月曜日の嘉陽田さん 第二話 高校1年1月 その2
「おー痴漢娘の朝子さん、おはよう」
「うるさいな、あれから毎日何度も何度も。とっさのことだったんだよ!バナナちゃんも分かるだろよ、あのカッコ良さ見たら」
私のダチのバナナちゃんと、1週間連続でこのやりとり。馬場菜々子だからバナナちゃん。
「まあまあ、囲司くんは確かにイケメンだよ。つーかさ、私も実は狙ってる。恋仇だ朝子とは」
「なんだとぉ?私の囲サマを奪うな!」
女の争いに、先週は途中まで休んでいた水野流行が割って入る。
「あのなお前ら、さっさと諦めろ。アレはお前らの手に届かない存在だ」
「なんでだよ?」
私の質問にナガレは即答した。
「奴はマジメ一辺倒だからだ」
「……う、うるさいっ!」
「お、ピッタリ息が合ったね朝子。イェーイ!」
「イェーイ!」
バナナちゃんとステレオで叫んでハイタッチしたものの、確かに今の私じゃ振り向いてもらえないことは間違いなしだ。
囲サマはヤンキーとは無縁な優等生。
黒髪だし、服装もチャラチャラしてないし、前の学校でも成績良かったみたいだし。
「バナナちゃん、恋愛の攻略本探しに、本屋行くか?」
「あ、ソレいいね朝子。やろうやろう!」
ナガレの奴はここで話の腰を折る。
「お前らなあ。モテる方法が書いてある本の作者はだいたいモテてないぞ。それに女性向けの話だったら、お前ら向けのファッション雑誌の方がよっぽど詳しいんじゃね?」
「テメーは男のクセに、何が分かんだよ!」
コレもバナナちゃんとステレオになった。
「お、また二人で息合ったね朝子。イェーイ!」
「イェーイ!」
こんな時は二人でハイタッチが相場。楽しい。なんなら囲サマとバナナちゃんと3人で暮らしたい。
「俺、囲の奴と何度か話できたんだけどさ」
「なにぃ!?私がまだあいさつもできない囲サマと会話だとぉ!」
「ま、待て待て朝子、暴力反対」
胸ぐらを掴まれたナガレが諭すように語り始める。
「将を射んと欲すればまず馬を射よ、って言うだろ?」
「何ソレ初めて聞いた。お前マジメか!」
「一応俺は勉強もすんの!でさ、アイツ外資系企業目指してるらしくて、英語とかめっちゃデキる」
「ワァオ!ヒーイズイングリッシュ?」
「その英語いろいろ間違ってるから。ダイレクトに好みの女について聞いたら…」
「教えなさい」
私に続いてバナナちゃんもナガレの胸ぐらを掴んだ。ナガレの制服が破れそうだ。
「ホントお前らの性欲には恐れ入るよ……まあ聞け。て言うか、ソレが人にモノを聞く態度か?」
「…はい、分かりました」
私とバナナちゃんとでナガレに一礼して気をつけした。
「スラリとした、スタイルがいい金髪と結婚できたらいいな、って」
「よっしゃあああああ!!」
私は大声でガッツポーズした!
「えっ、ちょっと朝子……」
「まんま私だ!スラリとしたスタイルがいい金髪だ!」
「お前のは黄色に近い薄茶色だ!」
「あんたは別にスタイル良くない!」
「よっしゃあああああ!!」
「ダメだ、聞こえていない……」
第三話に続く
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