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Roger Waters

Roger Waters - Pros & Cons of Hitchhiking (1984)

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 ピンク・フロイドのメンバーのソロ作で一番好きなのはやはりロジャー・ウォーターズで、それはピンク・フロイド的という理由ではなく、逆にロジャー・ウォーターズの醸し出す雰囲気と独創的な音やリズムが好きだ。ピンク・フロイドが先ではあったけど、到達した世界=「The Wall」や「Final Cut」という特殊性の強い音が良くて。ロジャー・ウォーターズのソロ作品はこの路線の継承なので、一般的には「The Wall」や「Final Cut」はロジャー・ウォーターズのソロ作品、みたいな言い方もあるが、いずれにしてもロジャー・ウォーターズの独創的な世界観は興味深い。

 アルバム「The Wall」のデモを制作し、更に本作「ヒッチハイクの賛否両論」のデモも同時に制作してメンバーにどちらを選択する?と訊いたところメンバーは「The Wall」を選んだ。結果「The Wall」はピンク・フロイドの名盤として名を馳せたが、一方の「ヒッチハイクの賛否両論」のコンセプトも更に飛翔させてロジャー・ウォーターズはソロ作品として発表した。ピンク・フロイドでやれることはやり尽くした後、アルバム「Final Cut」をリリースしてから一年後にこの「ヒッチハイクの賛否両論」がリリースされた。何とも驚くことにギタリストにはエリック・クラプトンを配した作品で、ここまでクラプトンが全面的に参加したアルバムも珍しい。しかもロジャー・ウォーターズの言いなりでのギタープレイだからクラプトンも新たな仕事の仕方だっただろう。

 もちろんそのクラプトンのギターによるアルバムの緊張感の高さという功績は大きく、元来ロジャー・ウォーターズの頑ななコンセプトと重苦しいサウンドで飽きが来るような代物に、ドライなブルースギターが入る事で聴き込みたくなる音に仕上がっている。しかもクラプトンのソロはギタリスト的に凄く良い。こんなソロ弾けるならソロアルバムでデビューすれば良いとすら思ってしまう。そしてアルバム「ヒッチハイクの賛否両論」の楽曲はさすがに「The Wall」と同時期のデモから引っ張ってきただけあって「The Wall」を彷彿とさせるリフやメロディが聴けるのも面白い。アルバムとしては全然違うものなのに音が被る。

 コンセプトは悪夢を見ていた人のお話らしく、内容自体にはさほど興味を抱かないが作風や曲のアレンジ、女性コーラスの使い方などもうロジャー・ウォーターズの世界が既に構築されている一枚。冒頭からずっと悪夢を語っているが、最後の数曲でのクラプトンのギターの激しさと美しさと感情の開放感が素晴らしく、また楽曲のクオリティも圧倒的に優れたナンバーが収められている。やはり名盤の域に入る代物で、まだまだ市場では軽んじられている作品なのが勿体無い。明らかに評価不足。クラプトンのスライド・ギターを味わう意味でも。そんなクラプトンの引き出しをしっかりと引っ張り出したロジャー・ウォーターズの才能とこだわり。そして何と言ってもピンク・フロイドに対する敵対心の強さも出ていた頃、とにかく「The Wall」「Final Cut」と聴いたら次は「欝」ではなく「ヒッチハイクの賛否両論」を聴くべきな一枚。

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