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Albert King

Albert King - The Big Blues (1963)

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 1989年のブルースカーニバルか、B.B.KingとAlbert Kingが一緒に来日してコンサートしたのを見た。Albert Kingは現地でバンド調達か常にアドリブプレイブルース、選曲で一人でギター持ってコンサート会場に来て音を合わせてその場でプレイします的な演奏に比べ、B.B.Kingは見事なまでの完全パッケージのホーン・セクションまで従えてのパフォーマンス。その二人の偉大なるブルースメンのコンサートに対する取り組み姿勢の違いを見せつけられた。当時はガキだったので、そこまで何がどうと分からなかったが、印象的なのはB.B.Kingのゴージャスさ、白熱のプレイとパフォーマンス力の高さだった。一方のAlbert Kingのワンマンショウ、俺についてこい的なギタリストプレイもカッコ良いと思ったが面白味に欠けるライブではあった。ただ、皆が皆それぞれのギタープレイを目の前でじっくりと見たくて、あの音を生で聴きたくてコンサート会場に足を運んでいたから、ライブの出来映え云々は後回し。B.B.Kingのパフォーマンスはいつも通りに素晴らしかった。Albert Kingのヌルヌルギタープレイも目の前で見れたので随分と満足した。それも随分昔の話になってしまったが、今でも鮮明に目に焼き付いていて記憶が蘇るから面白い。

 アルバート・キングは1954年にシングルをパロットレーベルなる所からリリースしており、これがデビュー盤となったがそれ以降は1959年のボビンレーベル時代までリリースが見当たらないので、その世界にいたものの売れる売れない論でなかなかいろいろとそれはそれで稼ぐには厳しい時代だったのだろう。この人はドラムも叩いていたくらいなので、そういう武者修行時代だったのかもしれないが、1959年の再デビュー時から1963年頃まではひたすらシングルリリースばかりで10枚以上はリリースしていた。そのシングルリリースの枚数が重なった事からアルバムに纏めておきましょう、との意だったかどうかは分からないが、今となってはこれこそがアルバート・キングのファーストアルバムとして知られている有名なアルバムジャケットの「The Big Blues」が1963年にリリースされた。それでもレコードの収録時間サイズなので、12曲しか収められておらず、この時代までの音源全ての収録にはなっていないのはやむを得ないか。2004年に別の編集盤「The Complete King & Bobbin Recordings」でタイトル通りながらあと一歩のほぼこの時代の音源完全収録盤がリリースされているので、こちらの方が纏めて一気に聴けるのは便利だが、当然1963年にリリースされたファーストアルバムの方が知名度に分がある。このファーストアルバムも2016年に再発された際には「The Big Blues +8」としてプラス8曲がボーナス・トラックとして追加されたので、かなり完全盤に近づけられているが、それでもまだ未収録曲が残っているのは勿体無い。

 さらりと書いているが、まさか自分でもアルバート・キングの最初期のシングル曲やその別テイクやバージョン違いなどを探求する日が来るとは思っていなかった。何の気なしにアルバート・キングの初期でも聴いてブルース気分にどっぷりと浸かろうとしただけだったが、「The Big Blues」を聴きながら、このアルバムはいつのシングル曲を纏めててるのだろうか、と気になったので聴きながら検索していた。するとアルバムは年代順にシングルが収録されているワケでなく、それなりにチョイスされた楽曲ばかりが収録されていた事が判明、それでも基準はよく分からないので時代順に並べ直して整理してみると結構な曲が抜け落ちていて、この辺は自分のコレクションに無いのかあるのか、と調べ直してみれば「The Complete King & Bobbin Recordings」が一番楽曲が揃っているように見えたので、再度整理し直して聴いてた次第。面白い事にシングル曲のいくつかでは同じ曲がテイク違いバージョン違いで別のシングルのB面に収録されていたりするので、1960年前後の音源からそういうテイク違いバージョン違いを漁らないといけない話になってしまって随分とアレコレ聴きながら楽しんでいた。

 話を「The Big Blues」のオリジナルアルバムに戻すと、一番古いシングルは「Ooh-Ee Baby」で1959年リリースのA面が「Why Are You So Mean To Me?」のB面収録曲で、A面曲はこのアルバムには入っていない。また、アルバム発表年となった1963年のシングル「This Funny Feeling / Had You Told It Like It Was (It Wouldn't Be Like It Is) 」は唯一のキングレコード名義の発表でこの2曲のみ。残りが1960〜62年のシングルだが無茶苦茶カッコ良いギタープレイの聴ける「Got To Be Some Changes Made」が抜けているのは残念。それを言い始めるとキリがなくなるが、当然ながらの「I Get Evil 」や「Don't Throw Your Love On Me So Strong」「I've Made Nights By Myself」あたりがしっかり収録されているので、あのギターが存分に味わえるのが嬉しい。そもそも自分的にはアルバート・キングの初期作品を曲として聴く事もなく、どうしてもギタープレイのアグレッシブさやフレージングやどれだけギターが弾かれているかで好きな曲が決まってくるので、ギターが炸裂してくれればもうそれだけで最高。そういう聴き方をしていると、初期作品は随分といろいろなフレーズを模索して使い分けしながらプレイしているのも分かる。後年は手癖だけでアルバート・キングらしさが通じるくらいに確立してしまった面もあったが、初期はそこまで個性が滲み出ていないながら、聞き覚えのあるフレーズがビシバシと出てくるので面白い。これぞブルースと言わんばかりのスタンダードプレイでもあるし、アルバート・キングらしいとも言えるし、後年では使わなくなってきたようなフレーズも普通に出てくる。

 アルバムジャケットだけがひたすら有名で、入っている楽曲があまりにも古くてそこまで聴き込んでいなかったタイトルだったが、今回じっくりと真正面から各種バージョンまで聴いていてどっぷりとこの深さ面白さ、アルバート・キングの個性にハマってしまったのは楽しかった。また普通に聴いていても心地良いのでやはり良く出来ている曲ばかりなのだろう。シングル集ならではの同じようなサウンドが数多く聴かれるがピアノやホーンとの絡みが多く、この後のスタックス時代への前触れとしては十二分に素晴らしい楽曲集、いやギタープレイ集。

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好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