見出し画像

例の映画についての自己総括(超ネタバレ)

 否定も肯定も、死ぬほどレビューが出回っている状況で今更アレですが、時間もわりと過ぎて、心に受けた傷は随分と癒えたのですがまだもうちょっとモヤモヤしているので、ここで吐き出しておきたい。これで終わりにしたいと思います。

 対象作品はアレ、例のドラクエ映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」です。

 ツイッターでも吐露したとおり、激しいショックを受けたわたしですが、酷かったのはオチだけでその他は概ね素晴らしかった。だからこそ余計に心に傷を負ったわけですが。
 文句を言うより先に、まず「良かった点」を挙げてみましょう。

■「ユア・ストーリー」の良かった点

◇映像がキレイ
 批判的なレビューなどでは「劣化ピクサー」という揶揄もありましたが、本場ピクサーを観たことのないので特に気にならず。スゲー動くし、めっちゃキレイやん、と。ちょっと動きがコミカルというかディズニーぽいなとは思いましたが。

◇けっこう上手いことまとめてあるストーリー
 親子3世代ドラマであるドラクエ5を2時間映画にまとめる、というのがそもそも無茶な話なわけで、端折りつつもよくまとめてあると思います。細かい部分はいろいろと気になっていて言いたいこともありますが、そこは観ている際に脳が勝手に補完した。なので、しっかりとドラクエの世界に没入させてくれました。だからこそ最後が悲劇になるのですが。

◇声優陣の演技
 例によって批判も(それなりに?)多かった豪華俳優陣の起用ですが、これについては良かったと思います。みなさんとても上手で、そして程よく棒読みでした。こういう3DCGみたいな映像だと、がっつりした声優演技よりもこういった「吹き替えとしては棒読み気味だけどちゃんと演技できている」のがちょうどいいというか、リアリティがあるのではないかと。そもそも声優が誰なのかについては予備知識なしで観に行ったので、誰が誰かもわからずまったく気になりませんでした。唯一、吉田鋼太郎さんだけは観劇中に気付いたのです『所さん!大変ですよ』が脳内にチラつくのを防ぐのに少し苦労しましたが。

◇パパスの剣
 ゲームではもっと強力な武器がすぐに手に入ってしまうため、早々に袋行きとなる「パパスのつるぎ」。しかし映画では、主人公は最後までパパスの剣で戦います。吉田ゲマとの最終決戦における、息子の天空の剣との共演は熱いものがありました。こういう細かいところでものすごくゲーム愛を感じる描写なんかもあって、非常にもったいない作品ですね…。

■不満な点

▼仲間モンスターが少ない
 尺や予算の都合もあるでしょうから、仲間モンスターを最小限にしたいのは分かります。しかしながら、ヘンリーと別れてからサラボナに着くまで、ずっと人間ひとりで旅をする主人公を支えるのが仲間モンスターの存在。喋れるやつをちょこっとでも出したり、ひな壇芸人レベルでもいいからいくらか数を出して欲しかった。せめてスライムナイトだけでもどうにか出演させられなかったのでしょうか。『ビアンカかフローラか?』という究極の命題に対して、国民の97%が『ピエール』と答えてるわけですよ。ピエールは出さないと。(あっ僕はデボラ派です。)

▼描かれる世界がえらく狭い
 映像そのものは素晴らしいのですが、「主人公の家以外のサンタローズが一切描かれない」「ラインハットは城門だけ」「サラボナはルドマン邸と宿屋だけ」など、えらく描写範囲が限定的です。イベントに必要なマップしか存在しないというか、妙に世界が狭い。ドラクエVRはオープンワールドではないようです。

▼双子じゃない
 なぜか男の子のみ。タバサはどこへ…。これも尺の都合なのか、ゲームのドラクエ5とは違うと言えばそれまでなんですが、①劇中のドラクエVRゲームにそもそも存在しない②映画主人公が初期設定で娘の存在を消してた、とかだったら余計に闇が深いですぬ…。スクエニ大丈夫?
 ひょっとしてあれか、映画主人公はドラクエファンだからこそ「どうせ息子と仲間モンスターしか使わないし…」で端折ったのか。それともVR開発スタッフがそう判断したのか。お前ら、今回はピエールどころかゴレムスもおらんのやぞ。

▼ストロスの杖の使用方法が投擲(×2)
 杖 #とは

▼BGMの使い方がなんか…なんか
 いや、天空の剣を抜くシーンなんかは「尺がねえんだよおお」な疾走感と鞘ギミックも相まって最高でしたよ。ただなんというか、使用方法がちょっと胃にもたれるというか。音量やBGM有り無しの配分ももうちょっとどうにかならんかったのか。あとエンディングが「そして伝説へ(Ⅲ)」なのはなんでだとか、別の作品の曲が流れるのはまあ良いんです。良い曲多いしね。ただあれだ、終盤で妖精に会いに行った際のBGMがなんで「街角のメロディ」ではなく「天空城」なのか。ここは大いに不満です。

▼船増援
 絶対絶命のピンチに旧友が駆けつける熱いシーンなのですが、冷静に考えると「ヘンリーとブオーンどこで知り合ってんねん」「リュカが仲介なのか?それならそもそも最初から一緒に来ればよくない?」「助けに来る伏線が別れ際の会話のみで、その後一切触れられてないのはさすがにどうなの?」など、かなりようわからんシーンでもある。

