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Japanese 90s- Hard & Heavy

Aldious - Deep Exceed (2010)

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 日本でもこういうルックスの美女達がHMを演奏するバンドが出てきた事が面白い。世界各国で女性が今非常にタフになって、日本もガラパゴス的進化も伴って妙な方向に進んでいる。欧米から日本のロックバンド崇拝者が出ても不思議はないし実際多くなっている。その中でアルディアスの位置付けは際立っている。

 ようやくメジャーデビューしたアルディアスは10月に初めてのフルアルバム「Deep Exceed」をリリースした麗しき女性バンド。4曲入りシングルの「Defended Desire」は辛口評価にならざるを得なかったが今回の「Deep Exceed」はプロダクションがしっかりして、本来の演奏能力も高くなったか、アルバムの出来具合が全然違う。やや歌物中心になってるけど女性ばかりのHMバンドで良い。

 「Deep Exceed」は完全にメロディアスなHMで、普通に張り合えるレベルでパワーも見事。重さは欠けるけどギターのテクニックも凄い。強いて言えば歌が弱いが、ライブだと迫力で押せるけど、スタジオ録音だと力強さが出てこない。

 曲は覚えにくいけど楽曲レベルは高く、アレンジもしっかりしてるし、現代の女性は昔に比べれば歌も楽器も上手いから凄い。様式美も吸収して発揮されてるので、あとはヒットするきっかけがあれば全国レベル。ただ、そうするとバンドが短命に終わるから地道にファンを獲得するスピードが良いだろう。ライブで叩き上げてるからこれからも楽しそうな麗しき乙女たちです。

Aldious - Defended Desire (2010)

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 これは目立つ存在だ。キャバ嬢ルックスのお姉ちゃん達によるメタルバンド。もともとメタルの世界は綺羅びやかで派手な格好をしてステージをする幻想の世界だから女性だけでバンドを組んでメタルしたら派手なドレスや艶っぽい衣装でステージに出るのも当たり前で女性の色気をメタルにしている日本独自進化。

 先日メジャー最初のアルバム「Deep Exceed」がリリースされたけど、とりあえずシングル「Defended Desire」です。こんなジャケット見たら目を惹くので、それだけで聴きたいと思わせる。テクニックや音も期待してなかったが、案の定パワー不足で、一辺倒な音だからメロディが洗練されれば違うし、メリハリやタテの躍動感があると変わる。

 ルックスの独自性は見事だから、今後音楽のセンスをどこまで展開できるか、女性らしいメタル世界を確立できるかと世界観を出せたら強いと思う。

Dragon Guardian - 真実の石碑 (2010)

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 Light Bringerで名を馳せているFuki嬢参加のDragon Guardianはスピードメタルで凄いテクニックやアレンジの上をFuki嬢の歌が駆けていく。流石にここまでのスピードで彼女の歌声はLight Bringerの時ほど生かされていなくて勿体ないが、その辺がゲスト参加の違い。

 Dragon GuardianはアニメとRPGの世界で造られていて、男優ナレーションやアニメのセリフが入るので、何を聴いているか分からなくなる世界だ。一昔前に筋肉少女帯で大槻ケンヂが実現した世界がここまでメジャーになってスピードメタルを伴って浮上してきたとも思える。もっとファンタジックな思想が走っているけど、あまり触れない世界はこうして交錯していく。

 Dragon Guardianの3枚目「Dragonvarius」と先日リリースされた「真実の石碑」でFuki嬢が参加、曲構成は大差ないけど、歌の使い方は「Dragonvarius」の方がFuki嬢のハイトーンを生かせている。

Garneryus - Resurrection (2010)

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 インディーズではなく同人出身のメタルバンドも既に20年近く前からあって、Light Bringerにハマると周辺情報も目に入って、その中でガルネリウスが出てきた。その世界を追いかけているファンからはガルネリウスは英雄視されるバンドだが自分が知ったのはつい最近。ガルネリウスもボーカルが替わって現状は小野正利氏を迎えた心機一転の作品「RESURRECTION」をリリースしたばかり。

 小野正利氏は驚くくらいアニソン的でハマって技術のある歌の上手い声の出るボーカリストです。一時期はレコ大で賞を取った人だから伊達じゃない上手さです。ガルネリウスの持つテクニックもぶっ飛びで、更に曲のバリエーションは幅広くメロディアスで練られてギターソロも流暢。これが今のメタル。作品もよく出来ているし気合も相当入ってて歌がやや引っ込み気味のミックスだけど、これ以上大きくすると歌が前に出過ぎたか。

