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得点力増に必要な3つのポイント〜2020年の野手陣を考える
*2020/2/1 中日新聞プラスへの投稿分を転載
皆さん、こんにちは。今回は
「2020年 野手陣展望」
をテーマに考えたいと思います。
前回の記事では、投手陣の今季展望について考えました。
今回は野手陣について、改めて現在の戦力を確認することで、今季の展望を占っていきたいと思います。
1. 2019年 野手成績
はじめに野手の昨季打撃成績と守備成績について簡単に振り返ります。左は主要な打撃成績の月別推移、右はポジション別の守備指標 (UZR)です。
詳しくは、運用面も含めて詳細にまとめている以下の記事をご覧ください。
【打撃】
打撃成績について見ていくと、「得点数リーグ5位」が示している通り、出塁率と長打率においていずれもリーグ平均を上回ったのは8月のみという結果が出ています。
8月はアルモンテ、福田、ビシエドと中軸打者が好成績を残しており、今季唯一チームの月間得点が100を超えた月でした。ナゴヤドームでもその長打力を発揮できる選手たちの活躍なしでは、やはり得点力アップを語ることは難しいように思います。
【守備】
一方で守備成績について目を向けると、多くのポジションでリーグ屈指の数値を叩き出していることが分かります。
守備指標UZR (*Ultimate Zone Rating、守備の正確さだけでなく守備範囲の広さも含めどれだけ多くのアウトを稼いだかを基準に守備力を評価する指標)においてセカンド、サード、ショートとライトでリーグ1位を獲得。キャッチャーとセンターはリーグ5位と奮いませんでしたが、チーム全体で見るとリーグ屈指の成績を残しており、守備においてはチームの強みであると言っていいかと思います。
以上から昨季の中日ドラゴンズの野手陣は、
「慢性的な長打力不足が原因で得点力は低調だったものの、リーグ屈指の守備陣で失点を最小限に抑えた」
と言えるかと思います。
今季は最大の武器である「守備力」を維持しながらも、如何にチーム全体で長打力アップに取り組み長年の課題である「得点力不足」を解消できるかが、8年ぶりのAクラスに向けたカギになるでしょう。
2.野手陣陣容: 打席数とOPSでマッピング
続いて野手陣の昨季打撃成績から、横軸は打席数、縦軸はOPS* (出塁率+長打率)でマッピングすることでそれぞれの「現在の立ち位置」について見ていきます。
「現在の立ち位置」を把握することは、それぞれの選手にどの程度の出場機会・打撃成績を期待するかを考える際に有効です。
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■レギュラー: 規定打席以上 & OPS.700以上
■準レギュラー: 200打席以上、規定打席未満 & OPS.700以上
■控え野手: 100打席以上、200打席未満 & OPS.600以上
■育成、他: 100打席未満
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今回はこちらのマッピングと上記基準をベースに、以下の「今季注目すべき3つのポイント」について掘り下げていきたいと思います。
①レギュラー陣の打撃力アップが得点力向上の最大の近道
②正捕手争いを制するのは誰だ
③若手野手の台頭はあるか
①レギュラー陣の打撃力アップが得点力向上の最大の近道
得点力アップを達成するにあたって、まず重要だと思うのはレギュラー陣の打力向上です。
ご存知の通り現在のドラゴンズはレギュラー陣がほぼ固定で、かつ内野手を中心に守備力も抜群に高いことから、怪我さえなければ固定して起用されることが多いです。現時点で純粋なレギュラー争いが発生しているのは後述するキャッチャーくらいで、残りのポジションは昨季終盤の布陣がベースになるでしょう。
よって現在のレギュラー陣が昨季以上の成績を残すことこそが、得点力アップの最大の近道と言えます。
■平田良介、福田永将
その中で今季の活躍を期待したいのは、昨季怪我で打席数を増やせなかった平田良介と福田永将の二人です。
平田は一番打者として好成績を残し、かつライト守備では球界屈指の成績を残しましたが、二度の離脱で規定打席到達はなりませんでした。また福田も昨季後半戦は圧倒的な成績を残し打線の中軸として機能しましたが、前半戦は不振と怪我で思うような成績を残すことができませんでした。
彼らが一年を通して安定した成績を残せれば、それだけで得点力がグッと増すのは間違いありません。怪我が多い平田の場合は春季キャンプでの調整はもちろんですが、「適切な代走・守備固めの起用」による平田のコンディション維持のための起用も考慮すべきでしょう。
昨季はビシエドに対して積極的な代走・守備固め起用を行ったお陰か、彼に自身初となる全試合出場を達成させただけに、ハッスルプレーで怪我の多い平田にも同様の起用を徹底すべきだと思います。
福田についても、古傷の右肩を考慮した起用は必要になるでしょう。アルモンテとの併用が望ましいですが、彼も怪我の影響が不透明なため、完治するまでは育成契約ではありますがシエラの台頭に期待したいところです。
■京田陽太
