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【35節vsアビスパ福岡】入りそうで入らない少し入るゴール

33節に連敗を3でストップする勝利を挙げながらも、前節では金沢のペースに飲み込まれて完敗を喫したレノファ。ここからまた悪い流れを引きずるのか、建て直して残留戦線から脱出するのか。ホームにアビスパ福岡を迎えての、非常に重要な一戦となった。

両軍のメンバーは以下の通り。

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参照元:https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/game/score/2019092804

福岡は前回対戦と同じ[3-4-2-1(5-4-1)]システムだが、面子は大きく変わっている。前回のベンチ入り18名のうち、今回も名を連ねているのは9名。山口もスタメンは割と変わっているが、ベンチも含めれば15名が前回と同じだった。継続性?

優勢ながら優勢でない前半

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福岡は愛媛と同じシステムだが、レノファのプレッシングは愛媛戦とはやや異なる[4-4-2]の形だった。三幸と宮代が3バックのうち2人を制限し、山下は状況によっては右ウイングバック③石原にも付くが、基本的にはシャドウの⑬木戸へのコースを切る。ボールサイドのWBにはサイドバックが縦スライドしてマークし、残りのデヘンスラインが横スライドして相手の1トップ2シャドウを見る。[3-4-2-1]に対して4バックで守るにはSBの縦スライドが鉄則だ(識者に尋ねて最近覚えた。)。レノファのプレッシングは多くの時間帯で機能しており、これが最終的な零封に繋がった。

ひるがえって福岡の守備だが、前回対戦時は前線からの積極的なプレスで山口を慌てさせてきながら、今回は静かな撤退守備。後半から急速に強度が低下して逆転を許してしまったため、前半は控えて後半勝負に来るのかもしれない。

プレッシャーが来ないので、レノファは楽にボールを前進させることができた。特に序盤の福岡はプレスを掛けていないにもかかわらず中途半端にラインが高く、またデヘンスと中盤のライン間も拡がっていたため、チャンスまではいかないながらも積極的な攻撃を繰り出す。ただレノファもそれほどテンポが上がらずに、20分くらいまでは起伏の少ない展開が続いた。

21分、レノファのフリーキックからセランテスの稲妻レッグラリアートが菊池流帆に炸裂。現地だとどこがぶつかったのかわからなかったが、胸~腹のあたりに膝がしっかりと入ったもよう。頭や顔じゃなかったのは不幸中の幸いだった。

ここから少し、試合が動き始める。26分にはクロスと、コーナーキックの流れから福岡が立て続けにチャンスを得る。「セットプレーを跳ね返した後」のレノファの守備は未だ安定していない。

32分くらいからは福岡の圧力が強まり、前半の残り15分くらいは福岡が攻勢に出た時間帯だった。前半のチャンス数としては福岡のほうが多く、このまま先制していれば「狙い通り」の展開だっただろう。

成長著しいGK吉満

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41分には川井がPKを与えてしまうが、吉満がこれをストップ。東京V戦では前に出てしまい蹴り直し&警告を食らってしまったが、今回はしっかりと片足を残してセーブしてみせた。

ここ数年のレノファで最も成長したのは、実は吉満大介かもしれない。思えば、栃木SCからの加入当初は線もまだ細く、技術的にもフィジカル的にも「4番手」の評価だった。それが今では体もやたら大きくなり、キャッチングも向上して、出場数も格段に増えた。今回PKを克服したように、昨季終盤にミスを犯しながら、数試合後の同じシチュエーションではしっかりと防いでみせた。一撃必殺のパントキックよりも、「成長力」こそが吉満の武器なのかもしれない。

ツイートの動画と似たミスを、吉満も克服してみせた。

後半、続けた山口と続かなかった福岡

前半は控えめでスタートし、最後に圧を強めてきた福岡。後半立ち上がりも強く出てくるかと思われたが、再び引いて構える形に。レノファはやることは変わらないが、前半よりもテンポが上がってきた。

ダイヤモンドを作っては崩し、作っては崩す。裏を狙ってニアゾーンを取ろうとする。練習で積み重ねてきた部分が少しずつ顔を覗かせてくる。立て続けにチャンスを得るが、宮代大聖がこれを決め切れない。練習では本当に凄まじいシュートを打つのだが、実戦で決まらない。

福岡も63分にコーナーキックから實藤、64分に木戸がミドルシュートを放つなどチャンスを得るが、決め切れない。

64分の木戸ミドルについては、ミスが重なった部分なので少し触れておきたい。三幸のパスミスからだが、そのままプレスを深追いして中盤を空けてしまう。さらに初瀬には池上がやや遅れながらチェックに行っていたが、川井が中途半端に詰めたことで全体がスライドせざるを得ず、最終的に中が空いてしまった。これは川井個人というよりも全体の責任かもしれないが、ワンプレーで2人が剥がされる対応になってしまったのは問題ではないかと思う。

さらにもうひとつ、66分に佐藤→高井の交代が行われた後について。三幸が佐藤の位置へ下がり、高井がトップ下に入る形となったが、やや混乱していた形跡がある。被カウンターの際に山下が戻るポジションを迷っていたような仕草を見せていたことと、コーナーキックで實藤をフリーにしてしまう場面があったが、それまで實藤をマークしていたのは佐藤だった。システムやマークの変更についてピッチ上に正しく伝わっていなかった可能性がある。システムについても、気が付けば山下がトップに移り、高井が左ワイドの[4-4-2]に変更されていた。急きょ変更したのか、当初からこうするつもりが伝わっていなかったのかは気になるところだ。

そしてレノファが混乱?している間に、福岡も雲行きが怪しくなっていた。省エネ的に進めてきたはずが全体の強度が低下し始めており、特に左サイドの運動量が低下。72分には初瀬がポジションを埋め切れずに、實藤から叱責される場面もあった。この試合の福岡側のチャンスらしいチャンスは、75分のコーナーキックが最後となった。

山口は攻勢を強めるが、72分には高井が飛び込むも枠外。79分の山下のボレーはセランテスのミラクルセーブに防がれる。お互い何度もチャンスを得ながら、一向に得点が入らない。

引き分けの可能性が高いか、となってきたところに、コーナーキックから菊池がすらし、唐突な宮代ゴール。待望の『初日』が出た。

「信じて使い続けてくれた監督のほうへ自然と体が向いた」とベンチ向かって猛ダッシュした宮代だが、少し前から工藤が交代で用意していた。わずかに流れが違っていたら感動の抱擁シーンは無かったわけである…。

先制された福岡は森本貴幸を投入してシステムを[4-4-2]に変更。ただこれはかえって、同じく[4-4-2]でプレスを掛けるレノファと噛み合ってしまう結果になる。レノファのプレッシングが落ちなかったのは、福岡の変更にも要因があったかもしれない。

ボールを回収し続けたレノファは86分に池上がPKをゲットするが、実はここからが本当の戦いだった。

PK判定直後、すぐさまボールをゲットする高井。当然のように自分が蹴ろうとするが、背番号10は食い下がった。なんとか交渉に成功?し、試合を決定づける2点目が生まれる。

こうして、池上丈二の強い気持ちによりレノファは勝利した。

勝ち点を39まで伸ばしたことで、FOOTBALL-LABのシミュレーションにおいても、残留はほぼ確定という予測が出ている。ただ、あくまでシミュレーションなので絶対ではないし、逆に言えば、どう頑張っても12位以下で終わる可能性が高い。ひとつでも上の順位を目指すとともに、今季の内容と結果をどう総括するのか、どう来季に繋げていくかが問われる終盤戦となる。

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