 「RESURRECTION」はバンドとボーカルが別物に聴こえるから、一体感が出て来たら多分最強です。世界に出ても通用する日本のアニソンメタル、メロスピメタルだけどメンバーやバンドの来歴はスタンダードな80年代メタルの生存者。ライブDVD「3rd Live DVD LIVE IN THE MOMENT OF THE RESURRECTION」も発売で今勢いに乗っている。

Light Bringer - Tales of Almanac (2009)

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 「萌え」な世界からメタルへ乱入して「萌え」心を奪ったLight BringerのFuki嬢。そのきっかけはセカンドアルバム「Midnight Circus」で、それ以前のアルバムや楽曲だけならそこまでハマり込む人も多くなかったと思うが、「Midnight Circus」で「萌え」から力強いメタルシンガーへ変貌し、ただでさえテクニカルなバンドの音に突き抜けた感を植えつけて快進のアルバムを作り上げている。

 Light Bringerの最初のフルアルバム「Tales of Almanac」。シングルやミニアルバムをリリースしているが、セカンドアルバム「Midnight Circus」でも自主制作で、レーベル名がLight Brinerの略称ラブリーになってる。「Midnight Circus」は文句なしの最高傑作で、ファーストアルバム「Tales of Almanac」も自主制作のサウンドプロダクションで、チープ感はあるが、普通のアマチュアレベルは超越したバンドの力量。そしてこの時代までセカンドアルバム「Midnight Circus」との差が一年くらいしかないが、ボーカルのFuki嬢は「萌え」な声と歌だった。今プロフェッショナルな歌声になったFuki嬢がここまで変わると面白いく、この頃の方が好きな草食系男子も多いだろう。

 セカンド「Midnight Circus」を聴いているので、ファースト「Tales of Almanac」の曲は割とチープに聴こえてしまうが、楽曲レベルの差はそれほど大きくない。メロディアスな面とロックな面のバランスの違い程度で、それより音の作り方や歌の違いによる印象の違いが大きい。今の力量でこのファーストアルバムをメジャー作品で再録リリースしたら興味深い。ただ、これまでも同じ曲を何度か再録してクォリティ高いものに仕上げているから可能性もあるか。

Light Bringer - Midnight Circus (2010)

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 Light Bringer=通称らぶり~のセカンドアルバム「Midnight Circus」は相当の名盤。何十回聴いても飽きない深さがあって、ボーカルのFuki嬢の突き抜けた歌唱力と歌い方は日本人の歌い方を逸脱した、多分アニメとバンドの力量から世界に出ていけると思う。ビジュアル系の側面もあるし、こういうバンドが日本の親善バンドになると面白い。まフィンランドのLordiの例もあるから良いが、大いなる誤解を世界に与える事にはなる。

 最初から最後まで44分程度の「Midnight Circus」は聴きやすいサイズが故に何回もリピートしてしまう。分かりやすく書けば音は最近の複雑なヘビメタだけど歌唱力のある歌がメロディアスに歌詞の世界も非常に興味深いテーマを扱った深い世界でポップでキャッチー。バックのメンバーの力量は半端じゃなく、こういう曲も普通には出来ないからいくつものパターンを作って組み立てたとは思う。変拍子も普通に取り入れてるし。

 「Midnight Circus」。これだけ何回も聴くアルバムも久々で、ルックスやバンドのスタンスを気にしないで音だけ聴いたら日本のバンドも捨てたもんじゃないと思う。

Light Bringer - noah (2011)

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 コレだけハマれる音がまだ出てくる事は嬉しい。あらゆる音に手を出してて、何度も聞きたいと思える音もなかなかなくハマり切れない。どうしても昔のバンドが多くて、新しい音でハマれる作品は少なかった。一時期聴くアルバムはあるけど何年かすると風化して、思い出す程度も多い。そうやって自分の中のライフミュージックが作られているけど、ここの所二年近く聴いてるLight Bringer。かなりヘヴィロテでも飽きないで深みが出てくる。

