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9月度月間MVP・福田永将はなぜ後半戦に大活躍できたのか?

皆さん、こんにちは。今回は

「福田永将はなぜ後半戦に大活躍できたのか?」

について考えてみたいと思います。

福田永将と言えばプロ13年目の今季、前半戦は思うような結果が残せなかったものの、二軍再調整を経た8月以降は怒涛の勢いで打ちまくりクリーンアップに定着。リーグ屈指の打棒をレギュラーシーズン終盤まで維持するなど後半戦躍進のキーマンとなり、自身初の9月度月間MVPも獲得しました。

慢性的な得点力不足を抱えるチームにとって、後半戦の福田が3番打者として結果を残し続けたのが如何に大きかったかは、中日ファンなら誰しも心に残っているかと思います。

それでは今季後半戦の福田は、なぜこのような好成績を収めることができたのでしょうか?前半戦や昨季と比較してどのような違いがあったのか、下記で詳しく見ていきたいと思います。

1. 打撃成績を振り返る

まず改めて昨季2018年と今季前半戦、後半戦の3つに分けた打撃成績について確認していきます。

下記表を見てもらうと、打席数に違いはあれど今季後半戦に福田が如何に打ちまくったかがよく分かるかと思います。

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打率、出塁率、長打率はかなりの好成績をマークしており、出塁率と長打率を足したOPSは.969。

これは今季通年成績で見ると、巨人坂本レベルの打棒を後半戦は維持していたことになります。

また四球割合には改善は見られなかったものの、三振割合はリーグ平均を下回るレベルまで改善していたことも分かりました。フルスイングから放たれるホームランの美しい放物線が魅力の選手だけに三振の多さは必要経費のようなものでしたが、そんなアプローチの悪さも改善傾向にあるように見えます。


まさに後半戦のキーマンと呼ぶに相応しい好成績ですが、その要因は一体どこにあるのでしょうか。
以下の3点に着目することでその「変化」について深掘りしたいと思います:

①ストライクゾーンの管理
②変化球への対応
③2ストライク以降の対応

2-1: ストライクゾーンの管理

まずは打者にとって最も重要と言える、ストライクゾーン内外のボールに対してどのように対応していたかについて見ていきます。

以下の表は過去5年のボールゾーンスイング率、ストライクゾーンスイング率、コンタクト率、空振り率の変遷について着目したものになります。

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いずれの年もリーグ平均より良い数値を残せておらず、福田の積極性の高さ、フリースインガーぶりが垣間見れるかと思います。

ただ今季2019年は直近数年と比較すると、全ての項目で平均との乖離が小さくなっているのが確認できるかと思います。

ボールゾーン、ストライクゾーン共にスイング率が下がっていることから「選球眼が良くなった」とは言い切れないですが、「ゾーン内でも打つべきボールを見極めるようになった」または「ボール球を追いかけなくなった」ということが言えるでしょうか。

またフルスイングが代名詞でもある福田ですが、空振り率も改善傾向にあり「打撃の確実性が増した」とも言えるかもしれません。

2-2: 変化球への対応

次は球種別に、昨季と今季ではどのように変化球の対応が改善したかについて見ていきます。

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打数が少ないので断言するのは難しいかもしれませんが、昨季苦戦していたフォークとカットボールに対して、今季は対応できていたと言えるかと思います。

今季の福田vsフォークと言えば、思い起こされるのは低めのボールゾーンに落ちる球を泳ぎながらも前で捌きヒットにしたシーンです。

これまでの福田はどちらかというとストレート一本に絞ってフルスイングする「だけ」の打者でしたが、今季は特にチャンスの場面などで、難しいコースの変化球を泳ぎながらヒットゾーンに運ぶクラッチヒットが多く見られるようになりました。3番打者として後半戦チームを牽引し、多くの打点を挙げることができたのは、状況によっては100%のフルスイングではなく軽打でポイントゲッターに徹する、そんな対応力が身についたからだと考えます。

またカットボールについては、今季放った3ホーマーは全て後半戦に打ったものでした。

印象的だったのは8/11、DeNA藤岡から放った満塁ホームラン。外角のカットボールを逆らわずに右方向へ打ち、横浜スタジアムのライトスタンド最前列ギリギリにライナーで運ぶ一発はお見事でした。

シュート、カットボールなど手元で変化するボールが苦手なドラゴンズ打線において、一定以上の対応力を備えた福田が打線の中心にいたことが、後半戦の原動力だったと言えます。

