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喫茶店の情報発信をテーマにした経営革新計画の事例

1.同店の現状


 今回ご紹介する喫茶店は、昔ながらの純喫茶と呼ばれる業態であり、創業40年以上が経過しました。現在は後継者が主軸となって店舗を運営しています。コーヒーの専門性が高く、店頭やネット通販でコーヒー豆を販売するほか、コーヒーに関するセミナーの講師を務めたり、イベントを主催したりしています。

「今回は喫茶店の事例なんだっきゃ」

 半面、店舗の老朽化が進んでおり、改装の必要に迫られているほか、保有する専門性を広く訴求できておらず、知名度が高くないという弱みがありました。

 外部環境に目を転じると、テレワークが普及し、外出途中に喫茶店でコーヒーを飲む機会が減り、自宅でおいしいコーヒーを飲みたいというニーズが高まっていました。また、大手チェーン店の進出により、純喫茶離れが進んでいるという脅威もありました。

 そのような状況の中、同店の後継者は、経営をより盤石にしたいとの思いから、地元の商工会へ相談に行ったところ、経営革新計画の策定を勧められました。経営革新計画については以下のリンクをご参照ください。

2.同店の経営革新計画の内容

 同店は、商工会から派遣された専門家と面談を重ねる中、強みであるコーヒーの専門性をより広く訴求するとともに、同店の主軸となっている後継者の人となりを伝えて、来店を促進させることとしました。そのために、戦略的な情報発信をテーマにした経営革新計画を策定することとしました。

 ここでいう「戦略的な情報発信」とは、やみくもにネットで情報を発信するのではなく、ネットで発信する情報の性質を区分けし、適切な媒体で発信することを指します。

3.ネットで発信される情報の種類

 ネットで発信する情報には、フロー型情報とストック型情報があります。

(1)フロー型情報

 フロー型情報とは、時間とともに変化し、流されていく新鮮な情報です。近況報告として活用でき、SNS投稿などが該当します。同店が発信する具体的なフロー型情報としては、以下が挙げられます。

  • 店舗の様子

  • 本日のお勧めコーヒー

  • 前月における売れ筋のコーヒー豆の名称、価格帯、購買量

  • それぞれのコーヒー豆に対する顧客の感想

  • ご注文いただいた際の納期

  • ブログ更新のお知らせ など

 読み手としては、このような情報を見ることで、同店の状況を把握することが出来ます。

「フロー型情報は川の水のようにどんどん流されていく情報だんず」

(2)ストック型情報

 ストック型情報とは、一度作成されると基本的には変化せず、長期間にわたって参照することが出来る情報です。専門性のアピールができ、ブログ記事などが該当します。同店が発信する具体的なストック型情報としては以下が挙げられます。

  • 前月の売れ筋ベスト5のコーヒー豆それぞれの特徴

  • 「Yahoo!知恵袋」や「教えて!goo」などの質問掲示板に寄せられたコーヒー豆に関する質問に対する回答

  • 自店や他店のブログ記事のリライト記事

  • Yahoo!ニュースのコメントランキングから得た時事ネタにコーヒー豆を絡めた記事 など

 このような情報を発信し、コーヒーに関する課題を解決するためにネットで検索した方の検索ワードにヒットすれば、上位に表示されることとなり、同店の専門性をアピールすることが可能になります。

「ストック型情報は、ネット上にどんどん貯まっていく情報だのさ」

4.まとめ

 同店は、このような情報発信戦略を商工会から派遣された専門家とともに、経営革新計画にまとめました。その後、都道府県の審査を通過し、同店の経営革新計画は都道府県知事から承認されました。

 同店の経営革新計画は、コーヒーの高い専門性を活かし、戦略的な情報発信を通じて、既存顧客の来店頻度向上と新規顧客の開拓を目指しています。これにより、老舗の伝統と革新が融合した持続可能なビジネスモデルが構築され、今後の発展が期待できると言えるでしょう。

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