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Dream Guest 『三人目』

「わたしは魔法を解きにいく!」


「わたしはファンタジーに興味がありません」
ディズニー映画も観たことがないという今回のゲスト。
それでも彼女はディズニーリゾートへと足を運ぶんです。
夢の国で彼女は何を見て、何を思っているのでしょうか。
ディズニーの凄さを改めてわからせてくれたゲスト。

読めばきっとあたなも理解できる・・・



・女性
・三十代
・1回/年(ランド:シー=5:5)



「ミッキーはびっくり」




夏は海賊を求めシーへ。
秋はハロウィンを見たくてランドへ。

好きなアトラクションはランドの『白雪姫』にシーの『ソアリン』

こうして今回のゲストとのインタビューは至って順調に進んでいきました。

「ありがとうございます。では次の質問です。ゲストさんは”好きな時間帯”ってありますか?よろしければその理由も一緒にお願いします。」

「時間帯ですか?うーんと、そうですねぇ・・・お昼頃ですかね。」

「それはどうしてですか?」

「どうして・・・1日の終わりが見えるからです。」


「なるほど・・・わかりました。」
ぼくは彼女の理由に少し違和感を覚えました。


「ありがとうございます。では次です。あなたの好きなディズニー映画を教えてください。これはピクサーも含めていいですし、できれば『美女と野獣』などでしたらアニメか実写かも教えてください。」

「好きなディズニー映画・・・わたしディズニー観たことないんですよね。」

「えっ!?一度もですか?」

「はい。わたし”ファンタジーに興味がないんですよ”」


この瞬間ぼくは、このゲストはぼくの想像できる範囲を超えた何かをディズニーに求めていらっしゃる!
と確信しました。


このマガジンの自己紹介の記事でも書いていますが、ぼくは特別ディズニーに詳しいという者ではありません。
むしろほとんど知らないと言っても過言ではないほどのライターが、ディズニーの脚本を書いてみたいと思ったところから始まったのがこのマガジンなんです。

そんなぼくは、ディズニーを愛し求めている人たちは、日頃の現実から逃避し、疲れた精神を癒し、童心に返ってもう一度自分を見つめ直したり、笑顔の裏にある気心をまた元気にするための、いわゆる


『魔法にかかるために』


訪れているのだと勝手に思い込み決めつけていました。

しかし、このゲストは違いました。

彼女の口から出てくる言葉の多くは、まるで自分にかかっている何かの魔法を”解こうとしている”ようにさえ聞こえてくるんです。


「好きな食べ物」や「好きなグッズ」も特になく、
「今まで見てきたショーで好きだった題材」のものもなく、
「忘れられない思い出」にも”ない”と回答されました。


「・・・やっぱり少し変ですかね。」

「いえ・・・まあ、ちょっとぼくの中にはなかった回答なので驚いてはいますね。」

「うーん。そうですよねえ。こんなのでもいいんですか?」

「もちろんです!むしろ面白いですし、もっといろいろ聞いてみたいです!ゲストさんのような方の意見はとても大事です!!」


すべて再現できているわけではありませんが、こういった内容の会話をしたような気がします。


もしかしたらこれを読んでくださっている方の中にも、初めのぼくと同じように少し驚かれた方もいるかもしれません。

ですが、こういった思いで同じようにあの夢の国へ足を運んでいるゲストがいるということは、それはそのままディズニーリゾートの凄さと懐の深さを表しているんじゃないかとぼくは感じました。


誰もが現実から目を背けることを目的にディズニーを求め、そしてディズニーもまたその後押し手助けをしてくれる。
どうやらそれだけではないみたいです。

『三人目』の今回のゲスト。
彼女が求めているものは一体何なのでしょうか。


白雪姫3

今回のゲストの好きなアトラクション『白雪姫』です。
1枚目の写真やこの写真のような、”現実にはない塗装”を見ると非現実感を感じられるそうです。
そこに何かヒントが隠されている・・・?


