見出し画像

規制・指示標識のダンゴの順番は?

内閣府が毎年発行している交通安全白書によると、規制標識及び指示標識の設置枚数は、全国で約965万枚もあるという。これらのうちの多くは複数枚の標識がひとつの支柱に設置されているが、これらの標識はある一定の法則に従って順番にひとつの支柱に設置されているのをご存知だろうか。この記事では、複数標識の設置ルールについて細部まで見ていくことにする。

本標識の設置パターン

話は少し逸れるが、東京都文京区には団子坂と呼ばれる坂がある。そして団子坂の下方にある「団子坂下」交差点付近には、ひとつの支柱に3つの本標識が設置された規制標識があるが、これはまさに "ダンゴ" のように見える。ということで、交通標識が支柱に複数 "串刺し" になっている様子を "ダンゴ状になっている" と表現することがある。 

キャプチャ
場所: 東京都文京区団子坂下交差点
ダンゴ状に連なった交通標識がある。

この標識のダンゴであるが、警察庁が発行する交通規制基準に設置に関する事細かなルールが規定されている。たとえばいくつか特徴的な内容を抜き出してみる。

● 併設する本板は、標示板が表示する方向からみて、同一面において原則として2段までとする。
● 道路標識の併設枚数は、本標識及び補助標識を併せて※、(区間を表すものを除き)原則として同一面に4枚以内とする。

※ 実態を見ると、補助標識が別途複数枚あっても本標識が4枚あるケースも割と多く見られるため、「同一面に本標識が4枚以内」というのが事実上のルールとなっているように見える。

交通規制基準には、複数の本標識がひとつの支柱に設置される例として、具体的に以下の図表が示されている。これは支柱が進行方向の道路左側にある場合である。(中央分離帯や一方通行で右側にある場合は左右反対になる)

画像1
出典: 交通規制基準

標識内の数字は後で述べる "配列順位" の順番を表す。つまり、配列順位が高いものは上側、かつ右側に設置するのが規則になっている。これは、配列順位が高いものをより目立たせるということだろう。

また、「横断歩道」、「自転車横断帯」及び「横断歩道・自転車横断帯」(以下「横断歩道等」と略す)の標識の有無によって規定が違っており、「横断歩道等」の標識がある場合は、道路側の一番下に設置するというのが規則になっている。「横断歩道等」は常に一番下に配置するが、必ず道路側に配置することで一定程度目立つように担保するということだろう。

また、この規則に則って考えると、例示はされていないが、本標識が増えた場合は以下のような配列になることが導き出される。

画像7
画像7

本標識数が4つになる場合、縦一列に配置されることは非常に稀となる。つまり、以下のような配列に理論上はなるが、実際にはほぼ見かけない。

画像5

また、配置方法の例外として、交通規制基準に規定があるわけではないが比較的よく見かけるケースは、ひとつの支柱で「終わり」と「継続/始まり」を同時に示したい場合、「終わり」のものが左側に配置される場合である。終わるものは継続/始まりのものに比べて目立たせる必要性が低いというのが理由だと思われる。

画像3

オーバーヘッド/オーバーハング型の場合、標識は横向きに一列で配置されることになるが、このときは、信号の「赤」「黄」「緑」と同様に、右のほうが配列順位が高くなる。オーバーハング型で支柱が道路の右側にあっても、左右対称にはならずに右に行くほど配列順位が高くなる。

画像4

本標識の配列順位

それでは、標識の中の数字である "配列順位" は標識の種類によってどう決まるのか、について見てみよう。

配列順位には1~45の順位付けがある。5つのカテゴリに分かれており、上位にあるカテゴリのほうがより重要であり目立つ必要がある。

  • 一時停止または徐行に関するもの (1~3)

  • 通行の禁止・制限に関するもの (4~21)

  • 交差点等における右左折の制限に関するもの (22~25)

  • 通行の方法等に関するもの (26~39)

  • 駐車に関するもの (40~45)

それぞれのカテゴリに属するものは、具体的には以下の通り。

(※転回禁止 (23/34)と警笛鳴らせ/警笛区間 (26/36)は、同じ規制標識で地点規制と区間規制に使われる場合で順位が異なることに注意)

■ 一時停止または徐行に関するもの (1~3)

画像8
出典: 交通規制基準

■ 通行の禁止・制限に関するもの (4~21)

画像9
出典: 交通規制基準

■ 交差点等における右左折の制限に関するもの (22~25)

画像10
出典: 交通規制基準

■ 通行の方法等に関するもの (26~39)

画像12
出典: 交通規制基準

■ 駐車に関するもの (40~45)

画像11
出典: 交通規制基準

これらを元に、一般的な例をいくつか見てみよう。

■ 例と都道府県による違い

設置パターンと配列順位を元に典型的な標識の組み合わせを並べてみた。

画像13
画像14
画像15
画像17

ちなみに、標識同士の間は 0~1cmの隙間を空けることが推奨されるが、本標識に補助標識が設置されている場合、上方の本標識すべてに適用されると誤解されるのを防ぐために、補助標識が付いている本標識と、その直上の本標識との間に10~15cmの隙間を空けることが推奨されている。

また、都道府県や自動車専用道路等を管理する道路公団など、どの設置者も、原則これらの設置パターンと配列順位に従って交通標識を設置するが、中には決まったパターンでこれらの原則から外れているケースも散見される。

以下が例である。

画像16

(1) 指定方向外進行禁止よりも最高速度規制や追い越し禁止のほうが順位が高くなっている  (千葉)
(2) 通行止めよりも追い越し禁止のほうが順位が高くなっている (千葉)
(3) 一方通行の順位が一番下になっている (大阪、千葉)
(4) 時間制限駐車区間と駐車禁止の順位が逆転している(大阪、神奈川の一部 (平塚)、千葉、山梨)

複数の標識設置者が関わっている場合、上記のルールを逸脱した数の標識が設置されたり、配置順位や設置パターンに従わない形で設置されることがある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?