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大学2年の夏、バイト帰りに川でひろったヨルダン人を2泊3日家に泊めてやった話②

続き


 普通そんなことを言われたら、皆はどういう反応をするのだろうか。またどんな反応が正解なのだろうか。




自分はというと



OKを出した。



今思えば、完全に間違った選択肢だった。数多ある選択肢の中で唯一の間違いである。なぜ僕がこんな答えを出したのか、実は自分が一番よく分かっている。


ーーー彼と出会う3日前、私は2週間のフィリピン超短期留学から帰ってきていた。たかが2週間。されど2週間。たかがフィリピン。されどフィリピン。僕は帰ってきてすぐ行った居酒屋で、料理を持ってきてくれた店員さんに対し、”Thanks”とほざけられる位には、体に外国が染み込んでいた。生来のお人よしと体内の外国かぶれ成分が化学反応を起こした結果、あの時のOKが生まれたのだ。

そこからの話の展開は早かった。当日の宿泊キャンセルは難しいとのことで、サイードは次の日の昼にゲストハウスの前で待っているので迎えに来てくれと言う。またもOKを出す自分。ラインを交換して連絡先をゲットしてその日は別れ、約束通り次の日に迎えに行き、自分の家まで連れてきた。


しかしここで問題が発生する。サイードを家まで連れてきた直後、美容院で散髪の予約が迫っていた。知らねぇ外国人を家に残して1時間ほど家を開けることになる。さすがに焦った。しかし髪は切りたかったし、「知らない外国人が家に来たので散髪キャンセル」という訳の分からん事実を作るのにも腹が立つので、よほどの貴重品(パスポートや財布、携帯)はこっそりと身につけてお留守番を頼むことにした。

散髪中も気が気でない。切ってくれているお兄さんに状況を話すが、理解に苦しんでいる。何度も説明しているが、何故結局家に泊まることになったのかが分からないらしい。そんなこと今となっては自分だって分からん。あの時の自分がいかれていたのだ。

散髪が終わり、自転車をかっ飛ばして家に帰宅した。「いきなり居なくなってたりしないかな。」とささやかな希望を胸にしながら玄関のドアを開けたが、彼の靴がある。残念。いるじゃん。サイードと名を呼ぶが返事がない。寝てるのかなと思いつつ、ワンルームへのドアを開けてみた。




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…………………........................???

............サイード.........................???



なにやらボソボソと呟いてる。また、何度も手を床について礼をしている。ははぁなるほど。そういえばこいつぁヨルダン人。イスラム教信者じゃないか。ということはメッカの方向に向かって礼拝をしてるわけね。合点合点。

しばらくやっていたので邪魔しないように廊下で様子を見ていた。はじめての”生礼拝”だったので少し嬉しかった。


しかし問題は依然山積みである。その日の夜、自分は外食の約束があった。ということは、である。またもこいつにお留守番を頼まなければならない。

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