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【6-7月】中日ドラゴンズファームレビュー投手編

皆さん、こんにちは。今回は毎月定期的に中日二軍成績をウォッチしている「中日ドラゴンズファームレビュー」の投手編です。前回の野手編はこちらから↓↓↓

それでは投手編、いってみましょう!

1. 6-7月二軍投手ハイライト

●一軍昇降格まとめ

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今月のハイライトは、開幕ローテーションから漏れた先発投手たちが相次いで一軍昇格し、一軍戦力として活躍したことが挙げられます。

ファーム開幕戦に先発し2試合で防御率0.96の素晴らしい成績を残した勝野昌慶は、吉見一起の再調整に伴う代役として7/11に一軍昇格を果たしました。最初の2登板は先発投手としての役割を果たせず早々にKOされてしまいましたが、その後の2登板ではストライク先行の投球で2戦続けてQS (=クオリティスタート、6回以上を3失点以内に抑える投球)をマークしチームに貢献しました。

柳裕也の代役として昇格した松葉貴大は、二軍成績はパッとしなかったものの、多彩な球種と抜群の制球力を武器に2戦2勝の大活躍。チームに勝利をもたらした以上に、「ストライクゾーン内に恐れず投げ込んで有利なカウントを作る」という意識をチーム内に浸透させることで、勝野や岡野祐一郎といった一部の先発投手に好影響を及ぼした点が素晴らしかったと思います。松葉の好投の秘訣については以下の記事で詳細にまとめているので、良かったらご覧ください↓↓↓

さらに二軍戦3試合11イニングを投げて防御率0.82と勝野以上の圧倒的な成績を残していた福谷浩司は、山本拓実の代わりとして7/28の広島戦に先発。平均球速150キロに迫るストレートとツーシームを武器に支配的な投球を披露し、6回無失点10奪三振の好投を見せました。2登板で未だ勝ち星はないですが、投げているボールが凄まじい、見ていてワクワクさせてくれる投手です。

このように、開幕前は期待の若手先発投手陣の陰に隠れていた投手たちが、開幕から1ヶ月を経てチームの苦境を救う活躍を見せたのはチームにとってかなり大きかったように思います。8/6には開幕からローテーションを守り続けた梅津晃大がコンディション不良で登録抹消となってしまいましたが、以下で詳しく紹介する先発投手たちの台頭でカバーしてくれるはずだと期待しています。

2. 起用法レビュー

●球団別 二軍投球回配分: ウエスタンリーグ (7/31時点)

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次に年齢構成と比較した、ウエスタンリーグ各チームの二軍投球回配分を見ていきます。何故二軍における年齢別の投球回配分を確認しなければならないか?については、下記の記事で私見をまとめていますのでお時間あればどうぞ。

上記表を見ると、野手と比較して二軍戦の登板機会を若手投手に優先的に配分している「訳ではない」ことが分かります。ただこれは25歳以下の若手投手の多くが既に一軍戦力として機能しているからで、育成機関として機能不全に陥っている訳ではないことはご留意ください。投手の場合は野手と違い登板機会を集中的に確保するだけでなく、怪我の予防のため投球数・登板間隔の管理が重要なので、例えばベテラン投手に登板機会を与える必要性も生じることは理解しておくべきかなと思います。

●6-7月先発投手登板カレンダー

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続いて6-7月の先発投手の起用状況を振り返ります。ひと目見て理解できるのは、雨天中止の多さです。6-7月は8試合が中止になり、二軍選手の育成・調整の機会が失われてしまいました。時季柄仕方ない面もありますが、今季序盤は二軍も含めて調整が難しかったように思います。

そんな中で先発した投手の顔ぶれを見てみると、前述の勝野、松葉、福谷と言った一軍に抜擢された投手のほか、笠原祥太郎小笠原慎之介ヤリエル・ロドリゲスと言った投手に序盤は先発機会が与えられてました。逆に昨季までは先発投手として一軍・二軍問わず多くの先発機会が与えられていた阿知羅拓馬の先発機会はわずか一度のみ、大ベテラン・山井大介に至っては中継ぎ起用のみと、先発投手の中にも明確に優先順位がついていることが分かります。一軍の先発投手事情とも連携した先発機会の配分は、今後もシビアに行われていくものと予想します。