ディズニーランドホテル2

こちらの『ディズニーランドホテル』も彼女の好きな景色の一つです。
やはり現実にはない色合いの塗装ですね。
このホテルを見るとテンションが上がる人も多いのでは?



キャンプウッドチャック3

「昔からそうでした」

「わたしはここに”人を見に来ている!”」




「りあるを求めて」



上の写真は現在ランドのウエスタンランドにある「キャンプ・ウッドチャック・キッチン」というレストランです。

この「キャンプ・ウッドチャック」という場所では、あの「ドナルド」や「デイジー」とのグリーティングを楽しむことができる施設があったり、アメリカ河を臨むゆっくりできる穴場なんだそうです。


「今はもう別の名前のレストランになってしまってるんですけど。」


そう語る彼女。
みなさんは『ラッキー・ナゲット・カフェ』というレストランがあったことを知っていますか?

実は、今現在「キャンプ・ウッドチャック・キッチン」があった場所には、その昔別の「ラッキー・ナゲット・カフェ」というレストランがあったらしいんです。


「好きな場所はありますか?」


という質問に、このレストランが好きだったと答えてくださいました。

理由は、パークが混んでいても空いている穴場的なレストランだったから。
そして、今でも売ってあるそうですが、誰もが行けば必ず食べたくなるあの「スモークターキーレッグチキン」が並ばずに買えるからだそうです。

これ知ってました?
てっきりワゴンに並ばないと手に入らないとばかり思っていたぼくは軽く衝撃を受けました。


そんな今はなき「ラッキー・ナゲット・カフェ」にて腹ごしらえをして、続けて次の質問を投げかけます。


「好きなキャラクターはいますか?」


さあ、この質問に彼女はなんと答えられたと思いますか?
その理由まで想像できると、少しずつ今回のゲストが何を求めているのかが見えてくると思います。


正解は・・・



「チップとデール・・・あと、プーさんも好きですね」

「なるほど。それはなぜでしょうか?そのキャラクターのアニメや映画だけ観たことがあるんですか?」

「いえ、ないんですけど。あれなんですよ。”中の方の”アドリブが好きなんです。」



少しばかり禁断の領域に片足、いえ両手両足くらいは踏み込んでいる気がしますが笑

ゲストがどういった視点でキャラクターを見ているのかという一つの指針になる回答だとぼくは思います。


何か見えてきましたか?


さらに質問は続きます。


「好きなヴィランはいますか?」

「うーん。これといっていないですね。ヴィランというよりかは、そのヴィランの周りにいる手下だったり、モブキャラの方が好きです。ショーを見る度に毎回違うことをやってたり、そういった部分があることを知ってるからすごく目で追ってます。」


「わたしだけかもしれないマニアックな好みなどはありますか?」

「好み・・・ああ、あれですね笑フロートってあるじゃないですか?あのフロートの運転席の位置を探すのが好きです笑」



ここまで見てみるともうお気づきではないですか?

そうです、今回のゲスト。

どうやら夢の国の住人たち、それもぼくらと同じ次元を生きているキャストさんやダンサーさん。
アクターさんや様々な人を見に来ていらっしゃるのです!



入園するのが目的なので特に理想の過ごし方というものもない。
確かに夢の国にはどこに行ってもその場その場に素敵なキャストさんが待ってくれています。

そして無視することはできない、嫌な瞬間や嫌いな時間という質問にも、


「結構閑散としてた時間帯に、とあるレストランで新人さんっぽい人が接客されてたんですよ。それで、もちろん最初は慣れないことばかりで大変だろうなとは思うんですけど、割とその大変さだったり疲れだったりを表に出されてて、それを見た時にちょっと嫌な気分になりましたね。」

「ショーやパレードの時にマナーを守らない人を見た時ですかね。あとそれをゲストコントロールスタッフさんが注意してくれないのが嫌です。」


とやはり、キャストさんなどに対する回答でした。


さてさて、こうして今回のゲストが何を求めてディズニーリゾートへ足を運ばれているのかがわかりましたね。


彼女はこの夢の国に生きる”人”を見に来てたんです。

そんな彼女が一体何を見て、そしてどんな魔法を解こうとしているのか。


答えはきっと、すでにあなたにもわかっている”あれ”です。

あなたもこれに元気をもらったことがあるはず。


さあ、見ていきましょう!



