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Alice Cooper

Alice Cooper - Pretties for You (1969)

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 才能のある人は早い時期にその才能を見出されるもので、その才能に全てを委ねたくなる人も周囲に群がり、何でも出来る状況が早いウチに巡ってくる天才もいる。そう多くはないだろうが、音楽面での天才的才能とビジネス面は大抵マッチする事なく、そこを履き違えて大失敗するケースも多そうだが、ザッパの天才性はその辺が凄い。60年代からシーンに登場しつつもザッパ自らはバンドの一員的でしかなかったのがその天才変態ぶりから主役に踊り出てしまい、さっさと全てを追い越してソロ活動を中心にせざるを得ない状況にまでなっていた。更に恐ろしい事に、その時点で自身のレーベルまでをレコード会社から任されていたのかそうなったのか経緯までは把握していないが、自分の作品はBizzareレーベルでリリースし、別途Straightレーベルからはあのアリス・クーパーを輩出していたのは今では知られた話。それが1969年の事なのでザッパ自身シーンに登場してからそれほど年月が経ってからの話でもないし、まだ若い、若すぎる頃にレーベルを持ち、プロデュースまでしていたのは果たしてどんな経緯だったのだろうか。

 Alice Cooperの1969年リリースのファーストアルバム「Pretties for You」は上記のような背景から、またザッパに見出されてデビューにこぎ着けたとも言われるが、その意味はこのアルバムを聴いてみれば一目瞭然。1969年と言うサイケデリックな時代と思われていた頃にリリースされるにはぴったりな作品、しかも初期ザッパ、マザーズの思想からしてみたら好むであろうサウンドを出しているのも至極理解できる作品となっている。後年のアリス・クーパーをイメージして聴くアルバムではなく、単にこの時代の背景を認識して音楽を作り上げている集団として捉えると、アメリカでは珍しいくらいにきちんと浮遊したサイケデリック感を出している。大抵引き合いに出されるのはピンク・フロイドの初期作品、即ちシド・バレットの創り上げる世界観がほぼ同じものなので、正常な人間がこの世界を作り上げられる事自体が才能だと思うし、ザッパが惹かれた部分かもしれない。これまで自分でもあまりこの最初期のアリス・クーパーを聴かなかったが、もしくは聴いても何だかな、という印象しか持たずにまともに聴かなかったので目線を変えて取り組んでみてようやくその姿勢やスタンス、目指したであろう姿が分かってきた。ただ、英国と比べると少々時代遅れ的でもあって当然セールスは不振だし、ザッパからもほぼ飽きられてしまった悲しい経緯もあるようだ。それでも残された作品はこうして再評価と言うか色々な聴き方される事でアリス・クーパーの見方も変わるし、良くも悪くも大成したからこそのお話。

 正直一曲づつコメント出来るほどのサウンドの違いが見当たらないし、アリス・クーパーの歌声が個性的でもないし、バンドの演奏もサイケデリックに徹底しているからテクニカル云々やブルース云々もなく、更に言えば意外な事に妙なエフェクトを掛けまくってのサイケデリックでもない。そこはきちんと楽器と音階、旋律と精々リバーブレベルでサイケデリック風味を創り上げているので、他に類を見ない正統派のサイケデリックとも言える。また、よく知られているが本作収録の「Reflected」が後の「Billion Dollar Babies」に収録の「Elected」と改作されてヒットを放った経緯もあるので、アリス・クーパーとしても全く不本意な作品でもなさそうだ。その聴き方をしてみると「Fields of Regret」あたりではサイケデリックと言えどもフロイド的、ただ計算されたフロイド、シド・バレット的な風味が強く、それは即ち後のアリス・クーパーで奏でられる演劇的な楽曲の下敷きとして捉えてみると随分シニカルな雰囲気ながらも同じ香りで作り上げられているように感じるので、本質面はこのアルバムでも発揮されていると思う。

 ちなみにこの頃のアリス・クーパーとはバンドの名前でしかなく、ボーカルのヴィンセントの名前ではない。自分もアリス・クーパーとは人の名前だと思ってて、女の子をイメージするアリスを名乗る人とはまた妙な事考えるものだと思っていたくらい。今はそのヴィンセントは改名して実際にアリス・クーパーが本名らしいが、それも凄い話。日本ではそこまでではないが、アメリカではかなりアリス・クーパーは知名度が高い有名人のようだ。それにしてもこのアルバムの雰囲気はアリス・クーパーの名前を意識しないで普通にその時代の音として聴くとかなりハイレベルな楽曲センスを聴けるのでポップやカラフルさはさほど見当たらないが、シニカル的センスを感じる作品。

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