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大学2年の夏、バイト帰りに川でひろったヨルダン人を2泊3日家に泊めてやった話⑤

続き


屋上でタバコを吸いながら、サイードは自分たちに感謝の気持ちをこれでもかと伝えてきた。自分も、今夜が最後であることでだいぶ心が広くなっていたため、素直にその気持ちを受け取った。


アリガトウ   本当ニアリガトウ

コンナニ 優シクサレルノハ 初メテダヨ!

イツカキット  ヨルダンニモキテネ

ワタシガナンデモ ツレテクヨ!



(ふふ、サイード)

(最初は無愛想で申し訳なかったね)

(君がちゃんと帰れるのが僕も嬉しいよ)

(ちなみにヨルダンにはいかないよ。怖いし)



日本ハ 本当ニ イイ国ダッタナァ

ダッテ 女ノ子ガ スッゴク可愛イカラネ


アー デモ

ヨルダンニ帰ッタラ 日本人イナイヨナア





..................................???

不穏な空気が流れたのを、僕と先輩は敏感に察した。





僕ヨルダンニイタトキ 〇〇ッテイウ

メールデ日本人女性探シタヨ






出会い系である。

しかも使っていたのは一つじゃないらしい。







デモ 僕ハ クレジットカードガ 作レナクテ

タマタマヨルダンニ居タ 日本人ノ友達ニ

カードヲ借リテ 登録シタンダァ

ダケド ソノ人モ 今ハ 居ナインダヨナァ









ヤバイ。これはヤバイぞ。 









ネェ 君達ノ クレジットカード 貸シテヨ







よぉしそぉら来た!!!!!!!!!!

やっぱヤッベェ奴だっただろ!!!!!

ここまで特に害無くきたがそいつもここまでだなぁ!!!!!!!!!!!!!あ!?!!!!






金ハ 後デ 日本ニ 郵送スルカラ

絶対返スカラ クレジット 貸シテヨゥ

本当ニ 本当ニ オ願イダヨゥ







ゲームセットである。

自分と先輩は必死にそれは無理だということを伝える。しかし食い下がるサイード。

「クレジットカードってのは、そういう風に扱っていいものじゃない。」

「出会い系で出会った嫁に虐められたんだろ?なら別のちゃんとした方法で次の人を見つけないとまた同じことになるかもしれないぞ。」


とにかく諦めさせるように説得を試みたが、最後までサイードは腑に落ちないようであった。3人の間には、なんとも言えない微妙な雰囲気が流れていた。


夜も更け、先輩はもう帰らなければいけない。こんな状況で2人にされるのはかなり心配だったが、サイードもだいぶ落ち着いたので解散することにした。

部屋に戻るサイードと自分。自分のリュックに手を伸ばすサイード。なんと彼は最後の夜に感謝の印として、自分の靴と服、ズボンを自分にくれるというのだ。

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正直どれもいらなかった。靴は紐が切れていたのを固く結び直して補修されていた。

これは...........荷物処理では.............?


いや違う。もう何かを考えるのはやめよう。

全てを快く受け取って、その日も同じ屋根の下、床に就くこととなった。寝る前にしていた礼拝の向きがまた今までと違っていたが、もう何も感じることはなかった。


→⑥





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