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土木:史跡太閤堤(京都府宇治市)

戦国時代、宇治川の治水のために豊臣秀吉が築かせた石積みの護岸や水制工の跡が出土して、史跡として保存されている。太閤堤と言うと巨椋池の中に作られた土手道の方を思い出してしまうが、宇治でも太閤堤と呼ばれている。
水流が直接堤防に当たらないようにするために、突起状の「石出し(石刎)」や護岸に棒杭を立てた「杭出し」といった水制工が見られるのが特長である。

杭出し

石出し

自然の段丘にも石出しを取り付けている。どうしてこんなことをしているかと言うと、石出しは単体で機能するのではなくて、いくつも連ねることで徐々に水流の向きを変えていくように効果を発揮するからである。

写真の石積みは史跡公園として整備されたもので、強化プラスチック製のガワに石を張り付けてある。いわばハリボテの模造品。出土した本物の太閤堤はこの下1~2mの位置に埋め戻して保存してある。

いくつもの石出しが並んでどんなふうに働くかと言うと、それは航空写真を見るとわかりやすい。青色で石出しが誘導しようとしている水流の動きを描き込んでみた。水流を川の中央に押し戻そう押し戻そうとしている様子がわかる。

石出しは、豊臣秀吉の頃の古い技法ではなく、実は今も使われている治水技法である。日本各地の河川で見ることができる。


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