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Cream: Jack Bruce, Ginger Baker & Pete Brown

テクニック抜群のクリームのメンバーは解散後当然ながらいくつものセッションに精を出しソロ活動も盛んに行ってロックの歴史ではあちこちで垣間見られる。

Jack Bruce - Songs for a Tailor (1969)

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 ジャズとロックの架け橋に大きく貢献したジャック・ブルースはロック側から見ればあのクリームの立役者で、今でも伝説のグループと君臨しているし、ソロ作やミュージシャンの活動を見ればジャズ畑のスタイルをロックに持ち込んだ人。音楽の境界線を無視した活動をしている天才肌のベーシスト兼ボーカリスト兼ハーピスト、ピアニスト。音楽の才能溢れる人です。

 そんなジャック・ブルースが1969年にリリースしたファーストソロアルバム「Songs for a Tailor」。クリームを解散させてから速攻でソロ活動に入り、ロックとジャズの境目を渡るようなセカンドアルバム「Things We Like」でその存在を改めてアピールしてエリック・クラプトンを単なる一ギタリストと知らしめてしまった感もあったが、ジャック・ブルースの方はバンドメンバーにこだわることなくマイペースの活動でさっさと出したファーストアルバム「Songs for a Tailor」。しかも参加しているメンツが主軸はクリス・スペディングとジョン・ハインズマン。コロシアム的な意味合いもあるけどジャック・ブルース的に歌を聞かせながらバンドが活躍するスタイルが多い。「Songs for a Tailor」では更に英国らしいアコースティック調の曲も増えて、英国人と感じる部分も聴けるのが面白いし、充実した楽曲が満載なので気に入っている名盤。英国B級ロックの世界で光り輝くハリー・ベケット、そしてジョン・マーシャルの参加に加えて、こういう実力組の中では単に名前だけがメジャーすぎて才能を発揮する間もなかったジョージ・ハリソンもいる。エリック・クラプトン絡みだろうか。まだビートルズ解散前だが、あまり知られていないセッション。

 そして「To Isengard」ではクリームの再演のようにグチャグチャのワウギターとベースとドラムのバトルを繰り広げた傑作が聴ける。あの緊張感はクラプトンである必要もなく展開できると言わんばかりにクリームテイスト溢れた音を出している。そしてアコースティックな始まりから展開される「Rope Ladder To The Moon」ではマウンテンのフェリックス・パッパラルディの歌が響き渡る。これも完成度の高い一曲で、後のマウンテンの成功と共にこの時期のジャック・ブルースとパッパラルディの友好関係が顕著に出てきたケース。そのマウンテンが「Climbing」で発表して名曲とロックリスナーの記憶に残っている「Theme For An Imaginary Western」は元々ジャック・ブルースの作品で、本人のソロアルバムでリリースされていた。有名になったもん勝ちだけど、聴き比べてみると面白い。

 そんな傑作アルバムでメンツ的にも英国B級からジョージ、そしてアメリカトップの面々まで参加させた自信と意欲溢れる作品で、埋もれさせておくには勿体無いアルバム。エリック・クラプトンの初期作品やデラックス・エディションをリリースするならこの「Songs for a Tailor」を拡張盤でリリースしてもらいたい。あの頃のブリティッシュロック好きな人なら絶対気に入る一枚。

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