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Soft Machine solo : K.Ayers, R.Wyatt, Matching Mole, H.Hopper, E.Dean, Adiemus, G.Ayers

Kevin Ayers - Joy Of A Toy (1969)

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 正常な世界の人間にもシド・バレットの感性と共感できる人物が身近に存在していた事は非常に希有かもしれないが、その音楽性を聴くと妙に納得できる。類は友を呼ぶと云うか英国は広いと云うか。60年代末期のUFOクラブに集結していた面々の中でも傑出していた存在のソフトマシーンから音楽性の違いで脱退したケヴィン・エアーズとシド・バレットのバンド結成は今や幻で終わってしまったが、その断片がケヴィン・エアーズの「Joy of a Toy」のリマスター再発盤のボーナストラックで「レリジアス・エクスペリエンス(朝に歌えば)(シド・バレット・セッション)」と収録されているので聴き所。

 ケヴィン・エアーズの作品だが恐らく全く性格的には異なるハッピー主義のヒッピーであるケヴィンの音楽性と狂気の縁に追いやられているとイメージされているシド・バレットの音楽性に実に共通点が多く、なるほど一緒にやることにした理由も分かる。ケヴィン・エアーズも初期ソフツの中では煌びやかなポップ性を出していたが、それを更に強調した作品が「Joy of a Toy」の黄色いアルバム。オープニングは「Joy Of A Toy Continued」。「Continued」の意味はソフツのファーストアルバムに「Joy Of A Toy」(もちろんケヴィン作)が収録されているからと思われるが、まったく楽曲的に共通性がない。あまり根拠も意味もない気もするが。いずれにしてもケヴィンのソロ作の冒頭を飾るこの曲こそポップさを語るに相応しい名曲。誰でも口ずさめる「ら~ら~、らららら、ら~ら~ら~。」が良い。丁度シドのアルバムでの曲名が不思議なものが多かったのと同じようにこの人の作品も妙なのが多い。「ぶらんこの少女」とか。これもソフツの面々がバックで演奏してると思うがカンタベリーらしくて。中ジャケに少女ではないがブランコに乗った女性の写真とケヴィンがギター弾いてるモノクロ写真があるが、女性は「レディ・レイチェル」の「歓びのオモチャ」だろうか?こういう見方すると深そうだ。他にも同時代のヴェルヴェッツの音楽性ともリンクする曲調の「狂気の歌」、傑作「汽車を止めろ」を聴くとホントに汽車が走っているような疾走感が見事に音で世界を表現しているのに驚く。途中からの脱却具合も見事で笑っちゃうくらいに最高。しかし「エリナーを食べたケーキ」とは?でも、聴いてるとそういう曲調で、こういうセンスはシドに相通じる部分あると思う。そして「レディ・レイチェル」は重いメッセージをきっちりと伝えようとしているのか、ケヴィン独特の不協和音と反復メロディが世界を創り出していて、その気持ち悪さが心地良く面白い。効果音や和音の使い方が普通ではない。この辺から単に脳天気なだけではない、シリアスなサウンドが前面に出てくるが「オレ・オレ…」は相当実験的で興味深い。こういうのをこのポップな作品の中に織り交ぜてしまうところもセンス。オリジナルアルバムの最後の曲はアコギで掻き鳴らされる「この狂おしき時」。シド的な作品。

 やはりケヴィンならではの意欲作となったファーストアルバムだが、次作「Shooting at the Moon」でも名曲「May I」があるので外せないし、以降はやはり多種多様な楽曲を手がけていくけどこの辺の初期作品は何でもありだから面白さが倍増。ジャケットもさすがなものでしっかりしてるし。永遠のヒッピー、まだまだ日本に来てライブで楽しませてほしい。

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