●6-7月中継ぎ投手起用状況

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続いて中継ぎ投手の起用状況を見ていきます。通常中継ぎ投手の起用法について考える際には、3連投、回跨ぎなど投手に負担が掛かる起用が行われていないかをチェックするのが一般的です。ただ一軍と違いファームでは、試合数は少なく日程も緩く、かつブルペンの人数も融通が効くので、一軍と同じチェックポイントを用いて「ブルペン運用」にフォーカスするのはあまり意味がないと思いました。よって上記表の通り、どの投手にどれだけ登板機会が与えられているか、また2連投、回跨ぎ(ロングリリーフ)、イニング途中からの登板テストと言った一軍リリーフに求められる戦術的な起用法がどれだけ試されたかについてまとめてみました。

戦術的な起用法については必ずしも一軍での登板を想定したテストの意味合いとしてだけでなく、試合状況的にそうせざるを得なかった登板も多分に含まれているだろうというのはご留意ください。

例えばイニング途中の登板が多かった背景としては、多くの試合が雨で中止になる一方で育成投手含めると43人もの投手を抱えるチーム事情により、戦術的なテストというよりも「登板機会を与えるため」という意図もあったのではと推察されます。気候が安定する8月以降、このような戦術的な起用法がどう行われていくかは、引き続き確認していきたいと思います。

3. 投手ピックアップレビュー

ここからは6-7月に二軍戦に出場した選手の中からピックアップして、詳しく二軍成績を見ていきます。今回は以下12人の選手をレビューします。

▼先発投手:
笠原祥太郎 吉見一起 小笠原慎之介
ヤリエル・ロドリゲス 清水達也
▼中継ぎ投手:
濱田達郎 小熊凌祐 鈴木翔太 山井大介
伊藤準規 マルク 木下雄介

笠原祥太郎

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昨季の開幕投手・笠原は6-7月にチーム最多の投球回19イニングを投げ、防御率2.37とまずまずの成績を見せた。ただ打低のウエスタンリーグはリーグ平均防御率が2.52とかなり低く出ているため、笠原の成績は特段素晴らしい成績とは言い難い。その他の指標に目を向けてみても、被本塁打ゼロに対戦打者数に対する四球割合 (BB%)がリーグ平均を大きく下回っているのは上出来だが、三振割合はリーグ平均を大きく下回っているのは気に掛かる。

また気になるのはまだまだ打数が少ないとは言え、右打者にOPS.842と打たれている点だ。今年の笠原はホームランこそ打たれていないものの既に11本の二塁打を打たれており、そのうち9本は右打者に打たれたもの。さらに9本中7本はストレートを打たれている。

笠原と言えば「魔球」チェンジアップが代名詞だが、軸となるストレートが機能しなければ変化球も生きてこない。以下の記事でも球団OB・権藤博さんがチェンジアップの多投に警鐘を鳴らしているが、投球スタイルの見直しが今後必要となってくるかもしれない。

今年は自粛期間を活用して新球シンカーの習得にも取り組んでいる最中。残念ながら現在は右脇腹痛で離脱してしまったが、復帰後も腰を据えて新たな投球スタイルの確立を目指す一年になるのではないだろうか。
▽「準備している」中日・笠原 シンカー挑戦、復活へ着々

吉見一起

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開幕ローテ入りを果たしたベテラン・吉見は3登板で1勝のみと低迷し、7/5以降は二軍再調整となっている。ファームでは防御率1.80、四球割合5.1%とリーグ平均より好成績を残し、逆にリーグ平均と比較して三振が奪えていないのは笠原と同様の傾向。

笠原との明確な違いと言えば、フィールドアウトの大半をゴロアウトで奪えている点だ。今年は開幕前から左打者のインコースに投じる「フロントドア・シュート」を武器に、ストライクゾーンの両幅を広く使う投球でゴロアウトを量産。投球フォームの見直しもありストレートの力強さ、スライダーのキレも復活し、二軍レベルでは「グラウンドボーラー」として十分に通用している。

