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King Crimson #3: Solo works & U.K. Bruford, Wetton, Fripp, Giles, Tippet

Giles, Giles and Fripp - The Brondesbury Tapes (1968)

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 Judy Dybleの名を有名にしているのはKing Crimsonの「風に語りて」のオリジナルボーカリストという称号だが、そもそもGiles, Giles and Frippがクリムゾンの母体となったグループである事も知られている。バンド名には出てこないが、イアン・マクドナルドと良い仲だったこの頃では元Fairport Conventionの肩書の方が大きかったであろうジュディ・ダイブルが彼氏のバンドに参加して歌った曲のひとつでしかなかった。その頃に幾つもの曲に参加して歌っており、結果的に音楽性が合わないからもあっただろうし、破局したからそのまま離脱したようで、残された音源はオフィシャルリリースされなかったが、21世紀になり様々な音源が発掘されてくると本ソースも目を付けられたようで、遂に陽の目を浴びてくれた。

 「The Brondesbury Tapes」や「Metaphormosis」のタイトルでリリースされているのでハーフオフィシャルらしき怪し気な面もあるが、それはともかくとしてGiles, Giles and Frippで残されていた1968年のレコーディングやデモソースをまるっと収録してくれた有り難い作品。正にKing Crimson前夜の姿が描かれており、後のクリムゾンで登場する楽曲も幾つか収録されているし、待望のジュディ・ダイブルボーカル曲もテープの半数近くを占めているのだから手を付けない理由はない。冒頭からGiles, Giles and Frippの名が相応しい楽曲ばかりが続き、驚異的なギタープレイがこの頃から聴かれるフリップ調は当然ながら、ジャイルズ兄弟のプレイも牧歌的でジャジー、ソフトなスタイルが上手く機能している。そこにジュディ・ダイブルのボーカルが入る楽曲郡は美しき個性となり、ひとつの新たな局面を迎えているのでこのまま破局せずに続いていたらどうなっていただろうか。クリムゾンは無かったかもしれないし、新たな英国ジャズフォークバンドとして君臨したかもしれないと考えると運命だとしか思えない。

 Giles, Giles and Frippの連中だけのソースはクリムゾン前夜そのまま、あのプログレッシブで白熱のクリムゾンではなく、牧歌的な側面のクリムゾンが出来上がっているとも思えるが、ジュディ・ダイブルが歌う曲はどこかハッとする新しさを感じられ、その究極が「風に語りて」になるだろう。本作にはジュディ・ダイブルではなくイアン・マクドナルドによる「風に語りて」も収録されているので聴き比べると面白いし飽きないし、この手の歴史を漁るような作品は資料的価値も高いからじっくり聴いてしまうしどっぷりと堪能できた貴重な録音素材。

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