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The Rolling Stones #3

The Rolling Stones - Blue & Lonesome (2016)

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 ストーンズがブルースカバーアルバムをリリースする事は随分前から話題になってたので、割と楽しみにしていた。元々がそういう出自のバンドだし、初期のアルバムではモロにそのままだったのもあるし、それでカッコ良かったし。初期のアルバムは大好きだから、まさかああいうのにはならないだろうけど、やっぱり原点回帰は楽しみでもあった。クラプトンにしてもそういう回帰はちょこちょことやってるからネタ的にもありだろうし。とは言え、どういう風にやるんだろ?となるとあまり考える事もなく、そんなにアレンジもしないだろうし、そのままストーンズサウンドだろうと漠然と思ってた。それをいよいよ聴けるのは嬉しい限り。

 2016年リリースのThe Rolling Stones「Blue & Lonesome」。正に昔のラジオで鳴っているかのようなモノラルみたいな音で、しかもラフなスタジオでのチープな録音を再現しているカネ掛けた安っぽい音作り。どうも馴染みやすいと思ったらこの音だ。ブルースにはこういう音作りがちょうど良い。ハイファイな音だとどうにも味気ないし、そもそもがスカスカの音楽だから音が分離してると更にスッカスカになっちゃうから、こういう真ん中に音を集めたのが良い。実際はきちんとしたステレオサウンドでバランスの取れた定位で鳴らしているので楽器ごとの音は聴きやすい。それでいてこのガレージサウンドは一発録りに近いのだろう。マイク並べてせーの、で録音みたいな。ドラムの音も生々しく鳴ってるし、シンバルだって、近年こういう音の録音など聴く事ないし。ウソかホントか知らないけど、録音している時に隣のスタジオにクラプトンがいたからゲストで参加してもらって、と言うのも話題のひとつ。ちょこっと弾いてるだけで無茶苦茶引き締まるのはさすがの風格で、アトランタのライブの様相を思い起こす。同じブルース好きでのブルースルーツのスタイルだからもっとマッチするかと思いきや、割と水と油的なスタイルの違いがユニーク。

 キースがこれだけギター弾いてるのをじっくりと聴けるのも良いな。こうして聴いてると割とロニーとのギターの違いが顕著になると言うか、そんなに違いを追求した事なかったけど分かるモンだな、多分。テレキャスなのかな、これ。どの曲も二人のギタリストがこうしようああしよう、なんて決めて弾いている風は全くなく、曲決めてそれぞれのスタイルでカバーしてそのままの解釈で鳴らしていると言うか、だからふたりのギタリストがそれぞれの想いで弾いているからユニーク。ソロパートはどっちって決めてるからそういう鳴り方だけど、やはりさすがだ。しかも凄いのはどの曲もストーンズ。当たり前だけど。ミックなんかもう何歌ったってストーンズだし。ハープ吹きまくりが楽しかったんだろうか、リトル・ウォルターのカバーがちょいと多めにも見える。チャーリーのドラムも、いつもとは違って鳴りが良いからか、生な音で響いてくるから全然ストーンズらしくはないけど、全体としてはやはりストーンズ。案外バンドらしさが出ちゃってるのも面白い。

 総じてストーンズはやっぱりストーンズだったし、ここまで完全にブルースをロックにしちゃったバンドはいないし、原点回帰してみたら自分達がブルースを飲み込んでいたってのがアリアリと分かる作品。50年やっての原点回帰だからスゲェわ。こういうの聴いてるとこのジジイ達まだまだやれるんだろうと思う…ホントかよ。さりとていつもの如く、この手のアルバムはギター的には結構何度聴いても楽しめるしじっくりとフレーズを研究するには持って来いのアルバムだけど、リスナー的には単調なので何度も聴けないアルバムになるかもしれない。そこはブルース、やっぱり満腹にはなる。

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