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大野、柳に続くのは誰だ?2020年の先発投手陣を考える

*2020/1/11 中日新聞プラスへの投稿分を転載

皆さん、明けましておめでとうございます。新年一発目の記事として、今回は

「2020年 先発投手陣展望」

をテーマに考えたいと思います。

2020年は、与田政権にとって2年目のシーズンになります。
昨季は2年連続の5位に終わりましたが、前年から借金を10も減らすなど、新監督の一年目としてはまずまずの成績でした。
2年目の今季はリーグ優勝を目指すのはもちろん、2012年以来8年ぶりのAクラスはどうしても達成してほしい、というのがファンの総意でしょう。

上位進出を狙うにあたり、今年は十分な戦力を備えているのか?
またドラフトで獲得したルーキーや、このオフに補強した新外国人たちはチームにどのような影響を及ぼすのか?

改めて現在の戦力を確認することで、今季の展望を占っていきたいと思います。
今回は先発投手陣にフォーカスして考えます。

1. 2019年 先発投手成績

はじめに先発投手の昨季成績を振り返ります。
こちらは2019年における、先発投手成績の月別推移です。

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詳しくは、運用面も含めて詳細にまとめている以下の記事をご覧ください。

指標によって傾向が異なりますが、8月以降は概ねリーグ平均並みもしくはそれより良い成績を残せているように見えます。

また昨季の先発投手運用について一言でまとめると、

「怪我人多発&限られた選手層の中、主力先発投手以外は投球数・登板間隔の面で最大限配慮した運用を行なっていた」

と言えます。
怪我人続出の中で、なんとか運用で凌いだ一年だったという印象です。

一方で、今季8年ぶりのAクラスを目指す上では、昨季までの現有戦力が怪我なくパフォーマンスを発揮することと、新戦力の台頭が必要不可欠です。
以下では今季の先発投手陣について、昨季の成績をベースにその陣容を予想しながら見ていきたいと思います。

2. 2019年 先発投手陣容: 投球回数とQS率でマッピング

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こちらは昨季成績における、横軸は投球回数、縦軸はQS率*で先発投手をマッピングしたものになります。
(*QS率: 6回3失点以内で抑えた登板をクオリティスタート=QSと定義し、先発登板機会に置いてどれだけQSを達成したかを表した指標。高ければ高いほど、先発投手として安定した成績を残していると言える)

それぞれがマッピングされた位置を見ることで、チーム内でどのような立ち位置にいるかを把握することが可能です。
投球回数とQS率から4つのセグメントに分けてみましたので、順番に見ていきましょう。

①主力投手: シーズン規定投球回到達(143回) & QS率60%

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主力投手としては、昨季最優秀防御率のタイトルを獲得した大野雄大と、チームトップの11勝をマークした柳裕也が含まれます。

■大野雄大
大野は今季、昨季の大活躍がフロックでないことを証明する一年になりそうです。
復活したストレートと対右打者に猛威を振るったツーシームを武器に、今季は開幕投手も視野に入れながら、リーグトップレベルの先発投手としての活躍がもはやマストと言えます。
2年連続の規定到達と2015年以来の二桁勝利、さらには東京オリンピック日本代表にも選出されることを期待しています。

■柳裕也
初の規定到達を果たし、ドラフト1位の真価を発揮した柳も、引き続き「主力投手」としての働きが期待されます。
昨季は全球種で球速アップに成功し、特に6月には圧倒的な成績を残すも、後半戦以降は球速の低下とともに大きく成績を落としました。
今季はさらなる球速アップと、通年でパフォーマンスを維持するスタミナ増を実現することで「2年目のジンクス」に陥らないよう準備してほしいと思います。

②ローテ投手: 100投球回以上 & QS率50%

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昨季「ローテ投手」のセグメント入りしたのは、ロメロただ一人でした。
ロメロは150キロを超える快速球を武器にしながらも、一度冷静さを欠くとキャッチャーのサインを無視し「直球ゴリ押し」になることもしばしば。
また変化球の精度もイマイチで、精神的にも技術的にも課題が多い投手です。
ただそれでもチーム3番手の投手としてローテーションを守った点は評価すべきで、今季は上記課題をクリアすることで2年目の躍進に大いに期待しています。

