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【人材確保の方法】目的・目標・手段の切り分けと共通目的の重要性

1.人材確保と定着率


 人手不足に悩む多くの企業にとって、新規採用は喫緊の課題です。しかし、採用した人材が定着し、組織の一員として活躍することが真の解決策と言えるでしょう。

 つまり、人材が定着する職場こそが、真の意味で人材を確保できていると言えるのではないでしょうか。なぜなら、定着率が低いということは、採用活動が継続的に必要となり、結果的に人手不足の状態が慢性化してしまうからです。

 人材が定着する職場とは、いわば「組織」として機能している職場です。組織とは、共通の目的のもと、個々の能力を結集し、より大きな成果を生み出す集団です。経営学の大家バーナードは、組織の成立条件として、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションを挙げています。

 この記事では、このうち「共通目的」に焦点を当て、共通目的がいかに重要であるか、そして、共通目的を効果的に設定するためにどのような点に注意すべきかについて解説していきます。

2.私が人材確保の方法を述べる理由

 私は21年間、ガソリンスタンドの運営会社に勤務しました。そのうち13年間は店長を務め、人材の採用・育成・定着について深く関わり、成果を挙げてきました。

 店長として任命された当時、私が直面した課題は人材の定着率が非常に低かったことでした。年間70人以上のスタッフに退職されたこともあり、厳しい状況を経験しました。ですが、中小企業診断士の資格取得のための勉強が功を奏し、人材の定着率を劇的に改善することに成功しました。

「ガソリンスタンドの現場経験が長かった」

 最終的には、学生のアルバイトスタッフが卒業後も当社に入社したいと希望する店舗を構築することができました。

 現在は中小企業診断士の資格を取得し、経営コンサルティングを生業としていますが、多くの中小企業が人手不足に喘いでいることから、私の経験に基づいた人材定着の方法を多くの方々にシェアしたいと考え、記事にしました。

3.目的・目標・手段の違い

 目的・目標・手段は混同されやすいため、共通目的を考えるにあたり、これらを切り分ける必要があります。

  • 目的は、達成したい最終的な状態や理想です。

  • 目標は、目的に近づくために設定する具体的な数値や期限です。

  • 手段は、目標を達成するために行う具体的な行動や方法です。

 これらの違いは、以下のように説明することができます。

4.帰省における目的、目標、手段の例

 私は青森県青森市出身で、お盆期間に現在住んでいる埼玉から実家のある青森へ、高速道路を利用して帰省していた時期がありました。

 埼玉から青森までは約800kmあり、渋滞の影響で片道12時間ほどかかることもありますが、各地のサービスエリアでさまざまな美味しいものを楽しめる魅力があります。

「ご当地グルメを楽しむのであった」

 埼玉から東北自動車道で青森に向かうと、群馬、栃木、福島、宮城、岩手、秋田を経由することになります。群馬では「上州牛丼」、栃木では「宇都宮餃子」、福島では「いかにんじん」、宮城では「牛タン」、岩手では「わんこそば」、秋田では「きりたんぽ」など、どれも一度は味わいたい絶品ばかりです。

 そして、青森に出発する前には車の整備をしてもらい、乗り物酔いの薬を準備します。また、朝早く出発するため、前日は早めに就寝します。

 このように、目的地である青森に到着することが「目的」であり、道中の群馬、栃木、福島、宮城、岩手、秋田を安全に通過することが「目標」にあたります。そして、安全かつ快適に各目標地点に到達するために行う整備や薬の準備、十分な睡眠といった行動が「手段」です。この考え方を職場に当てはめてみます。

5.共通目的がない職場とは

 自社の目的がないということは、目指す方向が分からないということです。仮に目指す方向があったとしても、職場で共有していない従業員にとっては、方向が分かりません。

 初めてガソリンスタンドの店長を担った時に、私は接客マニュアルを作成し、徹底しました。部下が少しでも間違うと再度練習をさせました。これにより、全スタッフが同じセリフ、同じ動作で接客をすることが出来るようになりましたが、多くの退職者を出すこととなりました。

「マニュアル接客を徹底した」

 マニュアルの徹底は目標達成のための手段です。しかし、当時の私はマニュアルの徹底が目的となっており、真に目指すべき目的を見失っていました。結果として、スタッフがなぜその業務を行うのか、その意味や価値を共有することができず、彼らのモチベーションを低下させてしまいました。

 共通目的がしっかりと設定され、全員に理解されていれば、スタッフは自分の役割や仕事の意義を感じることができ、組織としての一体感が生まれます。そのため、共通目的を設定し、それを明確に伝えることが組織運営において極めて重要です。

6.【人材確保の方法】目的・目標・手段の切り分けと共通目的の重要性のまとめ

 人材を確保し、定着させるためには、職場の目的を全員で共有することが不可欠です。目的が明確であれば、目標や手段も一貫性を持ち、全員が同じ方向に向かって進むことができます。私自身の経験からも、共通目的がない職場では、いかに手段を徹底しても人材は定着せず、組織としての力を発揮することが難しいことを痛感しました。

 目的・目標・手段を正しく切り分け、それぞれの役割を明確にすることで、組織全体が活気に満ち、定着率の高い職場を作り上げることができるのです。これこそが、真の人材確保の第一歩であり、企業の持続的な成長を支える基盤となるでしょう。

 なお、人材確保に課題を抱える企業の個別相談を受け付けています。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。

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