見出し画像

余命の告知・伝え方は?

がん診療、特に抗がん剤治療をしていると、患者の余命・予後について説明することは必ずでてくる。
今回は、余命とその告知について記載したい

1.余命はわかるか

 患者の余命は数ヶ月-数年単位では全くわからない。しかし、死期が近くなると、その予測の正確性はでてくる。
※亡くなる数日前ぐらいから意識の低下や傾眠傾向などがあらわれ、徐々にバイタルサインが変化してくる。
(血圧が低くなり、脈拍はゆっくりとしていくなど心臓の拍出力の低下があらわれてくる)
余命について伝えることは不謹慎と一部では考えられている場合があるが、「死」はだれにでも訪れることが現実であり、”自分の死をどのようにむかえるか”という問いは考える必要がある。
その自分の死を患者自身、患者家族が考えることで、それぞれの死生観があきらかになり、医療者としてはその最期に対して可能な限りのサポートをしていきたいことから余命や最期が近づきつつあることを述べる必要があると考えている。

2.余命の伝え方:患者家族

 患者家族には自分の考えている患者余命をありのままで述べる。
まずは臨床試験や経験からわかっている事実を述べる
例)大腸癌 satgeⅣ で抗がん剤治療を受けられる予定の場合
・大腸癌のstageⅣで抗がん剤治療をした場合の中央値は約2-3年
・抗がん剤治療をしない場合は約10ヶ月
・抗がん剤治療して反応性が良好であれば、上記の余命延長は期待できる
・抗がん剤治療の反応性が不良であれば、上記の余命よりも短い可能性が
 高い
・抗がん剤を使い切ったり、患者の状態がほぼ寝たきりのようになった場合は、
 死期は数ヶ月以内となる可能性が高い

これらの事実を述べることで、患者の死への受容を促し、もしものときに慌てたり、準備が全くしてなかったなどのことがないように配慮する。
そして、延命治療(心臓マッサージや挿管・呼吸器接続)の有無と最期の迎え方(自宅 または 施設など)を熟慮してもらえる契機となるから、その説明は意義があると考えている。

3.余命の伝え方:本人へ

患者本人への伝え方は、基本的に患者家族に伝える内容とほぼ同じだが、ややぼやかして説明することが多い。
それは、患者自身があまり聞きたくないことも多く、患者自身も自分の身体のことであり、自身が最も理解している場合も少なくないからだ。
注意すべき点として、現在は緩和ケアをできるだけ早期に取り入れることが多く、治療と並行して身体的・精神的サポートを多職種でアプローチしている。
しかし、患者側にとっては終末期治療と勘違いしているケースが多々あり、その点を注意しておくことが必要となる。

基本的には、
・客観的事実(ファクト)
・その客観的事実から目の前の患者さんへの自分の解釈
の2つを述べ、
・患者・患者家族の死生観を知り、
・その理想的な最期へのサポート
を行うことは、患者-医師信頼関係に重要であり、この余命の告知は重要である。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?