一軍では3登板で5本の被弾を許すなどまだまだ球威の衰えに対する懸念は拭いきれないものの、少ない球数で長いイニングを投げられる、安定した投球ができる吉見の力が必要になる時はいつかやってくる。先発投手のコンディション管理が難しい今シーズンだからこそ、吉見には調子を維持し来たるべき時に備えてもらいたい。

小笠原慎之介

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二軍レベルでも大いに苦しんでいると言えるのが、プロ5年目の小笠原だ。開幕前からピリッとしない投球が続き二軍スタートとなると、ここまで3登板では1試合あたりの被本塁打数を表すHR/9以外でリーグ平均より悪い数字を示している。特に三振割合は僅か8.1%とリーグ平均と大きく乖離しているのは見逃せない。さらに被打率は打者の左右に関わらず3割以上打たれており、空振りが奪えない、簡単にコンタクトされてしまう現状が浮き彫りになっている。

ただ小笠原もただ漫然と打たれ続けているわけでは当然ない。例えば今季二軍戦初先発となった7/1の登板では、投じた40球のうちチェンジアップ1球を除き39球は最速147キロ、平均142-143キロのストレートでゴリ押しするなど、力強さを失っているストレートの球威を試すような意図が感じられた。逆に7/30の登板では140キロ前後のストレートと変化球を効果的に混ぜる従来通りの投球を披露するなど、登板ごとに課題を設定しながら試行錯誤している姿が窺える。

梅津の離脱に伴い、小笠原は8/10広島戦の先発が濃厚。二軍成績を見る限り「救世主」と騒ぎ立てるほどの期待感が持てないのは正直なところだが、今季初登板でどのような投球を見せてくれるか注目したい。

ヤリエル・ロドリゲス

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8/2に支配下登録され、背番号67を背負うことになったヤリエルは、二軍レベルでは抜群の球威を武器に支配的な投球を見せる。防御率0.75ももちろん素晴らしいが、リーグ平均を大きく上回る三振割合27.3%は、6-7月に10イニング以上投げたウエスタンリーグの投手の中ではソフトバンク・杉山一樹の33.8%に次ぐ好成績だ。

常時150キロを超えてかつ手元で動くストレートを武器にフィールドアウトの8割も内野ゴロで奪っており、被安打もほとんどない。課題と言えば四球が多い点だが、先輩松葉を参考に「ストライクゾーン内に恐れず投げ込んで有利なカウントを作る」ことができれば、抜群の球威を最大限に活かす投球が期待できそうだ。

ヤリエルも小笠原と同じく、8/7から一軍帯同中。8/9の巨人戦で先発に抜擢される見込みだ。ファームで見せた豪速球とキレ味鋭いスライダーが巨人打線相手にどこまで通用するか、楽しみで仕方ない。
▽支配下登録の中日・ロドリゲスが1軍合流 9日巨人戦先発へ「チャンスもらった」小笠原は10日広島戦へ

清水達也

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開幕直後は他の先発投手の調整登板が優先されショートイニングでの登板が続いていた清水だが、7月中盤以降は先発としてまとまったイニングを投げ始めている。6-7月は3登板で投球回数は10イニングに見たないが、三振割合、四球割合といった指標ではリーグ平均レベルの成績を残している。

清水の武器は140キロ中盤のストレートと似た軌道から135キロ前後で変化するスライダーとフォーク、さらに大きなカーブも交えた「トレンドど真ん中」の投球ができる点。昨オフから球界を代表するエース・千賀晃大との自主トレに参加し、今年の自粛中には「セイバーメトリクスの落とし穴」を読破するなど、貪欲に投手としての高みを目指している。

現在の課題は三振が欲しい場面でしっかり空振りを奪う点にあるだろうか。昨季は一軍で三振割合14.2%、空振り率5.2%とリーグ平均を大きく下回り、一軍レベルの打者には全く「振ってもらえなかった」が、今季も未だフォークは空振りを奪うボールとして機能していない。

直近登板である8/2の広島戦では89球投じたうち、空振りはわずか5球のみ。それもストレートとカーブで奪ったもので、フォークは10球中5球をファールにされるなど、狙った結果が引き出せなかった。今月はフォークを始めとした変化球の精度向上による、三振割合の良化に期待したい。
▽中日3年目・清水が2軍戦今季初白星 1軍見据える無失点投球 本人も仁村2軍監督も「フォークに磨きを」

