六畳十益(ろくじょう とます)

内から湧き上がる感情を言葉にしてゆきたいと思っています。ペンネームの意味は「六畳間から++(増えてゆく)」でっす。主にファンタジーに近い現代劇を書いてゆくつもりでっす。

六畳十益(ろくじょう とます)

内から湧き上がる感情を言葉にしてゆきたいと思っています。ペンネームの意味は「六畳間から++(増えてゆく)」でっす。主にファンタジーに近い現代劇を書いてゆくつもりでっす。

最近の記事

月曜日の嘉陽田さん 第三話 高校1年2月

嘉陽田朝子は転校生の囲くんに一目惚れ(第一話)。友人の馬場菜々子や水野流行とやり取りしても、自分に都合のいい解釈のもと想いが膨らむのだった(第二話)。 「バナナちゃん。やっぱ私とあの人、住む世界が違うわ」 「朝子......なんで2ヶ月もわからなかったの?」 「うん、先月もナガレの奴に『奴はマジメ一辺倒』って言われたけどさ、普通あんな簡単に学年1位取らないだろ」 そこへナガレが割り込んだ。 「囲ってさ、マジで紳士だよな。俺たちにも丁寧語で接するし、イケボだし仕草もカ

    • 私とダイソン扇風機の付き合い

      #買ってよかったもの 私とダイソンのテーブルファンが出会って、もう10年になる。定期的に輪っか状の整流板部分を外して内部を掃除しているおかげで、10年経った今でも元気に動いてくれる。 「羽根がない扇風機」というキャッチコピーだけど、実際には整流板を外すと、本体内部に羽根がついている。上手く設計された整流板から出た空気の流れが周囲の空気を巻き込むことで、羽根の大きさ以上の実力を発揮するのだ。 沖縄在住で極端な暑がりの私にとって、涼をとる手段はエアコン一択だ。ダイソンの扇風

      • 月曜日の嘉陽田さん 第二話 高校1年1月 その2

        「おー痴漢娘の朝子さん、おはよう」 「うるさいな、あれから毎日何度も何度も。とっさのことだったんだよ!バナナちゃんも分かるだろよ、あのカッコ良さ見たら」 私のダチのバナナちゃんと、1週間連続でこのやりとり。馬場菜々子だからバナナちゃん。 「まあまあ、囲司くんは確かにイケメンだよ。つーかさ、私も実は狙ってる。恋仇だ朝子とは」 「なんだとぉ?私の囲サマを奪うな!」 女の争いに、先週は途中まで休んでいた水野流行が割って入る。 「あのなお前ら、さっさと諦めろ。アレはお前ら

        • 木にぶら下がり夢を見る 第一話

          第一話「そんなこと最初から分かってる」 ぼく、なんで働けないんだろう。部屋から出られないんだろう。 今日も下で両親が激しく口喧嘩してる。きっとぼくのせいだ。 ぼくは今日も日がな一日天井を眺めてる。積読してしまった本に囲まれながら。 この部屋に隕石でも落ちて来ないかな。ぼくに当たって殺してくれないかな。そしたら世間は、ぼくがここにいたことを知ってくれる。 ああ、まためまいがする。少し考えたら、すぐにこうなる。読書したいのにこれだから、いつまでも読めないや。 クラスメイトだ

          六畳十益流・ポジティブシンキング

          皆さまいかがお過ごしでしょうか。六畳十益です。 まだ耳慣れない名前でしょうから、しばらくは私のペンネームに毎回ふりがなを添えます。 今回は「私の気持ちの切り替え方」について書きます。 誰にでも「今日は動きたくない……」という日があると思います。 私ももちろんそうで、丸一日ほぼ横になって過ごす時もあります。 40歳手前になってからは、そんな動けなかった1日に対して 「今日は休息ができたんだ。だから、これでいい」 と思えるようになりました。この気持ちの切り替え方を覚えてから、

          六畳十益流・ポジティブシンキング

          月曜日の嘉陽田さん 第一話 高校1年1月 その1

          「朝子!早く起きなさい!」 「んー、あと5分…」 「それ何回目だと思ってるの?もう起きないと遅刻するわよ!」 「ん、お母さん今何時…?」 「もう7時40分よ!早く起きてご飯食べなさい!」 「んー、こっちにご飯持ってきて…」 「布団が汚れるでしょ、そんなことしたら!」 「私は超人。布団を汚さないで寝たままご飯を食べられ…」 「なにバカなこと言ってるの!いい加減にしなさい」 お母さんはそう言うと、私の布団をひっぺがした。寒いもう起きなきゃ。 私の名前は嘉陽田 

          月曜日の嘉陽田さん 第一話 高校1年1月 その1

          すべての過去を売った青年 後編

          棚からぼたもち 努も光もうろたえた。夢を叶えたければ、光の人生のほぼすべてを捧げろということだ。 「光さん、絶対にダメだ!二人の夢を叶えると言ったって、叶う前に光さんが死んでしまう。僕の記憶が戻っても、コレは受け入れられないよ」 「わたしが、犠牲になって、努の夢が叶うなら…」 「嫌だ!店員さん、僕の人生も売ります。二人分売れば、負担を減らせますよね?」 リサイクルショップの店員は、相変わらず澄ました顔で答える。 「かしこまりました。それでは査定いたします」 記憶

          すべての過去を売った青年 後編

          六畳十益の自己紹介ページ

          はじめまして。六畳十益(ろくじょう とます)と申します。 沖縄県の出身です。暑いのは苦手です。 まず、私のペンネームの由来から書きます。 13世紀のスコットランドにいた、 「アースルドゥーンのトマス(またはトマス・ザ・ライマー)」 という人物がいたそうです。彼は詩人であり、予言者・魔法使いでした。半ば伝説の人らしいです。 ペンネームを決めるにあたり、憧れの存在「トマス」は絶対に入れようと思いました。 そして、私の居室の広さは六畳(洋間ですけど)でした。 『方丈記』を記した

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          すべての過去を売った青年 中編

          記憶喪失  光は不思議だった。毎年この日、この時間には家にいるはずの努がいない。連絡くらいよこしても良さそうなものだが、それも無い。今年の司法試験予備試験は合格だったのかな?そうだとしたら、何かお祝いの品でも買いに行ったかもしれない。期待と不安が半々になりながら光が夕食の用意をしていると、玄関のチャイムが鳴った。  扉を開けると、努と一緒に警察官が立っていた。光よりも早く、警察官が口を開いた。 「河合 光さんですか?あなたのパートナーの成宮 努さんをお連れしました。努さ

          すべての過去を売った青年 中編

          すべての過去を売った青年 前編

          司法試験とリサイクルショップ 「……また不合格か」  努は人生で8度目の、司法試験予備試験の結果発表のWebページを眺めてため息をついた。 「…光にまた謝らなきゃ、だな。ああ、いつまでアイツ待たせんだよ!」  とぼとぼした足取りで、努はアルバイト先に向かう準備を始めた。パートナーの光は正社員なので、既に朝の支度を終えて出勤した。努は週4で6時間勤務である。自分の夢と無関係なバイトだが、たまたま飛び込んでみたら続けられたから、書籍代と生活費捻出のために5年半もそこで働い

          すべての過去を売った青年 前編