2-3: 2ストライク以降の対応

次はカウント別に、昨季と今季ではどのように打撃成績が変化したかについて見ていきます。

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ストライクカウント別に見ていくと、ノーストライクから2ストライクまでいずれも今季の方が打撃成績が優れているように見えます。

その中で特筆すべきなのが、「打者不利」のカウントである2ストライク以降の数字です。有利不利の関係がイーブンになるフルカウントを除くと(ここは何故か今季かなり悪いですが)、いずれの打者不利のカウントで昨季より打率を上げています。

またホームランの多さも特徴で、こちらは今季2ストライク以降に放ったホームラン7本のうち、5本が後半戦に打ったものでした。前述の落ちる変化球への対応の話と共通してきますが、追い込まれてからは打席内でのアプローチを軽打寄りに変えて、相手投手のウイニングショットにも対応できるようにしたことが好成績に繋がったように思えます。

3: 後半戦の変化をもたらした真の要因は何か?

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以上、今季における福田の「変化」について見ていきました。
まとめると

「打つべきボールの選別を行うことで対応できるボールが増えた、また打者不利のカウントやチャンス時など状況に応じて軽打の意識に切り替えることで更に対応できる幅が広がった」

と言えるでしょうか。

有り余るパワーを武器にブンブン振り回していた昨季までの福田から、特に後半戦以降は打席内でのアプローチに大きな進歩が見られたように思います。

ではその「変化」は何故後半戦以降特に顕著に表れるようになったのでしょうか。ここからは私個人の推察になりますが、以下の2点をその理由として挙げたいと思います。

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▼体重移動を意識した打撃フォームへの変更
まず挙げたいのは「体重移動」を意識した打撃フォームの変更。
これは今季メディアでも好調の理由として度々口にしているが、昨季のように軸足に体重を残して回転で打つフォームから、前足へ体重を移動していくフォームを意識したように思われる。
これは今季前半戦から取り組んでいたものの上手くできておらず、ファームでの再調整の際に修正したとのこと。

これによりスイング時のパワーがよりスムーズにボールに伝わるようになり、120%のフルスイングをしなくとも80%の力感で十分打球が飛ぶことを実感したのではないか。

▼右手首負傷による「怪我の功名」
福田は今季6月に右手首を負傷し一度ファームに落ちたが、同時期に平田も離脱していたこともあり2週間程度で一軍復帰。
ただ病み上がりの状態での見切り発車だったのか結果は出ず、前半戦終了後にファーム再調整となった。

福田はもともと利き手の右手でスイングを主導するタイプの打者に見えるため、この右手首の怪我は彼のフルスイングに多大な影響を与えたのではないか?
例えば利き手の押し込みをこれまでと同じ100%ではなく、80%の力感でスイングするような意識の変化。
それが後半戦から特に顕著だった「バット投げが見られなくなったこと」とも関係しているのかもしれない。

8割の力感でスイングすることで利き手である右手への負担軽減、またバットの操作性の向上に繋がり、結果としてあらゆるボールへの対応力の向上に繋がったのではないだろうか。
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以上2点が、今季後半戦における福田の好調の要因だったのではないかと推察します。真偽のほどは直接本人へ聞いてみないことには分かりませんが、オフの間にどこかで話されないか、引き続き注目していきたいと思います。

4: 遅咲きスラッガー・福田永将は来季も好調を維持できるか

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今季後半戦大活躍した福田ですが、来季以降もレギュラーとして出場機会が与えられ、また後半戦同様の活躍ができるかどうかは、とても気になるところです。

レフトのポジションを争うアルモンテは股関節の怪我による育成契約打診中、またソフトバンクからFA権を行使した福田秀平の獲得にも球団としては熱心のため、状況によっては半レギュラーの立ち位置に逆戻りする可能性もあります。またアルモンテの契約に関わらず、支配下登録下の野手の少なさから新外国人野手の獲得も恐らく間違いないでしょう。

後半戦大活躍したとは言え、レギュラー安泰とは言えないのが現状です。

一方で個人的には、1988年生まれの同い年である福田永将の活躍を心から期待しております。上記考察でも指摘したように今季はあらゆるボールに対応できる「うまさ」を身に付けたと考えられるだけに、後半戦の活躍がフロックだとはとても思えません。

来季はライバルたちとの競争を勝ち抜き、

「生え抜き日本人選手としては福留孝介以来二人目となるシーズン30ホームランを達成してほしい」

と願っています。


以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!

データ参考:
1.02 Essence of Baseball
nf3 - Baseball Data House -
データで楽しむプロ野球

*2019/11/16 中日新聞プラスへの投稿分を転載

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