レギュラー陣でもう一人奮起を期待しているのは、不動のショート・京田陽太です。
京田は昨季ショート守備で12球団屈指の守備貢献を叩き出した一方で、打撃成績は打率.249、OPS.615とレギュラーとしては物足りない成績に終わってしまいました。
守備での貢献が圧倒的なため上記の打撃成績でも十分お釣りがくるほどですが、大島、ビシエドに次ぐ574打席を与えるなら更なる打撃向上を求めたいところです。
選手会長となり今年は「練習試合、オープン戦、全部出ます」と明言している京田ですが、昨季並みの打撃成績であればレギュラーとしての起用は前提としても、600打席近くを与え「固定」すべきとは思いません。
京田の打力が昨季から大きな上積みがなければ、長打力が武器である堂上直倫の出場機会を増やすなど、調子や相手投手との相性を考慮した柔軟な起用も、首脳陣は昨季以上に検討すべきだと考えます。
▼京田「絶対的遊撃手」になる!!オープン戦、練習試合フルイニング出場意欲。長男誕生も刺激
有言実行となる全試合出場を果たすためにも、京田にはこの春季キャンプから打撃面での成長を見せて欲しいと心から期待しています。
②正捕手争いを制するのは誰だ
唯一レギュラー不在と言えるポジションである、キャッチャーのレギュラー争いは昨季に引き続き今季も注目です。
昨季は「加藤バズーカ」と形容される強肩を武器に首脳陣の大抜擢に応えた加藤匠馬がチームで最も多い92試合に出場しましたが、非力な打撃やブロッキングに課題があることから、まだまだ「正捕手」と言い切るには早いと思います。
よって今年も春季キャンプから捕手陣のレギュラー争いは注目して見ていくべきだと感じていますが、個人的に注目しているのは木下拓哉と郡司裕也の二人です。
■木下拓哉
まず現時点で正捕手に最も近い存在といえば、昨季加藤に次ぐ39試合に出場した木下でしょう。
怪我の影響もあり通年での一軍帯同は叶いませんでしたが、パンチ力のある打撃に加えキャッチャー守備の総合力の高さはチームの捕手陣の中では突出しているように思います。
加藤のようにワンチャンスを活かす「持ってる感」をあまり感じないのが気がかりですが、純粋な野球選手としての能力は素晴らしいと思っています。
セリーグの場合は他球団の捕手陣がいずれも攻守に優れているため、ライバルとの差を埋めるには打力にアドバンテージがある木下の「正捕手起用」が必要不可欠だと思います。
■郡司裕也
木下に次いで「打力で他球団のライバル捕手との差を埋められる存在」を考えると、ドラ4ルーキー郡司も忘れてはいけないでしょう。
昨秋のリーグ戦では三冠王に輝くなど、その打力は大学球界でもトップクラス。またデータを打力向上に活用する向上心の高さも魅力的で、プロの水に慣れればすぐにでも適応しそうに思えるほどクレバーな選手です。
春季キャンプで伊東ヘッド、中村バッテリーコーチの指導のもと守備面での向上が見られれば、加藤vs木下の構図に割って入ることができると思います。
③若手野手の台頭はあるか
最後に、今季台頭が期待される若手野手を挙げたいと思います。
ドラ1ルーキー石川昂弥や2年目の根尾昂に注目が集まりますが、今季のブレイク候補としては石垣雅海と渡辺勝に期待しています。
■石垣雅海
昨季終盤に一軍昇格を果たしたプロ4年目の石垣には、今季は二軍を卒業し、一軍代打枠としての定着を期待しています。
その背景には当然同じサードを守るスーパールーキー石川昂弥の存在が大きいですが、石垣自身も既に二軍通算874打席を経験していることから、そろそろ一軍での出場機会を増やす時期に来ているように思います。
出場機会を増やすためにサードだけでなく、昨季は外野両翼にも挑戦するなど、強打のポリバレントプレーヤー* (複数ポジションをこなせる選手)として着実に準備は進んでいます。
秋季キャンプでの怪我の影響か春季キャンプは二軍スタートとなりましたが、万全をアピールすることで早期の一軍昇格、また実戦での猛アピールに期待したい選手です。
■渡辺勝
昨季控え外野手としての立ち位置を掴んだ遠藤一星、井領雅貴の座を脅かす存在になって欲しいのが、プロ5年目の渡辺勝です。
卓越した選球眼の持ち主で、昨季二軍では打率.317、OPS.824の好成績をマークしましたが、一軍では打率.148と壁にぶち当たり、一軍定着とはなりませんでした。今季は持ち前の一本足打法に更に磨きをかけて、通年での一軍帯同を果たして欲しいです。
3. 与田政権2年目は悲願のAクラス返り咲きが「最低条件」
以上、今季の野手展望について考えてみました。
早いもので今日から春季キャンプがスタートし、開幕まで残すところ2ヶ月弱となりました。
与田政権2年目となる今季は、悲願である8年ぶりAクラスは「最低条件」としてどうしても達成して欲しいと、心から願っています。
ライバル球団のような大規模な補強こそありませんでしたが、昨季のように現有戦力の底上げを達成できれば、上位進出も十分可能だと言えるほどチーム力は高まってきていると思います。
昨季大ブレイクした阿部寿樹や柳裕也のような新戦力の台頭が、今年も楽しみでなりません。
以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!
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