化粧をしていないことを悪く言われたわけでも、嫌味でからかわれたわけでもなく、ただ事実を言われただけなんだけども、ああ、やっぱり女性の嗜みとして少しでもいいから化粧はした方がいいのかもしれない、母の言う通りかもって思った。

それからはファンデーションだけでもうす~く塗るようになった。加えて、ちょっと年齢を重ねたことで肌がファンデーション側に合ってきたというか、「塗った方が肌がきれいに見えるかも」と感じた日があり、それからは前ほどの苦手意識が軽減したように思う。

(ただ、学校現場って、夏場の灼熱地獄で汗水砂埃でドロドロになるってこともままあり、オフィスレディーのような美しさなんてくそったれっていう場面は結構あるよね…体育科や運動部顧問は特に…)

性別で隔てられた壁がなくなりつつあること

ファンデーションを塗った自分の顔に違和感があった昔に比べたら、今はそこまで嫌悪感なく塗れるようになった。前述したように、ちょっと肌が老いたから、化粧したほうが美しく見えるようになったことも一つ。

そして、昨今、テレビに出演している男性タレントや男性アイドルが、メイクや脱毛、美容など、外見を磨くためのたゆみない努力をしている+それを隠さない風潮もあって、「メイクや美容って本来は楽しいものなのかも」と思いつつある。

元はと言えば、母からしょっちゅう言われた「女性なんだから化粧くらい嗜みなさい」というのがすごく引っ掛かっていて、女に生まれたがゆえ化粧をせねばならんのかと憤慨に近い思いもないではなかった。そこが最近解消されたのが大きい。

だって氷川きよし見てよ。めっちゃ美しいやん。

未だにティントが何なのかは分からないし、自分のパーソナルカラーが「なにベ」なのかも知らないけれど、気に入った色のアイシャドウをちょっと塗るだけでも、特別感があるような。そんな感じがする。

それから、なるべく「面倒くさい」を減らすように工夫した。多忙すぎるので昼間の化粧直しはしないと決め込み、化粧ポーチは持ち歩かない。オフする時は洗顔不要の、シートで拭きとるだけでOKのものを選ぶようにした。少しお金はかかるけど、そもそもファンデーションを使い切るのに数年単位かかる人間なんだから、「面倒くさい」を減らすための出費くらいは良いか、と思うようにしている。

ノーメイクで新宿へ

今日。本当に面倒くさいが勝ってしまったことと、ソロ行動であること、大した用事じゃないことを理由に、ノーメイクで、そしてユニクロのTシャツとジーパンという飾らなすぎる格好で、新宿へ行った。

大学時代の私だったら平気だっただろうけど、今日はちょっと違った。なぜか、すごく、他人から見られている気がする。やたらすれ違う人と目が合う。ダサい、ちんちくりん、センス皆無って思われてそうな感じ。

おまけにすごく道に迷ったので、同じ場所をぐるぐる歩いていた。それもあって、自分がめちゃくちゃ惨めに思えた。せめて顔くらいは化粧しておけば良かったかも。

新宿で目的が果たせなかったから、池袋に移動した(表題写真)。雨が降っていて傘をさしていた。それでもなお、人目をすごく気にしている自分がいた。いつの間にか、化粧はした方がいいものだっていう感覚が育っていたのだろうか…

もうちょい良い服欲しいな。そういえば最後に美容院行ったの何ヶ月前?今週忙しかったから目元の表情がめちゃくちゃ怖いかも。など、柄にもなく「人から見られてる」ことを気にしてしまった。息苦しくて疲れてしまった。台風のせいか、頭痛も激しい。

今日の「化粧した方が良かったかも」という感情が良いか悪いかは別として。確実に、今日はちょっとだけ生きにくかった。

自分が楽しめて、ときめきのあるメイクアップをしたいものです。

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