ターキーレッグチキン

キレイに食べるのがなかなか難しいですよね笑
いつ行っても長蛇の列で、時には諦めるこのチキンが穴場で買えるレストラン。
デートにはもってこいかもしれません。


フロート「ピーターパン」

運転手がいるとしたらどこだろうか。
全自動だと思っていたぼくはびっくりしました。
「これに人が乗ってるなんて信じられない!」




ジップン・ズーム・ガイドツアー1

「夢の国ではみんなが主役!」

「そう、わたしはあなた達を見に来ました!!」




「ジップン・ズーム・ガイドツアー」




「ダンサーさんがメインのショーが見たい」

「アトモスをもっと長く継続してほしい」


もうみなさんもお気づきですよね。


そう。
今回のゲストが見に来ていたのは、「ミッキー」や「ミニー」ではありません。

そんな彼ら彼女らを陰ながら、裏側から一致団結して支えているキャストさん達だったのです。


誰も見ていないかもしれない。
どこまでいっても主役級のキャラクターたちの引き立て役かもしれない。

しかし、そんな中でもすべてのゲストの夢を、理想を壊さないためにそこに生きていてくれるダンサーさんやアクターさん。


今回のゲストは、そんなもう一つの主役たちを見に来ていました。


「どの瞬間に一番喜びを感じますか?」

「そうですね。笑顔のアクターさんと目が合った時ですかね。」


ディズニーリゾートには、いつ行ってもどこにでも素敵なキャストさんが待ってくれています。
突然始まるアトモスショーはいつも一発本番。
しかしそれこそが生モノであり、本当のエンターテイメントです。

予測できない出来事は、それだけで非現実感をぼくらに届けてくれる。
しかしそれはむしろ、アクターさんやダンサーさんの方が感じていることなのかもしれません。

その場その場の雰囲気を感じ取り、同じ状況は二度ときません。
思ったような反応が返ってこないかもしれない。
予期せぬハプニングが訪れるかもしれない。
そんな、見ているぼくらからは想像もできないようなプレッシャーや緊張感の中、そんなことを微塵も感じさせない笑顔で、その場に笑いと感動を届けてくれる。


彼女はそんな主役たちの奮闘の中に、”現実”を見出しているのです。


夏の海賊のショーは、大手を振って活躍する船長やキャラクターたちよりも手下や盛り上げてくれるダンサーを。

秋のハロウィンでは、豪華な装飾や鮮やかな色合いに非現実を覚え、そして可愛い衣装を身に纏ったキャストさんやフロートを楽しみにしている。


こんな楽しみ方をされている彼女を、ぼくはとっても素敵だなと感じます。


そんな彼女の、昨今のコロナ騒動で一時休園をしていたディズニーリゾートに何か思うことがありますかという質問に対する答えがこちらです。
(このインタビューは休園の時期に実施いたしました)


