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【新規事業が失敗する3つの理由】経営革新計画支援200件超の中小企業診断士が事例で解説

1.新規事業の立案に費やした手間を無駄にしないために


 既存事業の行き詰まり感を打破するために、新規事業を立ち上げようとする事業者は多いはずです。しかし、計画した新規事業が立ち上がらなかったり、立ち上げても上手くいかなかったりするケースもあります。

 そのようなケースは理由がありますので、それを事前に知っておけば、新規事業で収益を上げる可能性を高めることができます。

 そこで、この記事では新規事業が失敗する理由を3点挙げますが、私がそのようなテーマでこの記事を書く背景を述べた上で、本題に入っていきます。

2.新規事業が失敗する理由を述べる背景

 新規事業の立上げは、行政も支援しています。その支援策のひとつである「経営革新計画」は、新規事業の内容を計画書に落とし込んだものです。この計画が都道府県の審査を通過すると、低利融資制度の審査を受けることが出来たり、補助金の審査で有利になったりするといったメリットがあります。

 この取組みは47都道府県で実施されていますが、各地域で力の入れ具合には差があり、例えば、埼玉県は年間で1,000を超える経営革新計画の承認が出ている反面、一桁の承認に留まる県もあります。なお、埼玉県の経営革新計画策定に関するリンクは以下となります。

 私は、これまで商工会や商工会議所など商工団体からの要請を受け、200を超える経営革新計画の策定支援に携わってきました。その中には、作成した経営革新計画に基づき、新規事業を立ち上げ、大きく業績を伸ばしたケースも多数あります。その反面、経営革新計画を作成しただけで、新規事業が立ち上がらなかったケースや、早々に頓挫してしまったケースもあります。

 このような事例を見てきたことから、失敗しない新規事業の立上げに役立てていただくために、新規事業が失敗する代表的な理由を3点述べることとしました。

3.新規事業が失敗する3つの理由

(1)目の前の利益だけを見ているから

 ある企業は、売上のほとんどを元請けからの発注に依存しており、収益性の低さが悩みの種でした。そこで、下請けから脱却するべく、自社がユーザーから直接受注できる新規事業を立ち上げようと考え、地元の商工会議所へ相談に行き、経営革新計画を作成することとしました。

 同社は、商工会議所を通じた支援を受けながら、経営革新計画のテーマとなる新規事業について、アイデア出しから取組みましたが、新規事業は立ち上がることはありませんでした。

 その理由は、既存事業である下請けの仕事が忙しくなったためでした。この場合、下請けから脱却して収益性の向上を図るという同社の経営課題は、解決されません。

 このように、目の前の利益だけに目が向き、中長期的な視点で事業を考えることが出来ない場合は、目の前の既存事業が忙しくなると、新規事業を立ち上げることができません。

 また、新規事業を立ち上げたとしても、すぐに利益をが出ないと投げ出してしまうことが想定でき、失敗してしまう可能性が高いと言えます。

(2)「とりあえず感」を持っているから

 ある事業者は、顧客数をいかに増加させるかという経営課題を抱えていました。そこで、この事業者が会員となっている地元の商工会を通じて、無料の専門家派遣制度を利用し、経営革新計画を作成しました。

 その内容は、複数の媒体における整合性を取りながら情報発信をするという取組みでした。しかし、その新規事業が立ち上げることはありませんでした。その理由は、情報を発信する手間が大きく手が回らないからというものでした。

 ですが、情報発信にある程度の手間がかかることは、計画策定時点で予想できたはずです。経営革新計画の策定は一般的に20万円程度のコンサル料がかかりますが、同店は地元商工会の専門家派遣制度を活用したため、費用負担が発生しませんでした。

 よって、無料だからとりあえず経営革新計画を作成する、というスタンスがこの結果を招いてしまったと想定できます。このことは、無償で商工団体がご支援する際の課題とも言えるでしょう。

(3)既存事業との相乗効果がないから

 ある小売店は、相次ぐ競合の進出によって業績が厳しくなり、新規事業を見出すために地元の商工会に相談しました。同店は、当商工会を通じて、小売業から卸売業への進出というテーマで経営革新計画を作成しました。

 ですが、この新事業は早々に頓挫してしまいました。その理由のひとつとして挙げられるのが、新規事業に既存事業との相乗効果がないというものです。

 小売業として「既存の顧客に新規の製品を売る」、もしくは「新規の顧客に既存の製品を売る」など、既存事業と新規事業を組み合わせることで相乗効果が生まれ、円滑な新規事業が展開しやすくなります。

 これに対して、既存事業と完全に切り離された新規事業を展開することは、全くのゼロからスタートとなり、事業を軌道に乗せるために大きな労力がかかりがちです。そのため、事業がとん挫しやすくなると言えるでしょう。

4.新規事業が失敗する3つの理由のまとめ

 新規事業の立ち上げは、既存事業の停滞感を打破するための重要なステップですが、失敗する理由を事前に把握しておくことが成功への鍵です。

 新規事業が失敗する代表的な理由は、目の前の利益だけを見ているから、「とりあえず感」を持っているから、既存事業との相乗効果がないから、の3点です。これらのポイントを踏まえ、事前に綿密な計画とリソース配分を行うことで、新規事業の成功確率を高めることができます。

 経営革新計画を活用することで、行政の支援を受けながら新規事業を計画的に進めることが可能ですが、これらの理由を意識して、成功の可能性を高めていきましょう。

 なお、成功する新規事業のための具体的なアドバイスやご支援が必要な場合は、以下のリンクからお問い合わせください。弊社ホームページのお問い合わせフォームに移動します。

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