私に生まれた男。

突然ですが。

私は幼稚園の頃から可愛いもの、女の子らしいものが大好きでした。

例えばリカちゃん人形だったり、着せ替えシールだったり…
そうですね…セーラームーンなんかも本当に大好きでした。

「月に代わってお仕置きよ!!」

なんてね。(笑)

髪も伸ばしていて、最高で腰くらいまであったと思います。幼稚園の年中のときの担任に憧れて、パーマをかけたこともあります。

あとは、スカートやワンピースにドレス。ふわふわしてふりふりしてて、自分がお姫様になったみたいで。なんでもないような日でもドレスを着て楽しんでいました(笑)

幼いながらに

「私は可愛らしいものが好きなまま、女の子らしく生きていくんだろうなぁ」

そう思ってました。

しかし、小学2年生の夏休み明け。
事件は起こりました。

(ちょっと大袈裟かもしれませんが、私にとっては結構大きな出来事でした)


いつも通り授業を終え、下駄箱で靴を履き替えようとしたとき、
『K』が同じタイミングで下駄箱にやって来た。

『K』は私が2年生になってからできた他のクラスの友人(?)の女の子で、スケートがうまかったことをよく覚えている。
しかし、後から知ったが、他クラスでいじめなどを行っており、嫌われていたらしい。

Kとは家の方向は違うものの、よく一緒に帰っていたし、その日もいつもの様に一緒に帰るのかな、なんて思いつつ靴を履き替えていた。

ふと。Kが私に対して口を開いた。

『ねぇ、あなたさ、そうやって髪伸ばしたり、可愛い服着たり、ピンク色とか似合わないよ。それに、自分のこと私とか自分の名前呼んだりするの似合わないし、気持ち悪いよ。てか女の子らしくするの気持ち悪い。』

…え。

驚いた。
自分がそんなふうに思われているだなんて思いもしなかった。

ショックだった。
何より自分を否定されたような気分だった。

普通に考えたらKの個人的な意見だったんだろうが、私にはそのKの言葉が私以外の他の人達の総意なのではないだろうか、と感じられた。

みんなが私のことそう思っているならどうしたらいいのか、どうしたら気持ち悪い私の存在を認めてもらえるのだろうか。

私はKの言った言葉を思い出した。

長い髪の毛。
可愛い服。
可愛い色。
私。
自分の名前。
女の子らしい。

これがキーワードなのだろうと思った。
ならばこれを逆転させれば。
私はみんなに気持ち悪いなんて思われず、
愛されるのだろうか。

短い髪の毛。
カッコいい服。
カッコいい色。
僕。
俺。
男らしい。

これの通りにすればいい。
簡単なことじゃないか。

『男になればみんなに愛してもらえる』

歪んだ考えだと思うし、Kに直接的に男になれだなんて言われてない、みんなから愛される必要性だってない。

それでもそのときはそうするしか無いと思った。

『男にならなければならない』

この時作り出した歪んだ間違った『目標』は今も私の足枷として存在している。

自分で創り出した足枷は、
今もまだ外しきれてはいない。

私はダッシュで家に帰り、
鋏を持って鏡の前に立った。
開いた鋏を自分の髪の毛に近づけ、
手に、力を込めた。

耳の横でジャキン、と音がしてかなりの量の髪の毛が洗面台に落ちた。

自分らしさ、を髪とともに切り捨てた。

次の日から私はあんなに大好きだったスカートを着なくなった。
服の色は黒か青。一人称は『俺』。
髪も短く切り揃えられた。
長くやっていた着せ替えゲームを辞めたときは流石に悲しかった。

できるだけ男らしく、男子の口調で、女っぽくなっちゃいけない。

そうやって『演技』した。

その瞬間に、私の中に『俺』が生まれた。

私の女の子らしさを全て否定する男の感情。
私に生まれた男。

これが私を変えた事件です。

これに関して掘り下げて話していくつもりはありません。

ですが。
こうしてなんの気無しに放った言葉が、鋭利なナイフとなり何十年、下手をすれば一生治らないような傷をつけていくことだってあります。

私もこうして性別という一生付き合っていくものに傷をつけられて、現在も苦しんでいます。

言葉の強さを知って。
簡単な気持ちで言葉を発さないで。
子供の言葉だからって舐めないで。

人の人生まで歪めてしまわないで。

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