ゾーン30とは
住宅地の生活道路などで「ゾーン30」と書いた標識を多く見かけるようになってきたが、これは何を意味するのだろうか。
概要
「ゾーン30」とは、警察庁が2011年 (平成23) より生活道路及びその周辺地域に指定を始めている区域規制である。これは生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保することを目的とした交通安全対策である。それまでは、最高速度の規制標識がない生活道路での最高速度は法定速度である60km/hが基本となっていたのが、ゾーン30に指定された区域は最高速度が30km/hであることが明確になった。
生活道路における60km/h以外の法定速度の設定は制度上はなく、また "生活道路" を厳密に定義することも難しい (警察庁のWebでも "明確な定義はない"と書かれている) ため、"生活道路"においては 30km/h程度が望ましいものの、それを規定する根拠がなかった。
警察側では、地域住民と会話を重ねながら必要な区域でゾーン30を広げていく、というのが今後の対策になっており、逆に設定がされていない生活道路は、「歩行者・車両の通行実態や交通事故の発生状況を勘案しつつ、住民、地方公共団体、道路管理者などの意見を十分に踏まえて、速度を抑えるべき道路を選定し、このような道路の最高速度は原則として30km/hとする」としているものの、30km/hが "望ましい" に制度上は留まってしまうのが現状のようである。
生活道路対策の歴史
警察庁では、1972年 (昭和47)から「スクールゾーン」「シルバー・ゾーン」などと試行を重ね、1996年 (平成8)には「コミュニティ・ゾーン」を設定した。このときに標識令も改正し、既出の四角の標識を定義した。
コミュニティ・ゾーンは、日常生活圏や小学校区等、地区としてまとまりのある、概ね25ha~50haの範囲において、交通規制(最高速度30km/hの区域規制、車両通行禁止規制等)、道路整備(ハンプ、狭さく、歩道等の整備)を組み合わせた対策であったが、ゾーンの面積基準が広く、ゾーンの設定や、必須とされた道路整備に係る予算措置が困難であることが多く、全国的な普及に至らなかった。
このため、2011年 (平成23) 歩行者等の通行が優先され、通過交通が限りなく抑制されるべき地区を面積にかかわりなく、柔軟に「ゾーン30」として設定することとし、必須条件は最高速度30km/hの区域規制のみとして、他の整備は「選択的対策」として設定のハードルを下げることとした。選択的対策には、ゾーン入口にシンボルマーク看板や路面標示の設置、車両通行禁止や一方通行などの交通規制の実施、ハンプや狭さく等の物理的設備の設置、路側帯の整備・拡幅、車道中央線の抹消などが含まれる。
この結果、施策の実施開始の7年後の2018年 (平成30)には、全国で約3,400箇所がゾーン30に指定されるようになった。しかし、選択的対策のうち実際に実施率が高かったのは、路面表示の施策のみ (約80%)であり、他の実施率は軒並み20%未満に留まった。このため、ゾーン30の必須規制に加えて、物理的設備との適切な組合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域を「ゾーン30プラス」として設定する試みを2021年 (令和3) 8月より開始した。2022年 (令和4) 8月現在、ゾーン30プラスを実施した地区は全国で14地区となっている。2023年度 (令和5) 末現在、ゾーン30の整備箇所は全国で4,358箇所となった。
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