 多分、ひたすらファンタジーで現実的ではないので聴きやすい。歌謡曲なら良いけど歌詞がくだらないとダメで、元気づけられる前向きで希望な勢いと歌詞と歌声。この荒んだ世の中でこれだけピュアに出てくると引き寄せられる。バンドも超テクニカルなメタル感覚だけどポップで今の時代なら普通に受け入れられる。アイドルメタル、もっと言えばアニソンメタルだが、そのヘンの個性はメジャーデビュー一発目のシングルやPVで出す事もなく、普通のバンドから出てきた。だからメジャー以前の雰囲気からは垢抜けてすっきりした感じで一般に受けてる。オタなファンからはLight Bringerが遠い所に行った感があるかもしれないが、その分メジャーなファンを掴む。

 凄いレベルの楽曲と歌とアレンジで才能あるバンドです。それぞれの楽器のフレーズが曲を通して同じパターンが少ない。曲の進行と共にフレーズが変わるが、歌メロはAメロとかBメロサビとあり、違うバックに同じ歌メロを載せている高度なスタンスで歌詞も深い。熱唱ボーカルも気持ち良いし、ドラムやベースも天才的才能を披露してる。鍵盤のセンスも凄くて、この鍵盤がなかったらもっと黒いメタル寄りかもしれないが、鍵盤で軽くして、歌で更にキャッチーになってるバランス。

 Light Bringerの「noah」という新曲シングルCDで、2曲目のバラードはいきなりピアノと歌のみの歌謡曲で「noah」と同じバンドとは思えない展開。昔のアルバムに入っている再録曲だが、唯一のバラード。3曲目はLight Bringerの本質で一番「らしい」けど、もう過去の事かもしれない。メジャー前からライブでやってた定番曲の音源化。

Light Bringer - genesis (2012)

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 2009年頃から聴いてたLight Bringerが2010年11月にメジャーデヴュー。アルバムは「genesis」だから、もしかして壮大なる天地創造物語をイメージした作品とも思ったけどそうではなさそう。音はメタリックでメロディはポップで圧倒的なテクニックと各楽器のアレンジが普通以上のレベルで鳴っている。これが日本の標準なら相当レベルは高いが、新世紀の幕開けと呼べるバンドの登場と位置付けても良いだろう。

 そして売りになっているFuki嬢の歌のパワフルさと歌唱力と表現力。ルックスも良いが、それよりも実力が凄くて圧倒的なエネルギーを発散する表現力が心地良い。バックがどれだけ凄い事やっててもこの歌声が曲を全部纏めてくれるのでLight Bringerに集約される。その分楽曲はどんなアレンジと曲風でもメンバーの個性が十分出てくる上で歌声がバンドを纏め上げるから、バンドは実験できるし楽しめる。

 アルバム「genesis」に詰め込まれたサウンドと歌のパワフルさに自分を合わせるのが大変で、重くも軽くもなくポップでもメタルでもなく、テクニカルさは前面に出てるけどいやらしさはなく47分のコンパクトなサイズに抑えられている。しかも冒頭はインストなので実質45分を切った集中しやすいアルバムの長さ。おかげでスルメ盤になって何度も聴いてしまうが、凝りまくってるから飽きない。メロディも覚えやすく、音の煌びやかさも今の時代の象徴で、ドラムも信じられない技を披露している。ギターに至っては神ワザで何でもサラリと弾きこなしているし、グルーブも持っている。ベースはもう超人的にブイブイ弾いてて、特に速いビートの曲では圧巻。鍵盤も曲を印象づける旋律が鳴った音の洪水の中、Fuki嬢の歌が更にパワフルに元気とエネルギーを発散して飛び込んでくる。

 褒め尽くしてますなぁ。Mao君のポップス調のバラード中心で鍵盤の美しさがメインになっている曲、Hibiki氏のプログレメタル好きな凝り性楽曲の激しさ、そしてKazu氏のバランスの良いメロディラインが上手く纏まってLight Bringerを構成してFuki嬢が看板として引っ張る構図。歌い方も3種類くらい使い分けて、声の出し方も変えてるが、どんな歌い方でも熱唱時の白熱ぶりが最高。

Light Bringer - Memory of Genesis (2012)

