見出し画像

有機物と無機物 インフラ点検の「ツボ」について


着工から2年足らずという、驚くべきスピード感で350kmの区間を開通させた日本の大動脈・東名高速道路は半世紀を超え、随所に脆さを抱えています。
名神高速や東海道新幹線も大体が同期であり、まるで団塊世代が退職年齢に差しかかるように、高度経済成長期にドカッと建てられた老朽化の問題が叫ばれて久しいわけですが、 無機物であるインフラは部分的にしろ全体的にしろ、完全に交換されなければならない宿命をもっています。
しかし、ただ交換するだけでは、団塊ジュニアの大量引退を引き起こすにすぎず、結局は周期的に莫大なコストがかかるだけです。 いくら科学技術やAIが発達したところで、最終的にはどこかの工程段階で人間による作業にバトンを渡さざるを得ないインフラの保全。 ますます人口が減る日本で周期的にこんな波が来てしまっては、 あまりに負担が大きすぎます。
では、インフラ点検に対してどのような考えを持つべきでしょうか。
インフラは無機物であるため、私たち生物のような有機物とは「脆弱さ」に対する備えの有効な手立てが根本的に異なります。
私たちは失敗に対し、それが本当の意味で致命的でない限り、再発防止策を得ることができます。 大きすぎない失敗によってそこから得ることのできる、いやそこからしか得ることのできない対策こそが脆弱さに対する最善の策であるわけです。 ワクチンやレジスタンストレーニングの有効性は、私たちが有機物であるからこそ発揮をするわけです。
一方で、大型地震に備えるべくワクチンの考え方を転用して、小さな地震を仕掛けたところで家が強くなることはありません。
ここに、有機物と無機物の違いがあります。 つまり、有機物にはフィードバック機構があり、無機物にはないということです。 この棲み分けが正しくできなかったことが、リーマンショックや福島第一原発事故のような惨事を生み出したわけであり、 無機物に対するアプローチを有機物である人間個人、社会集団に当てはめてしまうと"ブラックスワン"が起こった際に、計り知れない損失が生まれてしまうわけです。
一度たりとも崩壊が起こってはならず、フィードバックによる強化もされないインフラを相手にするからには、極めて用心深い点検が必要です。
この念入りな点検を、いわゆる人工(にんく)の限界を超えた規模で行うために、ドローンの導入は有効になってくるわけです。現に、あらゆる予測によってドローンの市場は今後、点検分野で飛躍的に伸びていくという見通しが立っています。
ドローンで効率よく大掴みの目星を付け、疑わしい箇所のみを人間が点検する。こうしたタッグがどれだけ生まれるかがかぎを握るため、この分野のドローン技術に追従できるよう日々勉強していこうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?