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Soft Machine #2

Soft Machine - Fifth (1972)

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 アヴァンギャルドサウンドから遡るとカンタベリーにまで行き着き、カンタベリーの中でも最前衛的な音を出していたのはソフト・マシーンと思い出す。ソフト・マシーンの遍歴はアルバム毎にサウンドもメンバーも替わっていくので、キング・クリムゾン的かもしれない。サウンド的には全く正反対で激情的なシーンが全くと云って良いほど聴かれないのがソフト・マシーン。逆に激情的なアンサンブルを重要視したのがキング・クリムゾンとも言える。

 長いバンド歴史の中でも真ん中に位置する「Fifth」は、全作品中最もジャズに近づいた作品。しかし根はロックだ。聴いているとそう思う。面子もエルトン・ディーンのサックスを筆頭にマイク・ラトリッジのオルガン、ヒュー・ホッパーのベース、ドラムはフィル・ハワードとジョン・マーシャルでフリージャズ的な要素が強いと括ってしまっては元も子もないので、フィル・ハワードの叩いているA面はかなりフリージャズのエッセンスが強く、エルトン・ディーンの真骨頂とも云える一曲目の「All White」がもの凄く心地良い。かと思うと続いての「Drop」では聴き慣れたマイク・ラトリッジのオルガンが心地良く鳴ってミニマル的な要素も強い従来型ソフト・マシーンの音。こういうの好きだからソフト・マシーンは良く聴く。ヒュー・ホッパーとマイク・ラトリッジは展開を決めたジャジーな音が好きらしく、一方のエルトン・ディーンはフリーフォームなスタイルが好きで、そのせめぎ合いがこの時期のバンドのバランスを危うくしているし緊張感を煽っている。しかしこの後ベーシストで参加するロイ・バビントンがダブルベースでゲスト参加した「As If」はかなり激しいバトルの繰り広げられるインプロ中心の曲でベースが見事に歌っているし、サックスも素晴らしい。そしてソフト・マシーンらしいマイク・ラトリッジのオルガンが美しく冷たく淡々と鳴っていて良いと思わせる。この時期のソフト・マシーンは結構好き。

 アルバム「Fifth」は1971年から72年頃にレコーディングされ、1972年にアルバムリリース。同年フランスで行われたライブが「Live in France」として1995年にリリースされ、驚きのあまり速攻で買ってしまった。これはドラムにジョン・マーシャルが参加してて、アルバムほどの鋭さはないけど「5」の曲中心でライブが丸ごと収められているマニア必聴のアイテム。ソフト・マシーンはホント時期によって音が違うのでそれぞれのライブ音源も聴くと面白いし、この頃のライブは他では聴けなかったから刺激的だった。

 この時期にエルトン・ディーンは自身のソロ作品「Just Us」もレコーディングしていて、こちらもほぼ同じような面子で録音されているので兄弟作品として聴いておきたい。こうなってくると全くジャズメンと同じようなセッションで誰がリーダーか、だけの違いになる。

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