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 Light BringerのライブDVD「MEMORY OF GENESIS~Lovely Music Tour 2012 Final~」。元々凄いバンドでライブも何度か見ているので、その凄さやパワー、テクニック、そして楽曲のレベルの高さは郡を抜いているし、それが世の中から見たらまだちっぽけな存在が信じられないバンド。映像も期待を裏切らず、自分が見た時よりもパワーアップして、もはや元々の同人系バンドではないポップメタルプログレ・バンドになってる。ちょっと前のPV見てたら可愛らしくて若いアイドルだったが、このDVDで見れるメンバーは凛々しい大人になってた。こんなに迫力あって上手くて、ボーカルのFuki嬢の歌声が日本屈指のボーカリストの声量、熱唱が伝わりやすい。そこに楽曲の良さやメロディの良さが入り、アレンジの凝り方が半端ないのでテクニカル面も注目されている。弱点はマネージメントとプロダクションだけ。

 まだニッチなファンが多く、DVD収録の会場ですら200人くらいしか入らないハコで、プロがやる場所ではない程度の狭さ。熱気に変わりはないが、ライブでやった曲が全編収録されていないので怒りを喰らっていたが、DVDを後世まで残る作品として見た場合、ライブ全曲を収録する必要はないだろう。インディーズ時代の曲をメジャーにずっと引きずっているバンドも皆無で、メンバーも変われば再録もないから、その時代を一緒に生きたファンの思い出でしかない。何かの機会に大事な楽曲を演奏して再度想いに耽る感じか。ただ、今後のLight Bringerは過去のインディーズ時代より良いバンドになるし、名曲も出していくと信じたいので、前向きに考えて良いだろうと楽観的。

Light Bringer - Scenes of Infinity (2013)

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 Light Bringerの新作「Scenes of Infinity」でメンバーも固定されたようだが、毎回とんでもないアルバムをリリースしてくれる秀逸な音楽ユニット。そして聴けば相変わらず凄いです。「Scenes of Infinity」は高品質高品位ハイレベルなアルバムで欧米諸国のメタルアルバムに負けてないクォリティがある。インディーズとメジャーの境目でやってるとは勿体ない。

 アルバムは強烈な楽曲ばかりでもないけど、Fuki嬢の歌声を聴くと身が引き締まる。冒頭から詰め込みまくった音に負けずにあの声が出てくるから凄くて、この歌のパワーに驚く。曲が良い悪いレベル以前に圧倒される。何度か聴いて慣れるとようやくバックの音や細かい音が聞こえてくるけど、今度はその緻密さと変態的な凝り具合とテクニックにまた開いた口が塞がらない。そこまで聞いてから改めて全体的に聴いて、ようやくアルバムのそれぞれの楽曲のメロディや音、曲調が見えてきて良い悪いの判別が付くが、既にそこまで聴いてるから悪い曲はないし、単純に凄い作品。

Lovebites - Awakening from Abyss (2017)

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 アルバムジャケットだけはアマゾンで見ていたLovebitesのデビュー作品「Awakening from Abyss」。その時点ではどこの国のバンドか認識していなかったが、日本のバンドだった。今の時代女性のメタルバンドもメジャーになって、楽器演奏テクニックも凄いから興味本位で聴いた。

 インストから2曲目が始まると、この時点でとても日本らしいバンドの音になってる。アメリカでも英国でも諸外国でもない日本の湿った感のあるサウンド。出てきたギターや楽器類の音は日本のメタル勢の音で、男女関係なく見事なバンドサウンドでテクニックも申し分ないし、曲構成もよく出来てて驚くレベル。歌も日本的な声質で鳴り物入りのバンドのボーカルで流石のバンド。

Quadratum From Unlucky Morpheus - Loud Playing Workshop (2021)

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 70年代英国ロックをメインに洋楽(死語)ロックを聴いてばかりなので日本の音楽にも他の音楽にもかなり疎い。クラシックもきちんと聴いていないのでスタンダードな曲も分からないから、当然それらにインスパイアされてのどうのこうのもよく分からない。正式音楽過程で出てくるであろう何とか法やあるべき理論系も全然理解出来ていないので単なるリスナーの域を出てないし、故に稚拙な耳でも耐えうるロックばかりを聴く事になるが、演奏している側は当然ながらプロのミュージシャンなのできちんと音楽的な教育も受けていたり知識を持って演奏している方が多くて、稀に才能だけでやってる人もいるが、大抵は音楽という学問を学習している、とは思う。パンク連中がそうなのか、と問われるとそうでもないとは思うが、メタル系はかなり熟知したミュージシャンが多いと思う。と言うのもロックの大部分は死んだと思われているものの、メタル系だけはまだまだ発展しているし、様式美が中心=クラシックからの発展の道がまだまだ理論的に無限に可能だからだろうし相性も良い。更に楽器面から見てもテクニカルなプレイヤー達が演奏するに速くて正確で変拍子や展開もありアンサンブルも意識しての音楽理論的な音楽的アイディアと刺激が全て詰め込まれているのもメタルだし、更に音色の豊富さもそこに絡んでくるので、アタマ振りたいだけの人から超絶テクニカルミュージシャンまでが取り組める幅の広さと懐の深さを持った世界。なので今やメタルだから、と敬遠するとかなり損する事になるかもしれない。