▼最後のオチ
 はい。なんというかね、いろいろ突っ込みどころはありつつ不満もありつつもですね「スゲーーー!めっちゃドラクエ映画じゃん!」って夢中で観てたわけですよ。ネットの事前情報により、最後にメタネタのようなものがあるというのは知っていました。それを警戒しながら恐る恐る観つつも、気づけばどっぷり「いやーーードラクエの映像化すごいなーーー。。。」ってなってたんです。ラストでなんかくるというのを忘れていたよ。ぼくは性善説で生きてるから、「たぶんエンディングで映像が引いていってゲームをプレイしている画になるんだろう」とかソフトな好意的予想をしていたんですね。最悪でも「シベ超」だろうと。
 そしたらアレですよ。最高に盛り上がったところで急になんかカクカクしたものが飛び出してきて世界が止まって「は~いここはゲームの世界ですよ~」とか言ってくる。わーーー!ドラクエという最高素材のファンタジーでメタフィクションだーーー!、銀魂?
 まあそれは良い(ぜんぜんよくないけど)として、問題はせっかくここまで積み上げてきたドラクエの世界をぶっ壊してまで繰り広げられる問答が「ゲームなんて卒業して大人になれ」vs「ゲームの思い出も現実の一部なんだ!!!」というへっぽこ内容。昭和か。
 監督はこのオチを思いついたから引き受けたとのことらしいのですが、そんなしょうもないメッセージ(ただし映画に夢中になってたひとの心は死ぬ)を送りたいがために、だました…だました…今まで…ぼくを…ぼくを…よく…も、よくもぼくを…


よくもぼくをォ!!だましたなァ!!


よくも今まで!!ずっと今まで!!よくもぼくをォ!!


なんであんな…あんなに…。


よくもだましたアアアア!!だましてくれたなアアアアア!!


ぼくを…!!ずっとぼくを…!!今まで…!!今まで…!!今まで…!今まで…



 …すみません取り乱しました。いやこれがもっと深いメッセージがあったりだとかね、ここからさらにストーリーが展開されていくのならまだ分かるんですが、超薄っぺらい本当にしょうもない問答をやって、スラリンが唐突に山ちゃんの声でしゃべってロトの剣が生えてきて速攻で終わるんですよ!!!!(事実)
 これまでの90分はなんだったの…。

 世界はめでたく元に戻って、故郷へ戻ってエンディングを迎えるわけなんですが、こっちは「え…何この…何?」ってメダパニしてるうちに終わってしまって。しかも何故かドラクエ5のシナリオなのに「そして伝説へ(Ⅲ)」が流れ始めて。この行き場のない感情の名前を僕はまだ知らない。知りたくもない。

 時代は令和ですよ。もはや会社で部長課長やってるようなおっさん世代ですらゲームに触れて育ってきて、卒業できないひとはいっぱいいるけど現実逃避なんかではなくて、みんな当たり前のように「それはそれ!これはこれ!(逆境ナイン)」でちゃんとゲームと向き合って生活してるんですよ。それをこんなしょうもないメッセージのためにドラクエを使ったと。まんまと利用された。なんで誰もこれ止めなかったの。堀井さんなんで??
 そんな箱根駅伝繰り上げスタートみたいな時代遅れ周回遅れなしょうもないメッセージを観にきたんじゃないんですよ、ドラクエの映像化を観に来たんだ。それを最後の最後までは「どうだ~ドラクエ映画だぞ~」ってやっといて(劇中に不穏なメタネタはちりばめられてたけど)最後にこれですか。
「ヴォ―すげーどんでん返し!」とかリアクションが来ると思ったのか。「え…これ何…これまでの冒険は一体…?」「リュカじゃないのか…誰だお前…ただの一般人…ゲーマー…だと…?」ってフリーズするに決まってるだろ。なんでこんな、ドラクエを観に来て、陳腐な、本当に陳腐な説教を最悪の形で見せられないといけないんだ。王道だからこそのドラクエじゃないのか。なんでこんな…ぼくは前世で何か悪いことをしたのか。思い出しながらこれを書いてて、また涙目になってる。あれか、過去にプロアクションリプレイを使ったことへの報いなのか。
 さらに「大人になれ」とか言われてしまう主人公(リュカもどき)にしても、VRの世界に逃げてずっと引きこもってるとかではなくて、何回もドラクエVRをプレイしているただのゲーム好き青年ですよね…?
 ドラクエの世界が、ドラクエVRの世界そのものが危機に瀕しているとかいう話でもなくて、たまたまVRゲームを楽しんでたら幼稚で偏屈なスーパーハカーに邪魔をされたという、ただそれだけの話じゃないか。
 それが「ユア・ストーリー」だとか言われてましてもですね、その、監督はテレビゲームになにかトラウマでもあるのですか? 相談乗りますよ?大丈夫?(サンチョの)おっぱい揉む?

 

 ふう。言いたいことをだいたい吐き出したので幾分すっきりしました。これ以降は、この映画に触れることはもうないと思います。でもドラクエ自体は今後もプレイしたいし、今度は王道で、映画化も懲りずにやっていただきたい。

 また、やっちまった山崎貴監督も相当恨まれてそうですが、それはそれ、これはこれということで毛嫌いせずに他の作品は観てあげてください。『アルキメデスの大戦』はかなり出来が良いそうなので僕も観ようと思ってます。

 山崎監督の作品というと、僕も『寄生獣』2作は観たことがありますが、



 うん、ちょっとアレだったね…(・∀・)


 

 あと最後に、(フェイクっぽくもあるけど)『映画にショックを受けて子供がドラクエを嫌いになってしまった』みたいなツイートをちょいちょい見かけますが、ドラクエの新作が出たらぜひ、お子さんにプレイをすすめてあげてください。今回のは「ドラクエの皮を被ったなろう小説」だったので酷い仕打ちを受けましたが、ドラクエとは本来、安心して遊べるブランドです。ドラクエは裏切りません。ユア・ストーリーを嫌いになっても、ドラクエのことは嫌いにならないでください。今後ともドラクエをよろしくね!

 じゃあまた!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?