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Gong : Pierre Moerlen, Steve Hillage

Gong - Camembert Electrique (1971)

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 ここまで来たらやはりゴング。超名盤の「Camembert Electrique」です。永遠のヒッピー、デヴィッド・アレンの話はソフトマシーンの話題を紐解くと出てくるが、バンドでフランスツアーへ行ったら麻薬常習者だったアレンの入国が許可されずにバンドを脱退せざるを得なかった人。またフランスでバンドを組んでソフツを追随するかのようなサウンドを創り上げた天才の物語です。先日初めて来日公演を行ったが、ヒッピーのままだそうだ。

 ファーストアルバム「Magick Brother」で世に出たゴングはいわゆるサイケ、ドラッグ感バリバリの浮遊サウンド。アレンの才能豊かな音楽性が垣間見れたけど、セカンドアルバム「Camembert Electrique」では初っ端の「Radio Gnome」の効果音から「んん?」っと思わせながら素晴らしきカンタベリー的ロックの名曲「You Can't Kill Me」。どこかで聴いたことのあるような独特のカンタベリーメロディーに乗せたカッコ良いロック。続いての「I've Bin Store Before」もボードヴィル的で同時期のキンクスがやり始めていた何でもありの感覚が見事。全体的にザッパのアルバムを聴いているようなコミカルな雰囲気が漂って、アレンのユーモアセンスが光る。サウンドはプログレと括られてしまうには勿体無い多様性がある。後半の「Tried So Hard」もギターのカッティングとピップ・パイルのドラミングが凄くロックでカッコ良い変態サウンドで良い。以降怒濤の佳作揃いでアルバム全体の印象を最後まで崩さない作り方は、この作品が最高傑作と言われる所以。

 ソフトマシーン以上にバンドメンバーに変化の激しいゴングはアレン脱退後もバンドが継続されて、いつしか超バカテク集団のフュージョンバンドになっていくけど、そういう変化もソフツ的で面白い。当のアレン本人は相変わらず思い付いたらプレイするヒッピーな人。才能ある人の生活は羨ましい。

Gong - Camembert Electrique (Remastered) (1971)

 様々なアーティストやアルバムを耳にして、カッコ良かったり美しかったり素晴らしかったりと色々な感情が生まれてくるが、別の角度で聴くとバンドで作り上げている、一人がデモテープで完全に作り上げている、譜面を書いて仕上げている、プロデューサーとスタジオで作り込んでいる、などなど様々な作品の生み出し方があり、ロックバンドなら大抵はその制作過程も何となく分かるし、ギターで、ピアノで、鍵盤で、ジャムセッションからとイマジネーションも膨らむが、プログレッシブ・ロックやジャズ・ロックなどは果たしてどういう形で曲が出来上がっていくのか不思議に思う作品も多い。バンドで演奏をブラッシュアップしてテーマに沿って作り込んでいく演奏中心のスタイルならまだ理解出来るが、とんでもなくアバンギャルドで定型が定まらずフワフワと進むサイケデリック調のスタイルなどはまるで想像が出来ない。ミュージシャンが秀逸でリーダーの狙っている音や出したい音を幾つかのプレイで目線を合わせて演奏していく、それもコードワークから生まれる自身のセンスとバンドが求めるスタンスを上手く繋ぎ合わせての才能など、果たしてそこまで狙って作れるものだろうか、と疑問すら浮かぶが実際そのように出来上がり、満足したレコーディングだった、などと発言していたりもするからきっとそうだろう。どこからどこまでがワンマンで出来上がりプレイヤーへの指示があり、作られていくのか、ずっと見ていたら分かるものだろうか。ロックは深い。

 1971年にリリースされたGongの名作と誉れ高い「Camembert Electrique」も果たしてどうやったらこういう音が出来上がるのかといつも不思議に思うアルバム。ギリ・スマイスのウィスパーボイス程度なら指示出せるが、この浮遊感漂うアルバム全編となると当然デモテープがあったりすると分かるのもあるが、大半は意味不明。それでいて「You Can't Kill Me」など、とてつもない名作名演奏が展開されるのだから不思議で、デヴィッド・アレンがそこまでの才能を発揮して作り上げたとしか思えないが、それを的確に再現しているリズム隊、特にピプ・パイルの軽やかでジャジーでまさにカンタベリーを代表するかのようなドラミングには全く舌を巻く。それが見事に楽曲にマッチしていて、ひとつの流れすら作っているとなれば素晴らしくバンドの音になっているとも言えるし、だからこそ初期ゴングは熱狂的なファンが多いのも分かる。以前聴いていた時には最初は凄いが徐々に飽きてきてダレてしまったと感じていた自分がいたので、今回は果たしてどう思うか自分でも興味津々だったが、完全に別の角度から別次元で聴いていたようだ。ただそれでも所詮はロックを聴いているので、単純に楽しむ、凄さを味わう、何か凄い、と味わう方が大きかった。聴きながらふと、諸々あれどゴングはフランスのバンドとして位置付けられているし、だからだろうか、マグマ的な呪術コーラスワークの畳み掛けが似ている部分あったり、そもそも楽曲の展開はザッパ譲りの超絶バカさアホさ加減だし、かと思えば所々で聴かれる同じリフレインの繰り返しなどは正しく初期ソフト・マシーンがよく使う展開なので、どれもこれも聴き応えある、と言うよりもその辺りがふと自分にも入ってきてしまう楽しさがあった。それだけ色々聴いてきたからこそ改めて楽しめた聴き方でもあろうから、より一層ゴングの世界観も入り込んでみたくなってきた。

 アホらしさの筆頭格とも言われる「Dynamite : I Am Your Animal」などは今の時代では決して誰も思い付かないだろうし、やらないだろうと思うが、それでもここで真面目に登場してくる凄さ。アルバム全体は言われているようにスペイシーな世界で間違いないが、何を持ってスペイシーなのか、浮遊する空間音であれば「Fohat Digs Hole In Space」あたりがその類に相当するし、もっとサイケデリックなアホさで言えば「I've Bin Stone Before : Mister Long Shanks : O Mother」〜「Fantasy」あたりも凄い。そして妙ちくりんなポップならば「Tropical Fish : Selene」に尽きるだろうが、この辺りはまさにアレン在籍時代のソフト・マシーンにありそうな曲なので、どことなく自分の中でも繋がってくる。そしてやはり最初の「You Can't Kill Me」の凄さに戻ってまた聴きたくなってしまうハチャメチャさ加減。Didier Malherbeのサックスも正統派からしたら妙だろうし、Christian Tritschのベースは完全にジャズそのままで、やはりPip Pyleの軽やかなドラミングがアルバム全編をヘンなだけにしないで、カンタベリーサウンドという世界に留めてくれている。結局は何とも心地良い世界をひたすらに堪能して、この妙なヒッピーミュージシャンの思惑に囚われていくのだろう。聴けば聴くほどに味が出て来て虜になっていくのも妙な話。一般的に名盤です、的な物言いでは片付かないし、普通に聴いた程度では決して好きになれないし名盤とも思えない、思えたとしても何曲かだけなので、そこを超えないとこの作品の凄さと真実には出会えないかもしれない。自分でもそこに行き着いたとは思っていないが、少なくともこの楽しみは深々と味わえているのでまずは良いだろう。

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好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