濱田達郎

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昨オフ2016年以来の支配下復帰を果たした濱田は、二軍の主力リリーフとしてブルペンを支える。チーム最多10試合に登板し、2連投2回、回跨ぎ1回、イニング途中での登板5回と一軍での起用が想定されるあらゆるケースを経験した上で、8/4に満を持して一軍昇格。8/5のDeNA戦では左の佐野に一発を浴びるなどまだ完全に持ち味を発揮しているとは言い難いが、生まれ変わった濱田は確かに「左の変則派リリーバー」としての第一歩を踏み出した。

二軍成績を改めて確認してみると、奪三振はあまり期待できない一方で四球割合は優秀で、フィールドアウトも内野ゴロと内野フライが約7割を占めるローリスクな投球を実現できていた。また少ない打数ではあるが、打者の左右に関わらず打者を抑えられている。

既に一軍昇格を果たした濱田ではあるが、今後は一軍レベルで左のワンポイントだけに留まらない活躍を期待したい。左打者の内角に食い込む動くストレートとスライダー、チェンジアップという球種構成は、組み立て次第では十分右打者を抑えるにも機能するはずだ。同じ左のサイドハンド・福は昨季シーズンを通し様々な工夫を凝らすことで安定した成績を維持したが、濱田も参考にできることは大いにあるかもしれない。

小熊凌祐

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リリーフ転向2年目の今季、6-7月は全試合リリーフとして登板し防御率3.24の成績を残した (8/5のオリックス戦はローテの谷間で先発)。140キロ台前半のストレートとスライダー、カーブ、フォークと多彩な球種を操る投球が持ち味だが、三振割合はリーグ平均を下回り、被OPSは少ない打数ながら左右ともにかなり悪い。

豊富な球種に制球もまとまっている小熊はいわゆる「先発向き」の投手だが、個人的にはリリーフで結果を出しなんとか一軍戦力を目指すほかないと思っている。理由は下記記事で詳細に分析されているが、「先発は中継ぎよりも難易度が高く、如何に先発向きの投手だとしても能力の絶対値が先発基準に達しない場合は、リリーフで結果を出すしかない」と考えるからだ。

プロ12年目の小熊はキャリアの殆どを先発投手として過ごしたが、これまで安定した成績を残すことができなかった。前述の通り先発投手の椅子は一軍・二軍問わずかなり限られており、先発機会の投資先はどうしても将来性のある若手か即戦力の中堅・ベテラン投手に限られてしまう。昨年の小熊のリリーフ転向は彼自身の適性を鑑みてというよりは、プロの世界で生き残るためのラストチャンスではないかと個人的には捉えている。

よって「置かれた場所で咲く」ためにも、小熊には今後リリーバーとしてのモデルチェンジを切に期待している。

鈴木翔太

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小熊と同様に昨季からリリーフに回った鈴木翔だが、こちらも今季ここまでは苦しんでいる。防御率もさることながら三振割合、四球割合いずれもリーグ平均からはかけ離れており、フィールドアウトも外野フライとライナーが大半を占める状況はあまり良い兆候ではない。

投球成績だけを見ると絶望的な数字が並ぶ一方で、投球内容を見ると昨季と比べて大きく進歩した点がある。それはストレートの大幅な球速増だ。昨季は平均140-142キロ、最速145キロ程度だった鈴木翔のストレートは、今季は殆どが145キロ前後をマークしており、ビジターの球場では140キロ台後半を連発する日も何度かあった。高めに浮いたストレートは伸びがあり、多くの空振りを奪うボールとして機能している。

ただ気になるのは、二軍公式戦開幕以降投球の殆どがこのストレートで占められている点だ。春先は140キロに迫るフォークも交え三振を多く奪っていたように思うが、現状はたまにスライダー系のボールを投じるだけに留まっている。制球が常にイマイチな点と合わせて、ストレート一辺倒だとなかなか好成績をマークするのは難しい。これは後述する木下雄やマルクにも通じるが、ストレートを集中的に使うことで何か試しているのかもしれない。