 今回たまたまYouTubeでバイオリンで弾く「Eruption」が出てて、当然どうなるのか興味津々でクリックして見れば、それはJill嬢=Unlucky Morpheusのバイオリン奏者のソロプレイで、かなりぶっ飛んだ。エディのあのまんまをバイオリンでプレイしているので、バイオリンでライトハンドが鳴るのか、と期待したがそうではなく、当然バイオリンであの音色を弾いているが、ギターとバイオリンがここまで同じ音が出るのにも驚いた。この曲、面白い事にバイオリンのプレイながらもエフェクトは本家本元と同じように軽いフランジャーとエコーが掛けられて、楽器は違うけど出てくる音は同じ感を再現してて、こんなゴスロリな少女、お姉さんがクラシックの英才教育を受けていた方とは言え、こうも弾けるものなのか、とマジマジと何回も見て聴いていた。クラシックバイオリンを演奏する方には簡単なのだろうか、そしてしばらくしたら今度はイングヴェイの「Far Beyond the Sun」がアップされていて、今度はバンド単位での演奏なので果たしてどうなのか、とワクワクしながら見ていたらワクワクどころかぶっ飛びまくった。イングヴェイのあのフレーズをものの見事に再現しつつアレンジフレーズも入れつつ、オリジナルでは鍵盤とギターの掛け合いをこちらではギターとバイオリンの掛け合いで入れてるし、とにかく音色もテクニックも全てが完璧で凄すぎた。Jill嬢のバイオリンだけでなく、メンバーの凄まじい演奏ぶりとテクニックと、それに加えてのバンドアンサンブルに息の合い方もさすが長年のバンドプレイヤー達と唸らされる世界。決してメジャーで売れているバンドでもないが、ここまでの超絶テクニックを持ち合わせたプレイヤーやバンドは今の日本に数多くいるのだろうか、恐らくいるだろう。今や音楽学校に集まる人達もシーンに登場するし、当然音楽教育も受けて当たり前のようにギター理論も知ってて、各パートを受け持つ連中と出会うシーンも増えたレベル感から音楽が奏でられるから昔に比べたらレベルが高い。

 QUADRATUM From Unlucky Morpheus名義の「Loud Playing Workshop」がリリースされ、そのプロモーションの一環で続々と楽曲が見れる。全9曲でメタル系速弾きギタリスト中心のイントロ作のカバーをバイオリンで奏でているアルバムで、ボーカルのFuki嬢は出番なしながらも、故にUnlucky Morpheusの演奏部隊のとんでもないテクニックとセンスだけをクローズアップしてお披露目している。残念ながら自分的に知ってる曲は数少ないが、それもまた速弾きプレイはともかく、中盤以降のメロディアスな聴かせるギターソロがバイオリンで奏でられ美しく飛翔するメロディが聴けて昇天もの。原曲を弾いているプレイヤー達が見て聴いたら感動すると思う。如何にこの手の速弾きギターソロとクラシックバイオリンがマッチするか分かるし、そのままクラシック流にアレンジしても良いのかもしれない。バイオリンで主旋律を奏でるだけで妙にクラシックになるし、そのバックは全て普通にメタルサウンドで面白い融合、そして違和感なく馴染んでいる新しい世界。David Garrettも同じアプローチでバイオリンとロック、メタルの架け橋を進めているが、今回のQUADRATUM From Unlucky MorpheusのJill嬢のプレイはそれ以上にルックスのアンバランスさもあって世界中に衝撃を与えている。自分も同じく衝撃を受けたのでこればかり聴いているが、他の曲もドリムシにスティーブ・ヴァイ、トニー・マカパインにレーサーX、インペリテリと超速弾きギタリスト代表選手権的な曲が並び、クラシック的に聴ける面白さがあるので世界は広い。それも日本でこのクォリティだから素晴らしく、世界を相手に見てもこれだけのプレイと発想が飛び出してくる国はそうそうない。

