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歴史的株安を予想できなかった日本のアナリスト、予想していた海外ヘッジファンド

歴史的株安となっている。日経平均は高値から4000円以上下落し、ダウは5000ドル以上下落し、S&Pも500ドル以上の下落である。何れも20%以上の下落を記録している。こうした事態を日本の証券アナリストは予想していなかったが、海外のヘッジファンドは予想していたところが多い。なぜか。

 ではまず、2017年の日本の証券アナリスト笑による2018年末の株価予想・景気動向を見てみる。

2018年末に2万円台後半まで日経平均株価が上昇して、年末高になると予測するプロが多く、なかには3万~4万円を予測する強気派も

 知っての通り現在日経平均は現在2万円を割り込んでおり、12月の予想はコレだけの人数が予想してほぼ全員外れという恐ろしい的中率である。なお、トレーダー出身の豊島逸夫氏は2018年後半の下落を見事的中させている。流石である。しかしながら、彼はヘッジファンドの代表であり、証券会社のアナリストと比べてしまうのは失礼な話だろう。

 

 続いて海外ヘッジファンドの予想である。まず2018年1月に行われたダボス会議によるブリッジウォーターアソシエイツ代表のレイ・ダリオ氏の予測である。

「市場はこれから大量の現金に溺れることになる。それは強力な緩和となり、市場は恐らく吹き上がることになるだろう。現金をそのまま保有している投資家は馬鹿を見ることになる。」

 これだけを見ると株式市場に非常に強気な予想である。しかしながら、彼はこうも警告している。

「私たちの考えでは、金融緩和する余地がなくなったときに起き得る市況悪化のリスクに十分な注意が払われていない。なにか確証があるわけではないが、特に今は『買い』は控えたい」
「米連邦準備制度の利上げペースが速過ぎる場合、1937年と同じような相場の大幅下落を引き起こすリスクがある」

 彼は利上げを非常に警戒しているようであり、「中央銀行が金利を現行水準から1~1.25%引き上げたら、金融資産価値は下落する」とも言っている。つまりは、2018年前半は株価は上昇するが、後半にかけてFRBの量的緩和縮小、利上げが続くようであれば、市場は崩壊するだろう、と言っているのである。そして2018年市場はこの通りの動きをした。素晴らしい予測である。

 次に新債券王と呼ばれるダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏の予測である。

S&Pは2018年はマイナスのリターンとなるでしょう。年の前半は15%上昇するかもしれませんが、それが落ちるとき、前半の上昇幅を上回る下落をするでしょう。

 彼は根拠としてレイ・ダリオ氏と同じくFRBの量的引き締めを挙げており、この予測もまた的中している。


 こうした予想を見てわかる通り、日本の証券アナリストはレベルが圧倒的に低いのである。リターンばかりの方に目が行き、リスクの方を見ていないのか、気が付いていないのか、全く無視しているお粗末な予測なのである。なぜここまで予測に乖離が生じてしまうのか?


不自由な証券会社・自由なヘッジファンド

 そもそもヘッジファンドと証券会社の違いはなんだろうか?どちらも株式や貴金属・商品先物市場を使って利益を上げる、という点では同じであるが、両者には絶対的な違いがある。それは、取引を行うのが自分であるか、他者であるか、という点である。

 例えば今自分が一千万円を保有し、それを運用しようとしたとする。ヘッジファンドに投資をしよう、とした場合ヘッジファンドにそのまま一千万円を預けるだけであり、売買取引そのものはヘッジファンド自身の責任で行う。そして取引差益から利益を享受する。

 一方証券会社に一千万円を預けたとしても、売買取引は行われず、取引は自分自身の責任で行わなければならない。証券会社はその取引の手数料から利益を享受する。

 こうした違いにより、ヘッジファンドは取引に秀でてなければならず、証券会社は取引で劣っていてもいいのである。証券会社は取引をさせるのが目的となるからである。

 取引で明らかに劣っている者が未来を予想してもまともに当たるわけがないのである。それが冒頭で述べた証券アナリスト連中の予想の的中率に反映されているのだ。

 私が言いたいのは、取引を自身で行うならば、少なくともこうした証券アナリスト達よりは上に立たなければならない、ということである。証券アナリストの言われるままに取引を行うことなど愚の骨頂である。なにしろ彼らの発言は最終的には「取引は自身の責任で行ってください」に帰結するのだ。これほど無責任な職業があるのだろうか?

 来年もまた厚顔無恥なアナリスト達がしたり顔で株価を予想するであろう。去年大外れをしでかし、それを信じた人に大損をさせているとしてもである。そうした被害が少なくなるよう願うばかりである。

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