さらに成績悪化の一因となった7/30の登板ではワンアウトも取れず降板となったが、この日はストレートと思われるボールが全て140キロ前後しか出ていなかったのも気に掛かる。ストレートではない別のボールを試していたか、もしくは血行障害の影響で一時的に球速が出なかったのかは現時点では分からないが、引き続き注視していきたいところだ。

山井大介

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昨季チームで4番目に多い65イニングを一軍で投げた大ベテランは、今季はリリーフとして調整を続けている。ロングリリーフは6-7月で2回記録しているものの、先発の谷間と思われる日ですらまっさらなマウンドに上がる機会を与えられていない。

投球成績に目を向けると、3イニングを投げた7/16にソフトバンク・柳町に浴びたツーランホームランによる2失点以外は大きなミスなく投げ続けており、防御率、三振割合はいずれもリーグ平均をクリア。四球割合もリーグ平均レベルで、被打率も優秀な成績を残している。

山井について気になるのは、今後どのように起用していくか?という1点だけだろう。本格的にリリーフとして「セットアップ・ゴーグル」の再来を狙うのか、それとも現状は他の先発投手陣に先発機会を譲っているだけなのかは、外から見ているだけでは掴めない。ロングリリーフを精力的にこなしている点からあくまで先発調整の一環ではないかと思うが、キャリア最晩年のベテランがどういう役割を期待されているかは、引き続き注目したい。

伊藤準規

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昨季の伊藤準は一軍では山賊被害にあったわずか1登板のみという残念な結果に終わったが、ファームでは防御率0.29、奪三振割合21.1%と圧巻な成績を残していた。今季もここまでは防御率こそ見栄えが悪いものの、140キロ後半のストレートとフォークのコンビネーションで相変わらず高い奪三振割合を維持している。

伊藤準に関して気になるのは、7/19のオリックス戦を最後に登板がないことだ。この日の登板は「投球フォームが変わっている」という点で話題になったが、この日を境に登板がなくなったのは気に掛かる。

以下の記事では二軍残留組の一員として8/5のシート打撃に登板していることがわかるので大きな怪我などではないだろうが、現状更なるフォームの修正など新たな課題に取り組んでいるのかもしれない。
▽2軍残留組が汗を流すナゴヤ球場に“二刀流”がいた。むろん根尾や岡林ではない。伊藤準、又吉、鈴木博が登板した5日の…(高橋雅人)

マルク

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仁村二軍監督から開幕前に「ファームの守護神はマルクで」と高い期待をかけられていたマルク。春先から連続無失点を続け、シエラ、アリエル・マルティネスに次ぐ支配下登録を目指し猛アピールを続けていた。
▽支配下登録Aマルティネスに続けるか…3月から無失点投球続ける中日育成マルク 12試合で被安打1

6-7月の二軍公式戦の投球成績を見てみると、概ねリーグ平均レベルで推移しており現状はまずまずの成績を残していると言っていい。対左打者の被OPSが飛び抜けているのは打数が少ない中でオリックス・モヤのホームラン1本が効いているからで、あまり気にする必要はないだろう。

マルクの投球内容を見てみると、支配下登録までの課題として以下の3点が考えられる:

①ストレートの制球
マルクは特徴的な投球フォームのせいか、140キロ後半のストレートが高めに集まることが多い。投球割合の大半がストレートでしかも似たようなコースに集中するからか目付けが容易で、球威はあるものの空振りが多く奪うボールとしてはさほど機能していない。フライアウトを多く稼ぐ要因であるとも言えるが、球威あるボールをもう少し低めにも制球できた方が投球の幅は広がるはず。

②セットポジションからの投球
こちらも独特な投球フォームに起因するのか、セットポジション、特にクイックの投球だとスピードが140キロ前半まで落ち込む。これは特にマルクに限った話ではないが、ストレートが1番の武器の投手なので対策が必要かもしれない。

③変化球の精度
春先はチェンジアップやスライダーといったボールを駆使し三振を多く奪っていたが、開幕以降はストレートが中心の投球となっている。特に7月中旬以降の投球を見てみると、変化球は130-135キロ前後のフォークを多く投げている印象。高低を活かしてストレートとフォークのコンビネーションを活用するのは良いが、決め球として使うにはもう少し高速化した方が良いかと思われる。映像を見る感じ深く握りすぎ?

