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[オススメ]関西人と行くパックツアー

今となってはずいぶん昔のことだ。

初めてのヨーロッパ旅行。行き先はイタリア。
イタリア語はもちろん、英語にもまるで自信がないのでもちろんパックツアーである。関西空港発であった。

次の観光地へ向かうバスで、若い添乗員さんが滑らかにこれから行く場所の歴史や、見どころを話している。

いったいどれほど勉強したのだろう?
彼女が手に持つフワフワのノートに目がいく。
頑張り屋だなぁと好感を持って聞いていた。

それから、高速道路の変わらない景色を眺めてちょっと眠いなとおもっていた。


「そんなことより私たちは西村さんの話が聞きたいわー!」

突然、車内に楽しげな大きな声が響く。

振り返ると5人ほどのグループで参加しているおばさま達だ。



西村さん?



西村さんとは、これから行く観光地に住む芸能人でも芸術家でもなんでもなかった。



西村さんとは添乗員さんの名前だった。


西村さんはこのようなことは慣れているのか、あるいはノートに書いていない事態に困惑したのか
とにかく歴史解説を続けようとする。


おばさまがたもそんなことには慣れているのか
一向に引き下がらない。


「この教会には逸話があります。」

「西村さんは独身なのー?」

「ちょっと怖い話ですけどみなさん大丈夫ですか?」

「この仕事はじめて何年ー?」

「大丈夫そうですので、はじめさせていただきますねー。」

「西村さんいくつなのー?」


眠気が一気に吹き飛んだ。

授業を続けようとする先生と、先生のことを知りたい小学生みたいな攻防だ。


面白すぎる。

私にはイタリアの歴史話より

西村さん個人情報より

はっきりいってこの攻防が面白い。


慣れてくると5人組以外も実に個性豊かである。

「私ね。くる前にもうお土産は買ってあるの。お土産買うよりたくさん写真を撮らなくちゃと思って。本当に来たって証拠に!」
このおばさまは会う人会う人にそればっかり話してる。しんから嬉しそうにいうので可愛い。

「海外の味は口に合わない。」とばかりに全ての食事を口にせず、頃合いを見計らって早々に部屋に引き上げる上品な母娘もいた。
きっと大きなカバンの中は食糧なのだ。
その証拠に行く先々でお湯を耐えず探している。
いったい部屋で何を食べているのだろう??
ご飯が合わない危険を侵して2人はこの旅で何か見たいものがあってきたはずだ。それは何だろう?

1人で申し込んだおばあちゃんは
同じく1人で申し込んだと思しきおじいちゃんに何かと話しかけ、食事のたんびに隣に座ろうとする。

他方おじいちゃんは1人になりたくて参加したような感じで、若干迷惑顔だ。

添乗員さんは食事のたんびにこの2人をどこに座らそうか工夫している。

添乗員さんの声が聞こえるイヤフォンをつけてバチカン内を各自で見て回る。

とても混んでいるので、だいたいみんな同じペースで歩くことになる。イヤフォンからは一緒のペースで歩く添乗員の西村さんの声でざっくりした知識が紹介されてかなり良かった。

…ところが、
途中から聞こえてくる内容が変わった。




「○○さーん!どこですかー。いたら手をあげてください。」

「○○さーん!聞こえますかー??」

そればっかりになっちゃった。

○○さんは誰だろう?どうしたのだ?




集合場所にガイドさんと遅れて到着したのは、1人参加のおじいちゃんだった。

普通の人は入れてもらえないところを施設の人(バチカンの僧侶だよ!)に案内してもらって出てきたのだという。

つまり迷子になっちゃって、入っちゃいけないところに入ってしまって僧侶に案内されて出てきたってことなんだと思うけれど…

みんなを心配させたとか、変なとこ入り込んじゃったとかいう様子は微塵もなく、彼はとても満足気だった。


このおじいちゃんやっぱり単独行動好きだな…。私は直感した。

添乗員さんも直感したらしく、その日を境に、孤独を愛するおじいちゃんは、おばあちゃんに加えて添乗員さんにも追いかけ回されることになった。


「ミサンガ売りに気をつけてください!」

西村さんの注意を受けてスペイン広場近くで解散すると、新婚旅行と思しきカップルのご主人が数秒で腕にミサンガを撒かれている。
…奥さん頑張れ!

またある日は、食事の後にデザートが出てきた。
丸ごとのフルーツとナイフ!!
誰がこれを切るべきだろう?
各テーブルで変な心理戦が始まる。

我々のテーブルは、おばあちゃんとおじいちゃんが一緒だ。おばあちゃん、おじいちゃんにいいとこ見せたいか?それともここは若輩者の我々が、危ない手つきで切ってみせるべきなのか?


はじめはみんな赤の他人である。
旅で、寝食を共にするうちに、自然とお互い個性を把握し合うことになる。これはパックツアーの醍醐味の一つだと思う。

せっかくイタリアくんだりまで行っだけど、私はたくさん見た美術品や立派な建築をたいして覚えていない。(もちろん覚えているのもある。でも歴史的価値のあるものが多すぎて途中から感覚がマヒした。)

しっかり覚えているのは、このような旅のお仲間エピソードばかりである。
パックツアーは楽しい。

今回これを書くにあたってあれは本当にイタリアだったのかな?とアルバムを見返すと確かに私はイタリアに行っていた。

私にしては写真がやたら多いのは、
多分チャーミングおばさまが
「行ったって証拠に写真をたくさん撮るの。」
って言うのを毎日聞いていたからだ。私はまた楽しくなった。

と言うわけでみなさん。
自分でプランを組んだ自由の旅もいいけれど
成り行き任せのパックツアーもおすすめです♪

そしてそのようなパックツアーのうちでも
私は関西人と一緒に行くのをかなりオススメします。
みんなの自由な発言、行動で修学旅行的気分が味わえます。

ま、私も一応関西人なのだけどね!

多分行き先はどこでもいい。
日帰りバス旅行でいいはずです♪

気が向いたら
期待しないで
行ってみてください😊




はっきりいって行き先はどこでも良い。

関西人の参加するパックツアーは面白いように思う。

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