③ローテの谷間投手: 50投球回以上 & QS率30%

こちらのセグメントには一人も含まれませんが、これこそが昨季の台所事情の苦しさを表しています。
QS率が20%に満たないベテラン・山井大介にチーム4位となる65イニングを任さざるを得なく、怪我人が多発した先発投手陣はまさに火の車でした。
今季は山井や吉見一起などベテラン勢の奮起や、後述する若手投手の活躍で少しでも余裕のある運用になればと思います。

④育成、その他投手: 50投球回未満

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このセグメントには怪我や不振などで通年の一軍定着が叶わなかった投手がほとんどです。
例えば右肩のインピンジメント症候群で出遅れながら終盤は「安定して速い」ストレートを武器に台頭した梅津晃大や、不整脈での離脱を余儀なくされた笠原祥太郎が挙げられます。
両者とも昨季は50イニング以下の登板に終わりましたが、今季は少なくとも50イニング以上、可能なら「ローテ投手」として通年での活躍を期待しています。

一方で先輩投手の離脱によりチャンスを掴んだと言えるのが、高卒2年目の山本拓実でした。
後半戦から一軍昇格のチャンスを掴むと、プロ初勝利を含む3勝をマークし、一気に今季の先発ローテーション候補の一角と目されるまでになりました。
二軍で72回2/3、一軍で45回1/3の計118イニングと高卒2年目にしてはやや投げすぎな点は心配ですが、習得中の「スラッター」や最速150キロにまで到達したストレートを武器に、今季は「ローテ投手」の座を掴むことを期待しています。

また2017、2018と100イニング以上投げた小笠原慎之介には、自身初のシーズン規定投球回達成を目指して奮起してもらいたいと思っています。
特に今季は同級生たちが大学の4年間を経てプロ入りしてくるシーズンとなるので、プロの先輩としての意地を見せてほしいところです。

規定到達をクリアするためにまず求められるのは、平均143キロ程度のストレートをさらに高速化させることでしょうか。
それによりカーブや決め球であるチェンジアップとの「緩急」をより効果的に使えるようになり、大野雄大のように安定した成績を残せるようになるはずです。

3. 新戦力: ルーキー岡野、トッププロスペクト・ヤリエルに期待

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最後に今季加入した新戦力をチェックしてみたいと思います。
昨年のドラフト会議で指名された投手のうち、今季「即戦力」としての活躍が期待されるのはドラフト2位の橋本侑樹と、3位の岡野祐一郎でしょう。
そのうち、より先発投手としての期待値が高いのは岡野だと思います。

岡野はアマチュア時代から東芝のエース格として君臨し、ドラフト前から今年の先発候補の中では「もっとも即戦力度が高い投手の一人」として注目を浴びていました。
年齢的にも柳と同世代のため二軍でじっくり育成すべき投手ではなく、春先からチャンスを掴み少なくとも「ローテの谷間投手」として、先発ローテーションの一角を担ってほしい投手です。
彼が期待値通りの活躍をすることで、昨年やや投げ過ぎだった山本拓実や怪我がちの勝野、福谷らに過度な負担(性急な先発調整)を掛けさせないことも、副次的に得られる効果の一つです。

また今オフに獲得したキューバのトッププロスペクト、ヤリエル・ロドリゲスも今季の先発候補として注目している一人です。
ヤリエルは育成契約ではありますが、150キロ近いストレートをバンバン投げ込む右の本格派投手で、キューバの国内リーグでは先発投手として活躍しています。
球種のバリエーションが乏しいことや制球にバラつきがあるなど課題は多いですが、ライデル・マルティネスをリーグ屈指のリリーバーに成長させ、「衝撃的な制球難」を披露したブリトーを短期間で修正した中日の育成手腕があれば、今季途中での支配下登録もあり得るのでは?と期待しています。
春先からバリバリ活躍というわけにはいかないでしょうが、ロメロの状況次第ではナゴヤドームでその勇姿を見られる日もそう遠くないかもしれません。


以上、今季の先発投手陣の展望について考えてみました。
次回は中継ぎ投手陣の展望について取り上げます。


以上、ロバートさんでした。
今年も一年、どうぞよろしくお願いします!

データ参考:
nf3 - Baseball Data House -

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