育成のライバルたちが続々支配下登録される中で焦りもあるかもしれないが、課題克服のためじっくり二軍で取り組むべきと個人的には思う。

木下雄介

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左足首の故障から復帰した木下雄は、6-7月は3登板ながら圧倒的な投球を続けている。三振割合はリーグ平均を大きく超え、与四球、被本塁打に失点は未だゼロ。1イニングあたりの球数はわずか9球と、少ない球数で打者を抑えることに成功している。

復帰後の投球を見てみると、148-150キロ前後のストレートは球威十分で、特に高めのコースは多くの空振りを奪えている。さらに低めに投じる140キロ前後のフォークもキレがあり、このストレートとフォークのコンビネーションが好成績の要因となっている。

木下雄はあとは二軍で登板数を増やしながら調子を維持し、一軍のブルペンに空きが出るのを待つばかりだろう。現在の一軍ブルペンにはストレートとフォークのコンビネーションで打者を抑えるタイプの投手はいないため、木下雄の存在はリリーフ投手陣のバリエーションを増やす意味でも効果的なはずだ。病み上がりではあるが、早く一軍で見てみたい投手の一人だ。

4. 8月二軍投手注目ポイント

最後に、今月の二軍投手起用の注目点について見ていきます。

①橋本侑樹の先発転向の可能性は?
8/3に二軍降格となってしまった橋本を今後どのように起用していくかは注目だ。橋本はビハインド展開やロングリリーフを任されるBチームの一員として開幕一軍入りを果たし、キレ味抜群のストレート、スライダーなどでバンバン三振を奪う姿に大器の片鱗を感じさせた。

Bチームという役割はそれほど負担が掛からずに一軍レベルを体感するには悪くない起用法かなと思っていたが、7/17-19には3連投を強いられてしまう。そこから成績が急激に落ち込み、登板機会も減少したのは否定できない。

ドラフト2位で獲得した期待の左腕をビハインド展開で投げさせ続けるような起用なら、改めて先発調整に舵を切った方がベターだと個人的には考える。大学時代はノーヒットノーランを達成した投手でもあるだけに、今回の二軍再調整が先発転向を意味するものであるかどうかは、引き続き注視していきたい。

②2017年ドラフト1位、2位コンビの復活登板は?
二軍公式戦で未だ登板のない、鈴木博志石川翔がいつ実戦復帰するか注目だ。鈴木博は一軍登板6試合で防御率12.91と大スランプで、7/12に二軍落ち。石川翔は開幕前には登板があったものの、開幕後は全く音沙汰がなくなっている。

東海ラジオアナウンサーの大澤氏のツイートによると、鈴木博と石川翔は一緒にフォームチェックを行っているようなので、怪我などではなく投球フォームの修正など何か課題に取り組んでいるものと思われる。ポテンシャルは十分な二人だけに、今月どのタイミングで実戦復帰するか、また過去登板と比較してどれだけ進化した姿を見せてくれるかには注目だ。

③ルーキー2投手のデビュー登板は?
今年は開幕からルーキーの目覚ましい活躍が注目を浴びる一方で、ドラフト6位・竹内龍臣育成ドラフト1位・松田亘哲についての話題は殆どない。恐らく実戦登板を通じて経験を積み重ねるよりも、体づくりや投球フォーム固めなどまだまだ「土台づくり」に専念しているだろうと推測される。

ただ昨季はドラフト5位ルーキー・垣越建伸は開幕から約1ヶ月後の4/24には二軍公式戦初登板を果たしているため、竹内と松田もそろそろ登板機会が与えられても良い頃ではないだろうか。現時点では戦力としてカウントしているわけではないため実戦登板を焦らせるつもりはないが、いちファンとして彼らの投げている姿を早く見たいというのが正直なところ。8月中に彼らの登板があるかどうか、首を長くして待ちたいと思う。

以上、ロバートさんでした。次回はまた9月頭ごろ(予定は未定)に更新します。
ありがとうございました!

データ参考:
NPB
日刊スポーツ ファーム情報
プロ野球データFreak
nf3 - Baseball Data House -

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