ログ その1

よく聞く話として、"やりたいこと" と "やれること" があったとして、多くの場合、本当は"やりたいこと" に時間を費やしたいんだけど "やれること" に直向きになることで、社会の一員としての路を見出すのがいいよ、っていうあれね。
僕もその話に従う決意をしてさ、社会に一歩踏み出してみたんだよ。
世は就職氷河期。
今になって当時を思い返して、「失われた10年」とか、すっごくセンスのないラベルを付けられてる時代ね。
手紙を書いて、先方を尋ねて、話をして、それで断られて・・・。という日々を何十回も繰り返して、そのたびに自分が身に着けた、自分なりの自分っていうの? 自分を自分たらしめていた何かっていうの? それを削り落とされていくわけ。
気が付いたら、つるつるでへとへとになった人間となって、虚ろな目で会社に入れてもらうんだよ。
もちろん、いわゆる優秀な方々は、その方々の在り様のまま、羽ばたいていくんだけどね、僕は違っていた。素っ裸で、毛を剃り上げられて、海水のカプセルで数時間閉じ込められて、もはや自分はもう、海水そのものなんじゃないかっていう状態になっちゃうんだよね。
そうやって、"やれること"を決めていったんだよね。
不当な取り締まりを受けているうちに、やってもいないことを「やりました」って自白してしまうこと、そういう状況に陥ってしまうことが問題になっているけど、そんな感じで、いやいや、深刻度は全然違うけど、そんな感じで僕は"社会人"としてのお墨付きを得たんだ。

それから20年以上たった今ですが・・・。
僕が"やれること"と思っていたことね、あれ、どうやら社会っていうか会社にとっては、あんまり有用なものではなかったらしい。
なんかね、あんまり喜ばれていないようなね、そんな気がするんですよ。

それで、ふっと後ろを振り返ってみると、すぐそこに、あの日削り取られたかつての自分が落ちてるわけ。

ああ、全然前に進んでいない、って思い知るんだよ。
それが今ね。

どうしようかね。

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