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髪も爪も当店でケアします!美容室が立案した経営革新計画に基づく新規事業

1.同店の状況


 同店は、創業してから30年近く営業しており、多くの常連客に支えられていたものの、新型コロナウイルス感染症の拡大によって客数が低下してまいました。さらに、代表者の体力の衰えが目立つようになり、事業承継を考えるようになりました。

 そこで、代表者の娘と孫が入店することになりましたが、これを機にネイルサービスを導入することで、客単価の向上を目指しました

「美容室でネイルもできるんだってさ」

 近年、顧客ニーズの多様化と競争激化が進む現代社会において、ワンストップサービスは重要な戦略となっています。

 ワンストップサービスとは、顧客が必要とする複数の商品やサービスを一つの窓口でまとめて提供するサービスです。美容室が髪だけでなく、爪のケアも提供することは、ワンストップサービスと言えます。これにより、顧客は以下のようなメリットを得ることができます。

  • 利便性の向上:複数の店舗に行く必要がなくなり、時間と手間を節約できる。

  • ストレスの軽減:複雑な手続きや問い合わせを何度も行う必要がなくなり、ストレスを軽減できる。

  • 満足度の向上:一貫したサービスを受けることで、顧客満足度が向上する。

 同店はこのようなメリットのあるワンストップサービスの展開を検討しましたが、ネイルサービスを提供するには、店舗改装が必要であることが分かりました。

2.経営革新計画の策定

 店舗改装をするためには、当然のことながら改装資金が必要です。また、新サービスを立ち上げたことを広く訴求する必要もあり、これについても資金が必要と考えました。

 そこで同店は、市役所が実施する経営相談を活用することにしました。この経営相談を担当した専門家に提案されたのが、経営革新計画の策定です。

「役所さ相談に来たのさ」

 経営革新計画とは、新事業活動に取り組むことで経営の飛躍的向上を目指す中長期的な経営計画です。この新事業活動には、以下のいずれかが該当します。

  • 新商品の開発・生産

  • 新サービスの開発・提供

  • 商品・サービスの新たな生産・販売方式の導入

  • サービスの新たな提供方式の導入

  • その他、従来とは異なる新たな事業活動

 従来の事業とは別に、独創性や革新性のある事業に挑戦することで、従来の事業も伸びるといった相乗効果を検討することがポイントです。

 同店の場合は、以下の相乗効果を狙いました。

  • 客数の向上:爪のケアを目的とした顧客が増えれば、トータル的な客数が増加します。

  • 客単価の向上:髪のケアをする既存顧客が爪のケアもしてくれたり、爪のケアで利用してくださる顧客が髪のケアもしてくれるようになったりすると客単価が上昇します。

 このような狙いを持って作製した経営革新計画に対して、行政は以下の支援策を用意しています。

3.経営革新計画のメリット

 経営革新計画を策定し、都道府県の承認を受けることで、以下のメリットが得られます。

  • 低利融資の活用:金融機関の低利融資の審査を受けることができ、有利な資金調達が可能になります。

  • 販路開拓支援:新たな販路開拓のための情報提供や展示会への出展支援など、行政機関によるサポートを受けられます。

  • 補助金の採択可能性の向上:補助金に採択される可能性が上がり、さらに資金調達を支援してくれます。

「色んだメリットがあるのさね」

 同店は、市役所の窓口相談で専門家との面談を重ね、この経営革新計画を策定しました。これにより、以下の成果が見られました。

4.経営革新計画策定の成果

 同店は、経営革新計画を策定したことにより、以下の内容が明確になりました。

  • 自店の強み、弱み

  • 競合動向

  • 自店が抱える経営課題

  • 店舗改装の具体的内容と費用

  • ネイルサービスのメニュー構成

  • 具体的な営業活動と活用する販促物

  • 向こう3年間の売上・利益と資金繰りの見込み

  • 具体的な行動計画

「色んだことが明確になったっきゃね」

 同店が策定した経営革新計画は、都道府県の審査を通過し、知事名が入った承認書を手にすることが出来ました。また、その内容をもとに補助金用の計画書も作成し、申請したところ採択となり、店舗改装やマーケティングの費用の一部を調達することが出来ました。

5.まとめ

 今回の事例は、長年美容室を経営してきた店舗が新たなサービスを導入し、経営革新計画を策定することで、事業の飛躍的な向上を目指した事例です。ワンストップサービスの導入と経営革新計画の策定により、多くのメリットを享受し、顧客満足度と経営の安定を実現しました。

 企業の成長と発展のために、独創性と革新性を持った新事業に挑戦し、経営革新計画を活用することをおすすめします。新規事業のアイデアが湧かない場合は、市区町村役場や地元商工会・商工会議所の経営相談を活用しましょう。

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