青い扉02

 僕はゲームが得意でないから、すぐに友達に順番を譲ることになったものだが、他人のプレイを眺めながらワイワイ言うのが好きなタイプだったので、なにも不満はなかった。それよりもゲームの電子音と友達の笑い声や罵り声をBGMに、他のゲームウォッチをしたり窓から外を眺めたりするのが気持ち良かった。そんな時、時々、20mほど向こうのマサヨちゃんと目が合ってるかどうか、はわからなかったが、顔を見つけることがあった。
「なあ。マサヨちゃんて、最近外で遊んでるんか?」
僕はふと気になって、ボソッとハッピーターンをかじりながら声にしてみた。
「なんか、身体がちょっとだるいらしいで。走るとしんどくなるんやってさ。」
ピコピコとミサイルを飛ばしながら目が大きく見えるメガネをクイっとあげながら平井がそう応え、
「マサヨちゃんは風邪とかひいたらあかんから、あんまり疲れることもしないほうがええらしい。、、、なあ、今から、その下の花摘んで持っていったげよや。」
なんてことを思いつくのか、それが竹田くんの大人っぽいというか、カッコいいところだ。
「母ちゃん。なんか花入れる瓶ある?みんなでマサヨちゃんに花摘んでもっていったげるねん。」
「まってや。この花瓶、プラスチックやから割れへんし、オレンジ色でかわいいやろ。これ、持っていき。」
なんて素敵な母ちゃんだろうか。
 僕ら、というか竹田くんと平井と僕は、棟の横にある自転車置き場の裏に咲いていたシロツメグサとなんだか名前はわからないオレンジ色の花を摘んで、水道で花瓶に水を入れて3階のマサヨちゃんの家まで届けに行った。薄黄色の扉の上の表札には「阪田」とあり、マサヨちゃんの名前も書いてあるようだが、まだ僕たちには読めなかった。チャイムを鳴らすと、マサヨちゃんのお母さんがドアを開けてくれた。
「あら。みんな来てくれたん?お花⁈ いやー!ありがとう。喜ぶわぁ。まぁちゃん今日は具合良いから、上がってお話ししたげて。宿題の本読みも今終わったところなんよ。まぁちゃーん!平井くんと竹田くんと樋野くん来てくれたよー。」

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