「ダンサーさんだったり、アクターさんなどへの対応が気になりますね。」


現在は万全の対策をとって再び開園してくれました。
しかし、やはり以前のようにはいかない部分も出てくるでしょう。

そんな中、その被害を一番被ってしまうのが彼ら彼女らなのかもしれません。

やむを得ないかもしれない。
苦渋の決断であることは知識がほとんどないぼくレベルの者でさえ容易に想像がつきます。

ですが、どうかこんなゲストがいるということも知っておいてほしいなと感じます。


夢の国では分け隔てなく”誰もが主役です”
キャラクターやキャストだけでなくもちろん訪れるすべてのゲストだって例外ではありません。

そんな主役の一人は、ファンタジーに興味がない。

しかしそれでも足を運びたくなる。

なぜならここには、現実を生きているたくさんのキャストさんがいてくれるからです。


「舞台装置ありのド派手な演出のショーが見たい」
「ショーには音楽が必須ですね」
「カイト(凧)や小道具はショーにあってほしい」


これらを一目見ると、本当にファンタジーを求めていないのかなと感じてしまうことでしょう。

しかし彼女は、これらの演出の中ダンサーやアクターさんがどのようなことをしてくれるのかを期待しているのです。


作り笑いではない本当の笑顔は”現実”を実感させてくれる。


今回のゲストはそこに”希望”を見出しているのかもしれません。

これまでの常識を変えてしまうような恐ろしいウイルスではなく、自然と幸せな気持ちになれる笑顔をここからあなた達が伝染させて欲しいと・・・。



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あなたの笑顔も。

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あなた達の笑顔も。

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みんなを幸せにしている。

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いつもありがとう。

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どうかこの笑顔が、広まりますように・・・



さあ、そんな『三人目』のゲストとの素敵なインタビューもそろそろ終わりです。


生モノのショーに欠かせないのが”アドリブ”というスパイス!
これだって非現実を楽しめる大きな要素ですが、ちゃーんとその出来事にどう対応するのかを現実的に見ているゲストだっていらっしゃいます。

内心では焦ってるのか?
おおっ!すごい!そんな切り抜け方をするのね!

『三人目』の彼女は、心の中でこんなことを考えているんじゃないかな。
ちゃんと見てくれているゲストはいますよ。

あなたの笑顔は人知れず誰かを幸せにしています。


そして恒例の質問にも答えてもらいました。

Q「もし関われるとしたら何をしてみたいですか?」

彼女らしいと思えるような回答でした。

「ショーに関わるキャスト、沿道をコントロールしている人になってみたいです」


Q「ではこちらが最後の質問になります。あなたにとってディズニーとはなんですか?」

「現実ではないけれど、現実を見に行く場所です」



今回のインタビューは良い意味でぼくの中の常識を打ち壊してくれました。
それこそ当たり前だと思っていたことがそうではないと知れたことはとても大きな経験になります。

その点でも彼女にはとてもとても感謝しています。

ありがとうございました!


「あなたがディズニーに求めているものはなんですか?」

「求めているもの・・・”人間力”ですかね笑」


考えてみれば、彼女が好きなアトラクション『ソアリン』は実際に存在する場所を飛行するアトラクション。

そして『白雪姫』は、「この世で一番美しいのは白雪姫です」という現実を受け入れられなかった魔女と、明らかに怪しく疑わしいという現実を見ようとしなかった白雪姫が出てきます。

「なんとなくです。」と理由を答えてくれましたが、もしかしたらここに何か感じられるものがあったのかもしれませんね。



この「Dream Guest Magazine」を書き始めて『三人目』ですが、毎回こうして記事にしていく度に、ディズニーという世界がどうして求められているのかを実感しています。

キャラクターだけでなく、そして世界観だけでもここまで世界中の人に愛されることはありません。

そこにはそれを支えるたくさんの主役がいて、そして彼ら彼女らも必要不可欠なのですね。


どうかこの記事がそんな主役たちに届いて欲しい。
あなた達の存在は必要不可欠ですと伝わって欲しい。


ディズニーに関わるすべての方へ感謝。
これまでも、そしてこれからも夢の国を夢の国にし続けてくれているすべてのキャストさんへ感謝と声援を込めて。

ありがとうございます。

そして素敵なお話をしてくださったこちらのゲストにも拍手をお願いします。
ありがとうございました。




この記事が素敵な体験になりますように・・・




写真:あんどうみく
文 :前田亮
4コマイラスト:めしゃ


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あとがきと質問と回答と


こんにちは。
勝手に”フリーライター”と名乗っている前田亮です。


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