子どもに嫌われるための哲学~"同じ"ってなんだ?~
先生:それでは今日の授業を終わりにします。be動詞を使った例文を5つ作るのが宿題ですよ。みなさん忘れないようにしてくださいね。
生徒:先生!!質問があります!be動詞の形は「A is B」、つまり「A=B」「AはBと同じ」という説明でしたが、AとBはどう考えても別物ですよね。例えば、「He is kind.」という文章は「He=kind」、つまり、「彼=やさしい」、つまり、「彼はやさしいと同じ」となりますが、さすがに強引すぎではないですか?
先生:たしかにその説明は強引でしたね。得てしてシンプルな説明の方が生徒ウケがいいのでそうしているのです。では「He is columnist」はどうですか?
生徒:彼はコラムニストではありますが、「彼はコラムニストと同じ」というのはしっくりきませんね。彼は一人しかいませんが、コラムニストは世の中にたくさんいますし、さすがに同じものとは言えないのではないですか?
先生:では、「He is Matsuko」はどうですか?
生徒:たしかに「彼はマツコと同じ」は成り立つような気がします。あそこにいる人はマツコというという一人の人物ですから。でもでも、「彼」と「マツコ」は別の意味ですよね。厳密には同じとは言えないですよ。
先生:ではあなたは、「Matsuko is Matsuko」しか認めないということですね。「A=A」だけしか。
生徒:そうですね。それが正しいと思います。
先生:では、何か意味のある文章を作ってみてください。
生徒:マツコはマツコ。
先生:それって言う意味がありますか?
生徒:ないですね。
先生:何かを言うときは、異なる意味の言葉を結び付けないといけません。すると、厳密な意味で「同じ」という言葉を運用できないことになります。「同じ」という言葉を使うときは、A=Bのように、それぞれが異なる意味ではなくてはいけないのです。「同じ」なのに「違う」のです。不思議ですね。
生徒:でも、なんでそんなことになっているのですか?
先生:言葉の基本ルールは他にもありますが、実は人が示し合わせて作ったものではないのです。気づけばそのようにルールがあった、というだけなのです。だから、それ以上理由を求めることはできないのです。私たちはそのルールに従うことしかできない生き物なのですよ。
生徒:そんなの納得できません。
先生:では、納得できるように新しいルールを作り上げてみてください。
生徒:あs;えおいぼえごいじょえあskだlv
先生:どういう意味ですか?
生徒:朝ご飯もう食べたー?、という意味です。
先生:なるほど、よくわかりました。
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