マガジンのカバー画像

エッセイ

16
運営しているクリエイター

#ハワイ

ハワイ紀行(2)

ハワイ紀行(2)

越川芳明 

 ハワイには身寄りも知り合いもいなかった。半年間滞在のビザを取得するために、どこの馬の骨かもわからない僕のために煩わしい労をとってくれたD教授は、コロナ禍でめったに大学のキャンパスを訪れることはなく、自宅で遠隔授業をしていた。

 D教授は僕がハワイに到着して二週間ぐらいたってから、マノア渓谷にあるベトナム料理店に招待してくれた。

 申し訳ないが、二ヶ月後には、学生たちを引率してイ

もっとみる
ハワイ紀行 (1)  越川芳明

ハワイ紀行 (1)  越川芳明

カハラオプナの絵:Kahalaopuna – Mele Murials – ©Foto Gérard Koch, 2017

マノア渓谷

二〇二一年の秋、僕は成田からホノルルに飛んだ。

滞在は六ヶ月の予定だった。深刻な新型コロナ禍のなか、出発七十二時間前のPCR検査を義務づけられていた。帰国の際にも、ハワイと日本でPCR検査をしなければならなかった。そんなわけで、ハワイには日本からの観光客はほ

もっとみる
「倒れている樹は」(2)

「倒れている樹は」(2)

前回、「倒れている木は道端の占い師」という、アフロキューバ宗教の格言について触れたが、今回はその続きである。

1917年にジョゼフ・ロックという生物学者によってインドネシアのモロッカ諸島からカウアイ島に植えられたアルビジアという木が、嵐や風などで簡単に倒れて、ハワイ諸島の民家や自治体に甚大な被害をもらしている。

前回はそういう話をした。確かに、人間から見ると、厄介な木である。

だが、物事を人

もっとみる