カチッ カチッ
カチッ カチッ
爪を切る音が
張りつめた空気を伝わって届く
こんな夜更けに誰が……
カチッ カチッ
カチッ カチッ
カチッ カチッ
切り止まぬ爪
それは繊細なタッチで
整えられる高尚な爪
あるいは無数の指の持ち手
「王手!」
「ふぁー角か。王手!」
「けぇー桂馬。またまた逆王手……」
「まいったか!」
「あっ、負けました」
爪音に人の声が交じり出した
「あー、なるほど」
「千日手の順がありましたか……」
「こちらとしては避けようがないので」
「流石、名人」
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