50s-60s Black Blues
Cadillac Records (2008)
チェス・レコード=キャデラック・レコードとは映画「キャデラック・レコード」で知られた話。最近のコメントで映画を紹介頂いて初めてその映画を知って早速見たところでのブログ記事です。ご紹介感謝です。レコードやCDの音とクレジット、それに過去からの幾つかの情報だけでブルースを漁っているが、こういう形でチェス・レコードについて纏められると随分と分かりやすくなり、自分が漠然と思っていた情景が見事なまでに映像として描かれている。サラリと人間関係の確執やキャラクターも描かれているから音楽だけを聴いていた印象とは大いに異なるし、実際はもっとドロドロとした関係性と時代だったと思えば単純にレコードを聴いて良い悪いと思うだけではダメだろうと思ってもいる。ただ、単なるリスナーとしてはどうしても残された音でしか判断出来ないからやむを得ないが、その補填の意味もあっての映画はエンターテインメントとしても必要だし、歴史を紐解く意味でもあれば有り難い。
主役はレナード・チェスとマディ・ウォーターズ。マディ・ウォーターズがここまでチェスに貢献的な方だったとは知らなかった。また、リトル・ウォルターのヤンチャぶりは音だけでなく実生活と性格もそのままだったとは思わなかったので、新たなる発見だし、ハウリン・ウルフとの確執も言われてみれば納得するが、ここまで露骨だったかと。脇を固めるウィリー・ディクソンのプロの職人ぶりの描き方とエンドロールでのクレジットで、Zeppelinのヒットで1億以上稼いだと書かれていたのも驚き。薄々往年のブルースメンが英国白人小僧達のおかげで金持ちになったと聞いていたし、頭が上がらないとの発言も目にしていたが、ここまでの恩恵があったとは驚く。そしてそれぞれが50年代ではシングルヒットを放ってナンバーワンにもなったにも関わらず貧乏暮らしだったのも、売れた枚数が絶対的に少なかったからだろう。黒人音楽市場はまだ発展期でクローズドな世界だったからそのヒットも限定的だったのか。チャック・ベリーになるとそれがボーダーレスとなり自力でアメリカを制した人かもしれない。黒人ミュージシャンの目からみた白人シンガー、エルヴィスやビーチボーイズは単なる模倣でしかなく、怒りの対象だったとも納得するが、見事に盗みカネにしたビジネスセンスと解釈も出来る。
エタ・ジェイムズの生い立ちとチェスとの絡みが終盤のメインストーリーにもなり、マディ・ウォーターズがマネージメントに徹しながらも若いエタ・ジェイムズがヤンチャぶりを発揮していたようだ。自分が名前を知った時には既に貫禄ある大御所おばちゃんだったので、イメージも付きにくいが、最後の最後で歌われる「I'd Rather Go Blind」の曲の良さ歌の素晴らしさは圧倒的。映画ではビヨンセが歌っているが、これも素晴らしい歌声で、近年のアレンジのヒットシンガーのイメージを持っているとその地力の凄さに慄く。現代の音楽シーンのトップを張る連中は音楽性は好まなくても、才能や素質がずば抜けている連中とは知っておくと面白い。50年代前後白人と黒人が一緒に仕事をして信頼関係を築き上げた例は多くないが、チェス・レコードと歴史に残る場所でその功績が達せられたのは大きい。後の時代から見れば確かにアメリカを変えた人々の物語。普通に映画的にも面白いしブルース好きなら更に楽しめるナイスな作品。
好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