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KISS #2 & Solos

Kiss - Animalize (1984)

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 キッスの音楽的遍歴を聴くと時代の変化の著しさを激しく感じる。70年代はキャッチーでポップなR&Rながらもイメージは悪魔的インパクトを放ち、愛らしいギャップがウケたが、徐々に激しい音になりつつディスコブーム到来時は「(I Was Made For) Lovin' You Baby」でヒットを放ち、その後に陰りを見せた時代は驚きの必殺技でメイクを落として話題をさらった。そこにギタリストの交代も重なり音楽的には当時シーンに浮上していたNWOBHMの波からLAメタル、ヘアーメタル、グラムメタルの方向性を取り入れてシーンの生き残りを懸けていた。一方バンドの内部はメンバーチェンジもありながら、ジーンがキッス以外の仕事に重きを置いたためポールとの仲も険悪になったようだ。本作「Animalize」はその時期、1984年に録音リリースされたアルバムで、これまで知らなかったが、ジーン・シモンズがベースを弾いていない、参加していない曲が半分近くを占めていた。キッスにそんなアルバムがあるとは思いもしなかったが、それでもバンドを牽引して作品を創り上げていたポール・スタンレーの仕事ぶりには脱帽。

 時代はバブルな80sで周囲はポップスで舞い上がっている時代、キッスの生き残る道はLAメタルシーンへの迎合しかなく、折角メイクを落として素顔になったと言われつつも、結局派手な別のメイクを施してPVにも登場し、時代に合わせるような派手なヘヴィギターを持ち込んで周囲のシーンの音と遜色ないサウンドを創り上げた。ポール・スタンレーに加えて、デスモンド・チャイルドのプロデュースの功績も大きく貢献して、派手な時代に別の意味で派手なアルバムを生み出している。当時はキッスのこんな作品を聴いてもさほど面白味も感じなかったが、再度改めて聴くと無理しながらも相当頑張っている作品に聞こえるし、ポール・スタンレーの歌声の艶やかさも一際抜けてくるし、楽曲のクォリティは申し分ない。ヒット曲「Heaven's on Fire」や「Thrills in the Night」のキャッチーなメロディラインはキッスらしさを残した相変わらずのレベルと舌を巻く。

 話題はギターのマーク・セント・ジョンの唯一作と知られる面が多いが、ヘヴィサウンドに取り組んだキッスのギタリストには相応しいプレイを披露しており、短期在籍が勿体無いが、この時期のキッスのギタープレイヤーの価値はおかげで随分と軽んじられている。ただ、曲によってはトリッキーなプレイも聴けるので、キッスらしさを捨てて時代に迎合した時期の迷作に数えられるアルバム。歌メロは好きな作風が多いので、元来のキッスらしさはあると思うがこの音ではなかなか聞き取りにくい。後になって聴き直すアルバムにならないのはやむを得ないか。数少ないジーン・シモンズの曲は相変わらずのテイストなので、その分キッスに本腰を入れていないとも言えるか。「Lonely Is the Hunter」など聴きやすくて悪くない。

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