Unlucky Morpheus - Hypothetical Box ACT 2 (2010)

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 Light Bringerの「Midnight Circus(ミッドナイト・サーカス)」にハマってから4ヶ月くらい経つけど相変わらずお気に入りの一枚で楽しい。ライブもあるので見に行ったりしたい思いつつも対バン形式が好きではないのとセットが短いと不満なので1時間くらいのライブを待ってる。

 Light Bringerにそこまでホレこむ理由は楽曲の楽しさもあるけど、Fuki嬢の歌唱力と表現力が凄いからも大きい。もっと聴きたくなって調べたると、自分の知らない世界に出会うので困る。Unlucky Morpheusなるプロジェクトの事を知る=通称「あんきも」。Fuki嬢は名前を天外冬黄として、ギタリスト兼コンポーザー人と二人で相当に本気で遊びユニットでアルバムやシングルも出している。果たして何がどうなっていつ曲を覚えて歌っているか不思議なくらいあちこちで歌ってるが、あの凄い歌唱力だから凄い。

 「Hypothetical Box ACT 2」は「Hypothetical Box」をFuki嬢の歌唱力アップによる再録した作品。メロスピのオンパレードで、歌メロがメロディアスなのでFuki嬢得意のパワフルなハイトーンをフルに使っている。歌詞も独特の世界で、曲によってパワフルなFuki嬢の歌と萌えなFuki嬢が掛け合ってて幅を持たせている遊び心。ちなみに楽曲レベルは全くインディーズや同人のレベルを超えていて、圧倒的にプロレベルで、自由奔放にアレンジして売る事を考えずにやってるから凄い突き抜け感がある。

 メジャーでは聴けない音りをいくつか聴いて、その世界の深さと広さに感服。そして圧倒的な歌唱力で自由に歌いまくるFuki嬢の更に身近に聴ける歌声と表現力にも感服。確かにこういう活動も含めて自由に歌っている姿の方が望ましいが、集める側は大変。

 最後の「その魂に安らぎを~Dignity of Spirit」はNightwish並のアレンジにFuki嬢が熱唱している素晴らしき楽曲で面白く、メタルファン的にもギタリスト的にも驚愕の楽曲。

Unlucky Morpheus - Change of Generation (2018)

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 The Unlucky Morpheusの2018年リリースのアルバム「Change of Generation」。今でも東方系を理解していないけど、要するにこういうバンドがあって、それなりの人気を博している認識。ボーカルはLight Bringerで度肝を抜いたFuki嬢を配しているからパワフル且つメジャー級メタルバンドと想像は付く。これまでも聴いていたので知ってたサウンドだけど、世界レベルを基準に考えるとそこまで個性はなくて苦手。ただ、日本枠になると突出したサウンドとテクニックでぶっ飛ぶレベル。継続的に活動してアルバムをリリースしているから強いけど、Fuki嬢の歌声の凄まじさがバンドを唯一無二のものにしている。

 スピードメタルをバックにあの声量で歌い上げてバンドを後ろに追いやるが、バンド側も負けじと凄まじいプレイを繰り広げてくるのでワンマンでもなくバンド単位のアンサンブルも素晴らしい。そこにバイオリンを入れて、より一層上品な感性を持ち込んでいる。クワイヤや曲展開を聴くとEpicaに近い音世界と自分なりに知っている世界と親しいものを感じた。

陰陽座 - 鳳翼麟瞳 (2003)

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 Light BringerのFuki姫が憧れる陰陽座の黒猫。そういえば自分も一時期陰陽座を面白いと思って聴いてた事を思い出した。陰陽座は妖怪暗黒系なので、明るく元気で前向きなファンタジー系のFuki嬢が歌うとイメージが合わない。陰陽座の黒猫の方が大人の色気や和風なトゲの無い、円やかな歌い方で攻めてくるのでスタイルの違いも歴然ではある。

