若年労働力を確保するための建設機器導入で経営革新計画を策定した土木建設会社の事例
1.はじめに
1997年から2012年頃までに生まれた世代はZ世代と呼ばれますが、この世代の特徴として、環境問題への意識が高いことが挙げられます。企業は若年労働力を確保するために、このようなZ世代のニーズを踏まえることが重要になっています。
この記事では、土木建設会社がZ世代の若者の入社促進を目的として360度旋回キャリアダンプを導入し、経営革新計画として認定を受けた事例を紹介します。
2.Z世代の環境意識
マーケティングやリサーチを手掛ける株式会社IDEATECHが、2023年2月7日~同年2月13日に実施した調査によると、Z世代の62.2%が環境問題に対して危機意識を持っていることがわかりました。
特に「気候変動」(63.2%)、「CO2の排出問題」(56.3%)、「森林破壊」(48.3%)などに危機意識を持っています。
また、環境、社会、経済の3つの側面において、将来世代が現在の繁栄を享受し続けることができるような状態をサステナビリティ(Sustainability)と呼びますが、2020年に発表されたアメリカの「サステナブル消費調査」によると、Z世代の62%がサステナブルブランドの商品を選びたいと回答しました。
これに対してベビーブーム世代(1946年~1964年生まれ)は、同様の解答をした割合が39%であり、大きな差が見られました。
3.設備投資による効果の訴求
このようなZ世代の若者の入社を促進するべく、土木建設業を営むある企業は、従来のダンプトラックとは異なり、運転席が360度回転するキャリアダンプを導入することとしました。そして、このことにより、以下の効果が見込めることをホームページやSNSで訴求しました。
(1)ワークライフバランス
360度旋回キャリアダンプは、方向転換の必要がなく、従来のダンプトラックよりも操作が容易で、熟練の技術がなくても操作が可能です。よって、オペレーターの負担を軽減し、効率的な工事を行うことが可能です。このことは、長時間労働や過度なストレスを避け、ワークライフバランスを重視するZ世代のニーズに合致しています。
(2)環境への配慮
360度旋回キャリアダンプは、上記のとおり効率的な工事が可能であることから、燃料消費量を削減し、CO2排出量を低減することができます。このことは、環境にやさしい働き方を重視するZ世代のニーズに合致しています。
4.経営革新計画の策定
同社はこのような取組みを経営革新計画としてまとめました。経営革新計画は、中小企業が「新事業活動」に取り組むための、中期的な経営計画書です。新事業活動には、新商品の開発、新サービスの提供、新たな販売方法の導入などが含まれます。
経営革新計画を策定し、都道府県の審査を経て認定を受けることで、以下のメリットを得ることができます。
低利融資や補助金の優遇措置
税制優遇
公的機関によるマッチング支援
商工会や商工会議所では、経営革新計画の作成を支援する専門家派遣制度を設けています。この制度を利用すれば、無料で専門家のアドバイスを受けることができ、より質の高い経営革新計画を作成することができます。同社はこの制度を活用し、経営革新計画の承認を受けました。
これによって、人材を募集する際に、同社の取組みが都道府県知事から認められていることを訴求できます。
5.まとめ
本記事では、土木建設会社がZ世代の若者の入社促進を目的として360度旋回キャリアダンプを導入し、経営革新計画として認定を受けた事例を紹介しました。
この事例を通して、以下の点が浮き彫りになりました。
Z世代は環境問題への意識が高く、社会貢献できる仕事を求めている。
360度旋回キャリアダンプは、作業効率、安全性、環境性能を向上させるだけでなく、Z世代が持つニーズを満たす機材である。
経営革新計画は、中小企業が新たな事業に挑戦し、成長を目指すための強力なツールである。
商工会や商工会議所の専門家派遣制度を活用すれば、無料で専門家のアドバイスを受けることができ、より質の高い経営革新計画を作成することができる。
360度旋回キャリアダンプの導入は、単なる機材導入にとどまらず、Z世代のニーズを捉えた企業改革と社会貢献の実現という、二重の成果をもたらしました。
この事例は、経営革新計画を活用し、Z世代の力を結集することで、持続可能な成長を目指すことが期待できると言えるでしょう。
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