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早慶への合格数/進学者数についての分析

高校の進学実績を比較する際に、まず一番注目される指標は東京大学への合格人数でしょう。しかし、これは一学年の人数を考慮していない上、東大合格人数には年によって変動があり、単年度の実績で評価しにくいという問題があります。さらに、東大の合格人数が安定している学校は多くないため、この指標だけでは限られた範囲しか評価できません。

そもそも、多くの親御さんが子供に「是が非でも東大に入って欲しい」と考えているのでしょうか。難関大学という点で、東京大学に限定する必要はあまりないでしょう。ここで、東京都教育委員会が定義する難関大学を見てみましょう。

東京都教育委員会のホームページでは、進学指導重点校としてふさわしい高校について、難関国立大学(東京大学、一橋大学、東京工業大学、京都大学、国公立大学医学部医学科)に現役で15人合格するという基準を設けています。東京一工+国医というわけですが、これらの大学は合格者数が進学者数にほぼ等しい(重複合格がない)ため、進学率を計算しやすいという利点があります。

最初に考えられる指標として、学校別の「東京一工医合格者数/卒業生」を計算して比較するのが妥当でしょう。

しかし、この指標でも世間一般のイメージに即しているとは言い難いです。JTCで働き、3人の子を持つ筆者の感覚では、「子供にはできれば早慶(以上)に入って欲しい」と考えるのが普通ではないでしょうか。就職活動において“学歴フィルター”を突破するためには、旧帝大または早慶以上の学校を出ていればほぼ間違いなくパスできる(不利にならない)と考えられるからです。

つまり、学校比較や学校選びの際にも、一握りの上位層だけが到達できる東大や“東京一工医”への合格人数よりも、早慶以上にどれだけ進学したかの進学率が実際には関心事になると思われます。

ところが、一般的な合格実績では延べ合格者数しか分からず、進学者実数は分からないことがネックとなります。東京一工医は合格者数が進学者数に近いと考えられますが、早慶は併願により複数合格し、多くが辞退されていると考えられるからです。

このnoteでは、各学校の公表する合格実績(合格者数)から早慶への進学者数を推定する式を求めることを目的とします。


進学実績の推定方法について

高校によっては合格者実績だけでなく進学者実績を公表している学校があります。そのような学校の進学実績を見てみましょう。

筆者が知ることが出来た進学実績は筑駒・開成・都立新宿高校(現役生)・都立三田高校(現役生)の4つでした。

まずは筑駒の2024年合格者数・進学者数(国立大)です。
東大には90人合格し、90人全員が進学したようです。
京大についても4人中4人、一橋は3人中3人、東工大も1人がそのまま進学しました。

続いて筑駒の私立大進学実績です。
国立大とは一転して、慶應が70人合格のうちわずか9人が進学、早稲田大も114人中16人が進学となっています。
早慶合計で延べ184人が合格し、うち25人が実際に進学した実績となりました。単純計算では進学した1人につき平均7回以上合格している(!?)ことになりますが、そんなわけはなく、東京一工の合格者が滑り止めで早慶にも合格し、そのまま辞退していると考える方が自然でしょう。

続いて開成高校の2024年の合格/進学実績を見てみましょう。

国立大について、東大は149人中149人が進学。京大19人中19人が進学。一橋は9人中7人が進学。東工大は10人中10人が進学しました。
一方で早慶については慶應が193人中34人進学、早稲田が245人中52人進学と、こちらもかなり低い割合になりました。

ところで東京一工以外の国立大学合格者(特に旧帝大)は早慶に合格し、辞退しているのでしょうか?
一般に東京一工以外からの併願での早慶合格者はかなり少ない(早慶合格は難しい)ようです。以下の動画などを参照してください。
筆者の周辺でも東大(理系)の友人は早慶理工に合格し辞退していますが、阪大(理系)の友人は早慶理工には両方落ちて阪大に合格しています。

以下の分析では、
・東京一工合格者は早慶に合格している(辞退している)
・国医、旧帝合格者、およびその他の国立大合格者は早慶に合格しない(試験の方向性がかなり違うのでW合格は難しい)
という前提を置きたいと思います。

ここまでは東大合格者が極めて多い2校を見てみましたが、次は早慶進学者が多い都立高校を見てみましょう。

新宿高校の現役生についての合格数/進学者数です。
東京一工の合格者は全部で11人、11人全員が進学しました。
早慶については延べ106人が合格し、50人が進学しました。
これを見ると分かるように、
・早慶進学者については平均的に複数回早慶に合格している
と考えるのが自然なようです。

最後に都立三田高校の2024年現役進学実績を見てみましょう。
東京一工の現役合格者は0人でした。
一方で慶應は延べ15人合格10人進学、早稲田は延べ53人合格24人進学となりました。
東京一工の合格者0で早慶68人合格し34人が進学ということで、単純に言えば早慶進学者1人につき平均で約2回合格する、ということが分かりました。

では、
・東京一工進学者は平均n回早慶に合格し、辞退する
・早慶進学者は平均m回早慶に合格し、進学する
・その他(東京一工および早慶以外)への進学者は早慶には合格しない

としたときに、nとmはどの程度の数字になるのでしょうか?

サンプルが少なくざっくりとした分析になりますが、
n=1.40
m=1.84
程度と言えるようです。

つまり、早慶への進学者実数を知りたい場合には、
([早慶]合格者数 - [東京一工]合格者数*1.40)/1.84
を行うことでそれを推定(逆算)することができます。
(*関東の学校しか分析していないことに注意)


ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回以降では、ここで得られた計算式を用いて、
東京一工+国医旧帝+早慶にどの程度の卒業生が実際に進学しているのか、という分析を関東の学校についてしたいと思います。

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