ネームバリュー・サーバー

「魔法みたいな水だね」
「いいえ。名前の力よ」
 オレンジ、パイナップル、アップル、ストロベリー。
 欲しいものの名前を書いてからスイッチを入れるだけ。
 あとはサーバーの中の水がシェイクされて、数秒後にはその名の通りのジュースが完成する。この世に存在するものの名ならば、できないものはない。夢のような製品と言えた。

「あんず」
「何それ?」
 飲めばわかる。(書けばわかる)
 できあがったあんずジュースは、口当たりもよく美味しかった。
「お酒にしても美味しいのよ」
「次は何にしようかな」
 希望は尽きることがなかった。

「これが最後のリクエストね」
 夢は自然に遮られた。
 名前にはまだ水の問題が追いついていなかったのだ。
(もう5年もまともに降っていない)

「さあ、行きましょう」
 僕たちは寒空の下の広場に飛び出した。
 雨乞いのダンスに参加するのだ!



#雨 #小説 #サイエンス


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