 陰陽座もインディーズでアルバム数枚出してからメジャーでリリースされているから今のLight Bringerと同じような歩み、しかもレーベルはキングレコード。ならばそういう時期の音の方が面白いと思ってメジャーで2枚目となる「鳳翼麟瞳」。2003年のリリースながらアルバムジャケットは「火の鳥」のイメージだが、アルバムタイトル通り「飛翔」がコンセプトにある。陰陽座の曲名は難しくて読めないし、意味も分からないのでそこまで追求してないが、そういう歌詞とコンセプトと思う。このバンドにハマる要素は音と歌詞の深さと和風の面白さにあって、ただ垂れ流す音楽とは違う深みのあるバンド。

 「鳳翼麟瞳」は冒頭からヘヴィメタルの王道とばかりに雰囲気も音も攻めてきてくれる気合を感じるメジャー作品で、暗黒妖怪メタル色はあるけど黒猫の歌が和むメロディと言い回し。曲も聴かせる風だが、その中でも大曲大作で10分くらいの「鵺(ぬえ)」がある。この時代に日本のメタルプログレバンドがメジャーなアルバムでこんな作品入れてる事に驚くが、テクニカルな演奏と凝ったアレンジの上を抜ける男女ボーカルはかなり唯一無二の世界。和風メタルは肌に馴染むが、多分このヘンの作品群が一番陰陽座的に熟していた時期。

陰陽座 - 夢幻泡影 (2004)

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 既に10年以上も活躍しているのでベテランの領域ではある陰陽座。古い世代のメタル好きに訴えかけてくる和風でありながらも王道の香りを漂わせてファン層が広がっている。更に若いフォロワーも多数生み出しながらシーンの先頭を今でも歩んで一目置くバンド。嬢メタル好きには声も好みだけど音も曲も良いのでヘヴィに聴いてます。

 2004年にリリースされた陰陽座の5枚目のアルバム「夢幻泡影」は、円熟期でもあるし最高傑作とも言われるハイレベルで満足度の高い一枚。根本にはヘヴィメタルがあるけど、学の高い中心メンバーのおかげで、単なる色物で終わらずにマネージメントと売り出し戦略に則って音を出して、男女ボーカルによる絡みの面白さを今回は最大限に活かしている。交互に歌って曲に色を付けるのみならず、サビに至っては二つの歌詞と二つのメロディが重なり合う芸術性の高さ。しかも韻を踏んでいる歌詞から音を合わせている器用な作り方。そこまで考えて作り込む事は容易ではなく時間がかかろう。そして楽曲も起伏に富んだ作品で非の打ち所がない。

 その余韻が多分ずっとアルバム中で響いてて、王道メタルの聴きやすさと黒猫の変幻自在なボーカルがアルバムを飽きさせないし、瞬火の歌も良いアクセントになる。更に頭振りたくなるリフがカッコ良いので、とても最近のバンドを聴いてるとは思えない。

陰陽座 - 臥龍點睛 (2005)

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 陰陽座を知ってる人も多くないが、今の日本のメタルシーンの中で男女ボーカルを配した徹底的に古語と妖怪チックに拘るバンドで、キワモノだけどその日本へのこだわりぶりが海外でも評価されて人気を博している。

 どのアルバムが最高と言える程ではないけど、全部聴いた中で最初に印象的な曲が入っていた2005年リリースの6枚目のアルバム「臥龍點睛」。4曲目の「甲賀忍法帖」がポップでキャッチーだった。後で調べたらアニメソングのタイアップ曲だから、こんなキャッチーでポップさを出していたと。それでも凄く分かりやすくてウケる楽曲を自分達を殺さずに出してるから凄い。新たなファンを獲得した事は想像に難くない。

 陰陽座は欧州のゴシックメタルと同じスタンスで、向こうが「ゴシック」様式を用いるなら我が日本は「和」を用いるコンセプト。歌詞は完全日本語どころか古語や語呂まで混ぜ合わせたパッと聴いても分からない難しい日本語。こだわりを持つ発信側と理解しようとする受信側の図式で日本語を再度認識してもらうから凄い。アルバムトラックも全部日本語だから読めないタイトルやアルバムタイトルも出てくる。

 完全にスピードメタルに近い世界だが歌は演歌です。男女ボーカルでも女性の黒猫さんが歌う方が好きで、ギターソロの入り方やアレンジは昔ながらのメタルファンに堪らないパターンでツボにハマる。ゴリゴリのリフではないけど、柔軟な姿勢を持つメタル。

#Rock #ロック #音楽レビュー


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